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会場内作品レポート+感想帳より

好評開催中の本展。会場内の様子を少しだけお届けします。 本展は大きく二つの部屋に分かれており、入ってすぐの部屋には奈良美智、リネッテ・イアドム・ボアキエの作品を展示しています。2013年に黒人女性で初めてターナー賞を受賞した作家、ボアキエのこの作品は日本初公開。

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奥の部屋は会田誠、小泉明郎、リチャード・タトル、デイヴィッド・ラトクリフ、ライアン・マッギンレーの5作家の作品を展示しています。

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会場奥に展示している小泉明郎《劇場は美しい午後の夢を見る》は、18分15秒のビデオ・インスタレーションです。イヤホン着用でご覧いただくため、時々混み合うこともありますが、一度見出したら最後までご覧になる方が本当に多いです(映像作品は平日の午前中や夕方以降の鑑賞がオススメです)。また東京での個展でも注目を集めるライアン・マッギンレーの作品は、写真の色あいが美しく一際目を引く作品です。

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会田誠の作品《灰色の山》3×7メートルものキャンバスに、何千体ものサラリーマンの死体の山が描かれています。なんと、実は隠れたお楽しみ(?)、で絵の中にあるキャラクターが隠されています。どんなキャラクターがいるか会場でよく見て探してみてくださいね♪

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 最後に、続々とコメントが書き込まれている「感想帳」より来場者の声をお届けします。

・いろんな人がいる。幸せって何だろうと思いました。

・ゆっくり見れました。すばらしい作品なので、ひとつひとつ見るにはこのくらいの量がちょうど良いですね。私は奈良さんの作品が好きでした。福岡で現代アートが見れてとてもうれしかったです。ありがとうございました!

・ボルタンスキーをみたいです!

・複数の作家さんの作品が見れて、楽しかったです。映像の作品に引き込まれました。

・タグチさんのコレクション初めて見れました。小泉明郎さんの映像、とてもパワーがあり、最高でした。ここで出会えて本当に良かったです。天明屋尚、ヴィック・ムニーズ見てみたいです!!

・奈良さんの絵を久しぶりに見られて心から嬉しかったです!少女の体からにじみ出る光が本当に美しくて感激…。素晴らしい場を作り出してくれてありがとうございました。

・ライアン・マッギンレーの作品が見れて嬉しい!

・田口さんへ!いつもすばらしい絵、ありがとうございます。一層のご発展をお祈りしております。

・こんなに大きな作品をこんなに近くで見れて感動しました。他の方もおっしゃっていますが、福岡で見れたことがキセキのようにうれしいです。もっと現代アートにふれたくなりました。ありがとうございました!!

・今までで一番近くで見れて本当に感激でした。できれば、アントニオ・ロペスさんやピーター・ドイグさんの絵が見てみたいですね!とても充実した日曜日になりました。今後もアートのそばで生きていこうと改めて思いました。

本展は、会場内の写真撮影を可能(フラッシュ・動画撮影は禁止)としております。  素晴らしい作品の数々をご覧いただけるのも今週5月29日(日)まで。どうぞお見逃しのないように!

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2016/4/23 − 5/29

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会田誠+松蔭浩之トークレポート【その3】

5月1日トークのレポートを全3回に分けてご紹介いたします。【その3】では、アルティアムで1999年・2000年に開催した会田誠・松蔭浩之個展を振り返りながら、当時と現在についてお話を伺いました。【その1】【その2】と合わせてお読みください。

(※本文は、本イベントのトークを一部抜粋・編集したものです。)

(会田さん)福岡と北九州も含めて、福岡県は僕のキャリアの早い時期にお世話になりましたね。アルティアムは、僕の初めての公な場所での個展でした。

 

会田誠 個展「道程」1999年/三菱地所アルティアム

会田誠 個展「道程」1999年/三菱地所アルティアム

 

(松蔭さん)アルティアムができた当初、1989年、日本の現代美術界において衝撃的なニュースでしたね。当時、まだ企業メセナが現代美術をサポートすることも多くない時代に、僕ら若手作家をよく採用してキュレーションしてくれたと思うんです。会田誠がアルティアムで個展をやって、その翌年の2000年に椹木野衣さんのキュレーションで「日本ゼロ年」(水戸芸術館)という大きなグループショーに参加した。そこから『美術手帖』で会田誠の特集が組まれるまで注目を集めていったわけですね。同時に結婚、出産、子育てもあるわけで、それこそアルティアムで展覧会をやってからの道のりが本当に長くて濃いね。

