ゲルダ・シュタイナー&ユルグ・レンツリンガー
揺れる夜の庭園
2006年1月23日(月) − 2月28日(火)
10:00 - 20:00
休館日 2月21日(火)、2月22日(水)
一般:400(300)円 学生:300(200)円
- ()は前売料金/チケットぴあ
- 再入場可
- 中学生以下無料
- アルティアムカード会員無料

FOTO: Gerda Steiner &Joerg Lenzlinger
2002年のヴェニスビエンナーレで発表した’falling garden’がまだ記憶に新しい、スイス出身の現代美術作家、ゲルダ・シュタイナーとユルグ・レンツリンガー。有機質と無機質な物と、その土地の素材を組み合わせて作るサイトスペシフィックな作品を数多く手掛け、幻想的でシュールな独特の世界観は、世界中のアートファンを魅了してやまない。本展は、二人による日本で初めての個展となった。
今回アルティアムのために制作されたインスタレーション’Night Moths in the whale belly’(クジラの腹中の蛾々)は、2004年に発表された’whale balance’をもとに、福岡周辺で集められた樹木、漂流物などを加え、新たに構成された新作インスタレーション。作家が約2週間福岡に滞在し、作品のための素材収集をした後、会場で7日間に渡る制作を行った。
’Night Moths in the whale belly’は、クジラのお腹に広がる夜の庭園。小さな灯りに群がる蛾のモビールが、まるで空中庭園にいるような幻想的な感覚を与える。「難しいことを考えずに、リラックスして作品を楽しんでもらいたい」という作家の願いにより、会場にはカーペットが敷かれ、ビジターは靴を脱いで寝そべって作品を眺めることができた。
壁面に投影されたモノクロの動く造形の世界も、そのもととなる作品に近寄ってみると、日本的な身近な物ばかりで、その変貌の意外性と影とのギャップに驚かされる。落とし物やゴミ同然の物が、本来の在り様とはまた別の意味と価値をもって再生する。発砲スチロールでできた「浮き」も、浜辺では波に打ち上げられたゴミ。しかしここでは繭や卵のように、生命を育む有機的で神秘的な存在へと生まれ変わった。
ヨーロッパでは、聖書やアルケミストの伝説として、クジラに飲み込まれた男の話がある。クジラから出てきた時にはすっかり髪の毛がなくなり、賢くなっていたという変容の物語だが、今でも髪のない子供が生まれると「賢い子になる」と言われるほど、現代の生活に浸透している。また、ドイツ語で’ときめく’ことを表現するのに’お腹に蝶々がいる’と言う。これらの物語や幻想的な言い回しも、この作品と深くリンクし、作品自体がまた独自の物語を語りかけていた。