(会田)今回の展示で久しぶりにアルティアムに行った時、会場のスタッフに「よそのお店が壁を押しやって、前よりちょっと場所が狭くなったかな?」と真顔で聞いてしまいました。森美術館や東京都現代美術館の広い会場に目が慣れてしまっていて、なんだかアルティアムが狭くなったと感じてしまったんですね。

(会場)

(会田)東京でも商業地区の真ん中にあるビルのアートスペースは狭いものなので、同じことなんですけど、それにしても当時とは違った印象がありました。

(松蔭)今回、福岡で彼が1999年当時の思い出話をしているのを聞いて、これは故郷に帰った人が『青春プレイバック』みたいに思い出を語っているようなものだと思った(笑)。オレも彼の個展のオープニングで、ゴージャラス(松蔭浩之+宇治野宗輝のバンド)としてライブ演奏をやったんです。アルティアムには、当時の懐かしい写真が残っていました。

 

会田誠 個展ギャラリートークの様子(左から会田誠、宇治野宗輝、松蔭浩之)

会田誠 個展ギャラリートークの様子(左から会田誠、宇治野宗輝、松蔭浩之)

(会田)1999年の僕の個展の話でいえば、当時の会場構成は、アルティアムのパーティションをあるだけ全部出して、お客さんにジグザグに展示を進んでもらう構成にしました。絵は引いて見られなくてもいいから、とにかく一点でも作品を多く入れてさまざまな作品を見せたかった。

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会田誠 展示風景/三菱地所アルティアム

会田誠 展示風景/三菱地所アルティアム

 

(松蔭)当時の個展会場で配っていた作品解説のハンドアウトも貴重でしたね。初期の会田誠は、個展をやる時には必ず手描きの解説文を書いていたんです。

 

会場で配布していた会田誠による作品解説 本展に関する作者の蛇足なおしゃべり 1996.6.24 会田誠

会場で配布していた会田誠による作品解説
本展に関する作者の蛇足なおしゃべり 1996.6.24 会田誠

(会田)翌年にアーティスト・イン・レジデンスでアメリカに滞在したんですけど、そこでお客さんにアーティストが解説して回るのはかっこ悪い、会場にポツンと踏ん反り返っているのがアーティストのあるべき姿だという、悪しき勉強をしてきちゃったんです。

(松蔭)現在、彼はTwitterもやっているし著書も出版していますしね。今はもう手書きの文章は書かなくていいよね(笑)続きまして、オレは2000年にアルティアムで個展をやりました。

 

松蔭浩之 個展 「FOREVER」2000年/三菱地所アルティアム

松蔭浩之 個展 「FOREVER」2000年/三菱地所アルティアム

これはフライヤーです。二人とも印刷物のデザイナーが同じ宇治野宗輝でした。個展のテーマは、松蔭浩之が2000年に亡くなった、という設定でした。仮設壁が一枚もない会場に、女性の写真をずらっと並べたんです。発表したての「STAR」もインスタレーションした。

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松蔭浩之 展示風景/三菱地所アルティアム

松蔭浩之 展示風景/三菱地所アルティアム

オレは生まれが福岡の西区ですし、大牟田、久留米と転勤して、小中高は小倉なのでメンタリティは小倉っ子です。2000年にアルティアムで個展をやらせていただきましたけども、実はずっと以前の1990年に当時のディレクターから、「コンプレッソ・プラスティコ」(当時の松蔭のアートユニット)で個展をやらないかとお声かけをいただいていました。ただ同じ時期にベネチア・ビエンナーレに参加することになり、いったんお断りした後であらためて2000年に個展を開催したという流れでしたね。

 

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近年でも会田さん、松蔭さんはアルティアムで2011年に開催した「JALAPAGOS(ジャラパゴス)展」にも出品いただいており、その中で松蔭さんはアーティスト・トークも行っていただきました。また松蔭さんは「街じゅうアート in 北九州」をはじめとする九州での展示・プロジェクトに参加されるなど多岐に渡って活躍されています。

その後、質疑応答も挟みながらトークは盛況の内に終了いたしました。

☆最後にお二人の今後の活動についてお知らせです。

会田さんは現在、小説『青春と変態』以来、20年ぶりに小説の執筆に着手されているとのこと。出版時期はまだ未定だそうですが、文才溢れる会田さんの小説が今から楽しみです。また7月にミヅマアートギャラリーで個展を開催予定。そして、昭和40年会としてお二人とも今年も瀬戸内国際芸術祭に参加されます。

松蔭さんは現在、香川県の男木島図書館で個展「著者近影」を開催中で、好評につき異例の会期延長(9月4日(日)まで)とのことです。さらに大学時代に活動していたバンド「PBC」の復活にむけて準備中とのことでした。

お二人ともに変わらず精力的に活動されており、ますますのご活躍が本当に楽しみです。会田さん、松蔭さん、当日ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。

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Local Prospects 2

公募告知 Open call

三菱地所アルティアムでは、九州・沖縄とその周辺地域を拠点とする作家を紹介する展覧会シリーズ「Local Prospects 2」を開催いたします。アルティアムでは、1989年4月から三菱地所の文化支援事業の一環として、現代の様々な芸術表現を、既成の評価、ジャンルにとらわれることなく紹介・発信しています。
本シリーズは、地域を見つめる多様な視点の創出と対話の深化を目指す展覧会シリーズとして2015年に初開催されました。その第2弾では、さらに門戸の開かれた展覧会とするべく、グループ展の中の1枠を公募枠として広く募集いたします。平面、立体、映像など、ギャラリー空間に展示できる作品すべてが審査の対象となります。ポートフォリオ審査により入選者を決定し、招待作家とともに展覧会を開催します。
第2弾のテーマは「アイデンティティ」です。前回展「海をめぐるあいだ」では、海を通した広いつながりに目を向けましたが、今回はフォーカスを移し、自己という狭く深い範囲に焦点を当てた作品を募集します。作家が自己に向き合い、その存在を掘り下げていった末に行き着いた、驚くべき表現に期待しています。作品に対峙することで、鑑賞する人々もそれぞれの存在を確かめる機会となることを願っています。
多様な文化の交わる場として機能してきた福岡の地域性と、地方にスポットが当たることの増えた時代性を踏まえ、“いま、ここで紹介すべき作家”を吟味して発信します。本シリーズに、新たな1ページを加える表現を心待ちにしております。

※英語版は後日更新予定です。
We are preparing the English text, please wait for it for a while.

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【展覧会概要】
タイトル:Local Prospects 2
テーマ:アイデンティティ (シリーズ初回は「海をめぐるあいだ」)
会期:2016年11月5日(土)〜11月27日(日)
会場:三菱地所アルティアム(福岡市中央区天神1-7-11イムズ8階)
時間:10:00〜20:00
入場料:一般400(300)円、学生300(200)円、高校生以下無料、再入場可、( )内は前売料金/チケットぴあ・10名以上の団体料金、アルティアムカード会員・三菱地所グループCARD (イムズカード)会員無料
主催:三菱地所、三菱地所アルティアム、西日本新聞社
展覧会参加作家:3〜5組程度(うち1組のみ公募枠)

【公募選考スケジュール】
募集期限:2016年8月7日(日) 必着
結果発表:2016年8月31日(水)
搬入:2016年11月2日(水)〜11月4日(金)
会期:2016年11月5日(土)〜11月27日(日)
搬出:2016年11月28日(月)

【審査員】
阿佐美 淑子(三菱一号館美術館 学芸員)、山出 淳也(NPO法人 BEPPU PROJECT)、三菱地所アルティアム

【公募枠 作品募集要項】
■募集内容
三菱地所アルティアムの展示空間を使った、募集時に提示するテーマに沿った作品展示プラン。立体、絵画、インスタレーション、写真、映像作品など表現の形式・ジャンルを問いません。

■採用作家
1名(1グループ)

■応募資格
日本語または英語でのコミュニケーションが可能で、九州・沖縄および周辺地域を拠点に作品を創作し、その著作権を有する個人または団体。

■サポート
・制作補助費:20万円程度(予定/補助費を超える必要費用は自己負担とさせていただきます。搬出入は各自で行うものとし、展示に使用する什器や備品も出品者が用意して下さい。)
・展覧会記録カタログの作成
・三菱地所アルティアムのウェブサイトにおける展覧会の紹介、および郵送・Eメールによる開催告知

■提出内容
A4サイズのファイル一冊に、以下の項目を入れて提出して下さい。
応募用紙(コピーを2部提出し、原本は保管して下さい)
・作品プランA(規定スペース内での展示プラン:必須) ※幅6.4m×奥行4.5m×高さ3.1m。平面作品は出入口を考慮の上、壁面プランを提示して下さい。
・作品プランB(制限のない自由なプラン:オプション)
・略歴(これまでの作品、活動など)
・作家連絡先(出品者名および代表者名(団体で応募される場合)、住所、電話番号)
作品プランA/Bは審査の参考にするものです。作品プランAは必須項目ですが、作品プランBはオプションであり、ファイルに含まれていなくても構いません。実際の展示作品やスペースの広さは、三菱地所アルティアムのディレクターとの話し合いにより決定します。

■応募方法
上記の項目を満たしたファイルを、郵送または宅配便にて提出して下さい。作品展示プランのみの募集となります。実際の作品は受け付けません。
選外者のファイルは返却します。返却用の封筒を同封して下さい。封筒が無いもの、封筒のサイズが合わないもの、返信用の切手無貼付または料金不足の場合は、着払い扱いで返送します。なお、応募用紙は返却いたしません。

■結果発表
入選者については、2016年8月31日(水)までに、お電話にてご連絡させていただきます。また三菱地所アルティアムWebでも公開いたします。個別の電話対応はできませんので、ご了承下さい。

■注意事項
・搬入可能な作品は、搬入用エレベーター(幅2.5m×奥行1.6m×高さ2.5m)に積載可能なサイズです。
・発音、発光、臭気を発する作品など他の作品や展示環境に及ぼす影響が大きい作品は不可とします。
・過去にコンテスト等で受賞歴のある作品は、出展不可とします。
・会場内での火気の取り扱い、塗装作業、食品販売、生き物の持ち込みは厳禁です。
・床面への釘打ちやカッティングシート貼り等の作業はできません。カッター等工具を使用する際は、必ず床面を養生して下さい。
・壁への釘打ちは可能ですが、会期後はパテ等で穴埋めをお願いいたします。
・法律や何らかの契約、または公序良俗に反した作品の応募は不可とします。
・応募者は、作品が第三者のいかなる権利も侵害していないことを保証し、万一苦情等があった場合には自らの責任で解決して下さい。
・展示上、支障が生じた場合は、作品の撤去について協議することがあります。
・展示室内での特定企業や店舗の宣伝行為、応募作品、関連商品の販売表示や呼びかけはできません。
・入選が確定した後、作品のタイトル、形状、構成、材質など著しく応募作品と異なる場合は入選を取り消すことがあります。
・応募用紙の記載内容に不備、虚偽が認められた場合、または規定違反、その他の問題が生じた場合は、入選を取り消すことがあります。
・出品作品は十分注意して取り扱いますが、損傷については理由のいかんに関わらず、主催社は一切責任を負いません。必要と思われる方は、各自で保険に加入して下さい。
・出品作品の著作権は、応募者本人に帰属します。ただし、展覧会での公開・発表、使用、およびその広報・告知(印刷物やWebなど)、記録目的で使用する権利については、三菱地所アルティアムにあります。

■個人情報の提供・利用目的
応募用紙にご記入いただいた個人情報は主催者が適正に管理し、本事業に関する資料送付、連絡、その他必要と思われる事項(来年度以降も含む)以外での使用はいたしません。また主催者は入選者の氏名・生年月日・居住都道府県名・経歴等の公表ができるものとします。

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2016/11/5 − 11/27

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会田誠+松蔭浩之トークレポート【その2】

5月1日のトーク、レポート第二回目の【その2】では、会田誠作品を初期から知る松蔭さんの分析、お二人の作品の傾向などについてのお話です。【その1】と合わせてお読みください。
(※本文は、本イベントのトークを一部抜粋・編集したものです。)

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(松蔭さん)今、若い人たちが作る作品はすごく説明が多くない?若い人だけじゃなくて、どの展覧会、美術館も作品解説がでかでかと貼ってあったりするよね。この作品は「こういう作品でこういうふうに作られたものだから、こういうふうに見て、こういうふうに感じますね」ということが貼り出してある。鑑賞自体が押し付けられているんだよね。みんな解説ばっかり読んで、ああそうかって納得してる。

(会田さん)でもそれは、日本も海外並みにグローバリズムの傾向が強くなってきたということかもしれない。昔の日本の美大の油絵科は「絵描きはあまり語るな、ただ手動かせ」という感じだった。それが最近、美大の教育現場でも「自分の作品は明確に説明できないとダメ」というふうになってきた。僕のロリコン的な作品も、日本だと「なんとなく分かるからあえて聞かない」ところまで海外の記者は聞いてくる。アートにおいて西洋中心の本場では、基本的に理屈で説明しないといけないので仕方ない一面はあります。でも世界でもトップのアーティストは、そこまで真面目に解説しないのではとも思えるので、僕もそんな姿勢でありたいと思っています。

(松蔭)作品解説も自分なりの考えにもとづいた姿勢なんですね。それから映画の話に戻りますけど、この映画の編集中に監督も想像していなかった3.11の東北の震災が起こったわけですよね。例えばこの作品の見え方は、3.11以降と3.11以前に見た人では感じ方が明らかに変わりますよね。《灰色の山》は予言的な絵とも言われたりするのではないかということだけど。

(会田)どうだろうね。僕は《紐育空爆之図(戦争画RETURNS)》でもそうですけど、不吉な、BADな状態のものを描くことが多いんです。だから予言が当たったと言っても、だいたい予言者は悪いことだけ言っているものだし、たいてい状況は必ず悪くなるから…。だから予知能力があるかというのは、もちろんゼロで、基本的に不吉なことを想像して覚悟しておいたほうがいいと思っているタイプです。そういう感覚は僕の作品の根底にあるかもしれない。ハッピーとか希望ももちろんこの世の2つに1つ、大切な面だと思うけど、ハッピーな絵はファンシーカラーを使って全体的に丸っこい形にすればハッピーになるのかなと単純に思ってしまうくらい、僕が得意じゃないジャンルなんです。

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《紐育空爆之図(戦争画RETURNS)》1996年
襖、蝶番、日本経済新聞、ホログラムペーパーにプリント・アウトしたCGを白黒コピー、
チャコールペン、水彩絵具、アクリル絵具、油性マーカー、事務用修正ホワイト、鉛筆、その他(六曲一隻屏風) 174×382cm
零戦CG制作:松橋睦生 高橋コレクション 撮影:長塚秀人
(c) AIDA Makoto Courtesy Mizuma Art Gallery

 

(松蔭)今回のアルティアムの展示では、会場入ってすぐに奈良美智さんの作品《Cosmic》が展示されています。奈良さんの作品もハッピーだけがテーマではないと思うんですけど、だけどやっぱり見るとほっこりとした気持ちになりますね。

(会田)対して僕の絵は、人が沢山死んでいるとかモチーフを多く描き込んでいるものが多いよね。

(松蔭)そうそう。《紐育空爆之図(戦争画RETURNS)》も無数の零戦を描いているし、裸の女性が無数に描かれた《ジューサーミキサー》も、今回展示している《灰色の山》もそうだよね。

 

《ジューサーミキサー》2001年 キャンバス、アクリル絵具 290×210.5cm 高橋コレクション 撮影:木奥恵三 (c) AIDA Makoto Courtesy Mizuma Art Gallery

《ジューサーミキサー》2001年
キャンバス、アクリル絵具 290×210.5cm
高橋コレクション 撮影:木奥恵三
(c) AIDA Makoto Courtesy Mizuma Art Gallery

 

(会田)言われてみたら確かにそうだなと思います。奈良美智さんは、絵の中心に人間ひとりをどーんと描くことが多いですよね。

(松蔭)どーんと、ワンモチーフですね。

(会田)奈良さんは基本的に一つの絵に2人の人物が描かれることがほぼない。幾つかレパートリーがあったとしてもほぼ1人。特に最近は、人物も正面向きでほとんどポーズがないことが多いよね。あれは無意識/意識的の両方なんだろうけど、おそらく奈良さんは「パーソナル(個人の個性、個人的な資質)」を描くのが好きだし、それを大事にしている人なんでしょう。そして、おそらく僕はパーソナルを表現するのが不得意で、俯瞰的な視点で表現するのが得意な方なんです。これはあくまで想像上でのお話ですけど。

(松蔭)神の目線とまではいかないけど、常に俯瞰で見ることを意識しているってことですね。

(会田)一人一人の個性を見ずに「集団」での人間の在り方から物事を捉えるのが癖ですね。多分そこらへんで奈良さんと僕は、あるところでは水と油なんだろうと思いましたね。

(松蔭)これに近い例で、同じミヅマアートギャラリー所属の山口晃くんの絵画作品も俯瞰ですね。「鳥瞰図」というんですか。

(会田)どっちかっていうと僕は山口くんの方に近いかもしれない。そういうタイプ分けで言えば、松蔭くんはパーソナルに迫る奈良さんタイプかな。

(松蔭)オレは奈良さんの方だね。写真撮るときも、その人の個性を出そうと思っているから人数が多い集合写真が嫌なんだよね。やっぱり一対一じゃないと。前にバンドの写真を撮った時もメンバーの身長が違ったりして、どの人の個性を引き立たせればいいかとか、なかなか集中できない。だから話を聞いていて、奈良さんタイプなのかなって思ったね。

(会田)震災が起きて、表現者がそれに向き合う時も、アーティストの素質によって方向性が違います。遺族なり個人にフォーカスするタイプと、未曾有の災害が起きたという、地球レベルで繰り返される自然災害を引いて見るタイプがあって、僕はどうしても後者になっちゃう。僕の作品はそういう意味では客観的で冷たいと捉えられるのかもしれない。

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お二人に作品についての分析や想いを語っていただきました。続いて【その3】では、アルティアムでお二人が個展を行った1999年、2000年当時を振り返ってのお話です。

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2016/4/23 − 5/29

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会田誠+松蔭浩之トークレポート【その1】

5月1日に開催しました映画『駄作の中にだけ俺がいる』上映会と会田誠×松蔭浩之トークイベントでは、多くの方にお越しいただきまして誠にありがとうございます。当日、惜しくもトークに参加できなかった方や遠方のファンに向けてレポートで【その1】、【その2】【その3】と全3回に分けてご紹介いたします。まず【その1】では、映画『駄作の中にだけ俺がいる』を振り返りながら、本展で展示の大作《灰色の山》について語っていただきました。
(※本文は、本イベントのトークを一部抜粋・編集したものです。)

(ディレクター・鈴田)それではお待たせいたしました。お二人にご登場いただきます。会田誠さんと松蔭浩之さんです。

(会田さん)ありがとうございます。

(松蔭さん)ありがとうございます。こんにちは!

まず映画の話からしましょうか。この映画は2009~2011年の間にみっちりと会田誠とその家族を記録したドキュメンタリー映画です。

映画『駄作の中にだけ俺がいる』 ©Z-factory Inc.

映画『駄作の中にだけ俺がいる』 ©Z-factory Inc.

 

作品《灰色の山》の制作風景が出てきますが、この作品はその後、東京やニューヨークでも加筆を続けていますよね。それにしても、会田誠のほとんどの大作はすぐに終わらずに、例えば『滝の絵』は公開制作もしながらしばらく描き続けていましたよね。あの作品の公開制作は大阪でしたっけ?

(会田)まぁいろいろね。

(松蔭)大作は2年くらいかかっていますよね。

(会田)ずっと描き続けているわけじゃなく少し休みながら、ことあるごとに加筆していますね。《ジューサーミキサー》はお正月も返上して、東京のミヅマアートギャラリーの床にはいつくばるようにしてずっと加筆していました。この《灰色の山》も随分加筆を続けていましたね。キャリアが長いのに、いつまでたっても馬鹿なんだけど、最初頭に浮かんだ時は半年あれば仕上るなっていつも思うんだよね。

(松蔭)あ、そういう計算はあるんだ。

(会田)でも大体4倍ぐらいかかるんだよね。

(会場)

(松蔭)《灰色の山》という作品は、女性を描かずにサラリーマンを何千体と描き続けるんだと話を聞いて、当時またすごいことを始めたなと思いました。しかし、なんでサラリーマンを描いたんですか?背広への憧れがあったと映画の中で話していますが、それだけですか?

映画『駄作の中にだけ俺がいる』より

映画『駄作の中にだけ俺がいる』より

(会田)どうしても描きたいものが「背広」だったとしか答えようがないんですよね。これを描く2年程前に、山口晃くんと上野の森美術館で二人展をやったんだけど、なにか新作を作らないと、という状況で、背広の絵を描きたいと思ったのが最初だね。

(松蔭)背広の人物は、一体だけではダメだったの?

(会田)巨大な背広が一つだけ、というのもアイディア段階ではありました。背広というモチーフをどう調理できるのかと考えて、結局その展示までには間に合わなかった。それにしても「背広」というものは圧倒的に妙なものだと今でも思っていますね。

(左)会田誠 (右)松蔭浩之

(左)会田誠 (右)松蔭浩之

(松蔭)背広に対しての捉え方ですけど、オレは個人的にスーツが好きで、若い時はオープニングパーティなどにはスーツを着て行っていましたね。Tシャツや変な格好をしたアーティストが自己主張をしている中で、ネクタイ締めてスーツを着ているオレが一番変だ、みたいな感覚が好きでした。

(会田)背広が象徴するものは多分4つ、5つくらいの方向性があると思っています。西洋中心主義みたいなものも象徴するだろうし、いわゆる資本主義、キャピタリズムと同じだということもある。「背広」=会社、あるいはホワイトカラー、デスクワークという考えが当たり前になっているけど、それは当たり前じゃなくて一種の異常状態だと今でも思う。だけど、僕は経済学者じゃないから、背広の人物を絵に取り込んで描いてみた、というくらいのことなんです。

(松蔭)当時ちょっと仲の良かった経団連(経済団体連合会の略)関係のご令嬢が、どうにも会田誠の作品を好きになれないと言っていたんだよね。「あなたの友達の会田誠という人の作品は、社会を挑発するような態度でムカつく」と。新作の《灰色の山》についてオレが説明したら、「またそうやってお国を馬鹿にするようなことをやらかして」と言う。オレはそれに対して一言、「会田誠をそういう見方しないで欲しいな」と答えた。ベタな言い方だけど、《灰色の山》を見たら企業戦士とか、24時間戦えますか?のリゲインのCMとか思い出したんです。だから、この絵は会社の歯車と言われる、名もないような人たちへの「レクイエム」なんだって説明したんですよ。その女性は腑に落ちない顔をしていましたけどね。この絵について会田さんはどう考えているのかな?描かれている人物はみんな目や口などの顔が描かれていないでしょ?

(会田)この世に一番ありふれていて、当たり前すぎて意識もされなくなっているけれど、最も数多く存在しているものを対象に制作したいと思っています。フェミニストに対して言い訳がましいけど、若い頃にロリコン趣味な変態的な作品をつくったのも、日本にありふれて存在していて、でも美術において取り上げる人がいなかったから。「他の作家が注目しないなら、僕が制作の対象にしますけどね」というような感じでしたね。

(松蔭)たしかにそうですね。「背広」も普遍的でポップで、みんなが知っているものなのに視点を変えるとすごく違和感がある。

(会田)自分が制作の対象にすることによって、その対象自体が良い悪いとか、変態賛成とか、サラリーマンのビジネススーツ反対とか、あるいは賛成とか、そういうことを言いたい訳ではないですね。僕の場合は「ある形をただ提示する」ということだけで、それが美術家の仕事だと思っています。

会田 誠 《灰色の山》   Acrylic on canvas  300×700 cm  2009-11 Courtesy  of  Mizuma Art Gallery cooperation: WATANABE Atsushi photo: MIYAJIMA Kei  © AIDA Makoto

会田 誠 《灰色の山》 Acrylic on canvas 300×700 cm  2009-11
Courtesy of Mizuma Art Gallery
cooperation: WATANABE Atsushi photo: MIYAJIMA Kei  © AIDA Makoto

(松蔭)オレの師匠の森村泰昌先生いわく「美術家が言うことなんて信じるな、全部嘘だから」って言うんですね。でもオレはキレイな嘘がつけるのが芸術家だって信じています。それと森村さんは「美術家の作品というのは問いかけである」とも。だから会田誠の話を聞いても、まあ似たようなことなのかなと思いますね。オレからすれば、会田誠の作品に対してお嬢さんが嫌悪感を覚えたということはほとんど正しいと思うんですよ。オレが言ったことも正しいし、答えが一つじゃない。そういう答えが一つではないものが、オレは現代美術の作品だと思っているんですよね。

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《灰色の山》のお話から現代美術についてのお二人の考察など、大変興味深いお話でした。続くレポート【その2】では、会田誠のこれまでの作品も交えながら展開していきます。

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2016/4/23 − 5/29

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感想帳より+福岡ミュージアムウィーク2016のお知らせ

会場内に設置中の感想帳より、来場者の声をお届けします!
感想とともに、ぞくぞくとタグチ・アートコレクションに追加してほしい作家や作品のリクエストも書き込まれています♪
会期中は受け付けておりますので、ご来場の際には、思い切って書いてみてくださいね。

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・近くでじっくり見ることができました。ウォーリーが見つかってうれしかったです。

・とてもステキでした…!会田誠さんのファンなので、とてもうれしかったです~!可能であれば、ノーマン・ロックウェルの作品がみたいです。

・奈良作品が可愛すぎて、また見に来ることを絵と約束しました。あと、会田さんの作品は前に個展で見たことがあったけれど、近くで見れて集中して見ることもできて、やっぱりすばらしく、どことなく笑える作品で大きさも大好きです。本当にありがとうございました。マリーナ・カポスやキース・へリングの作品もまた見たい!

・一作品一作品に集中して見ることができる展示でした。解説などが横になく、どーんと迫力があってよかったです。あと、高校生無料にしてくれてありがとうございます。

・小泉さんの作品に引きずり込まれてしまいました。何度も見てしまう。ずっと見ても見えないような、何か見えているような。でも心というより深いところで何かがうごめいている感じがしました。まだ体の中がざわざわしています。大切な作品たちを、気づきをありがとうございます。

・ライアン・マッギンレーの写真がとても印象に残りました。それから奈良さんの女の子の瞳がすごく深く力強くて感動しました。

・奈良さんの《Cosmic》が見れてとてもうれしいです。福岡ではなかなか奈良さんの作品を見ることができないので、ぜひ、またお願いします。奈良さんの描く深い深い肌や眼が大好きです。

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そして、いよいよ5/14(土)から、市内14の博物館・美術館が参加する「福岡ミュージアムウィーク2016」がスタートします!
5/22(日)までの9日間、リーフレットのご持参で入場料の割引や、市内ミュージアムの招待券、お食事券などが当たるスタンプラリーも開催します。
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アルティアムでは、5/14(土)、5/21(土)には、担当ディレクターによるギャラリーツアー(作品解説)を行います。
この機会に、市内のミュージアムを巡ってみてくださいね◎

【展覧会ページ】
タグチ・アートコレクション 
しあわせの相関図

2016/4/23 − 5/29

タグチ・アートコレクション

オープニングレセプション レポート

初日に開催しましたオープニングレセプションの様子をお届けします! コレクターの田口弘さんのお話を聞きたい!という熱心な方、貴重な現代アート作品をいち早く見たいという方などで、会場は賑わいました。ご来場いただき、ありがとうございました。
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(以下はオープニングレセプションでのトークを一部抜粋・編集したものです。)
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(ディレクター・鈴田)
レセプションにお越しいただきまして、誠にありがとうございます。本展は「しあわせの相関図」というタイトルで、タグチ・コレクション280点を超す作品から、7作家8点をセレクトさせていただいて構成した展覧会です。そこで初日となる本日は、オープニングレセプションにコレクターの田口弘様にお越しいただいておりますので、ご挨拶いただきたいと思います。

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(田口弘さん)本日は大変お忙しいところ、ご来場いただきまして本当にありがとうございます。
私は今から30年ほど前に、東京・新橋のとあるブティックの店頭にキース・ヘリングの絵画がずらっと並んでいるのを見て大変びっくりした経験がございます。そこで見たキース・ヘリングの絵は、「こんな絵を見たことがなかった」という初めて見る絵でございまして、新鮮でシンプルで非常に力強い絵だったというふうに記憶しております。そこでいたく感動して、以来、現代アートのコレクションを始めたという経緯です。
当時は、アメリカからポップアートがどんどん日本に入ってくる時期でした。皆さんもご承知だと思いますが、アンディ・ウォーホルはキャンベルスープの缶詰やコカ・コーラの瓶、あるいはドル紙幣などのどこにでもあるようなものを素晴らしい現代アートに変えて、我々に見せてくれたわけです。ロイ・リキテンスタインはアメリカの漫画を芸術的な作品に変えて我々を驚かせてくれました。はじめに申しましたキース・ヘリングは、落書きを大変元気の出る絵画に変えて我々を元気づけてくれたということもありますね。このように現代アートの世界というのは、我々が想像もしないような新しいアイディア、あるいは新しい発想、そういうものが次から次に出てくる素晴らしい世界だというふうに考えております。
私はかれこれ50年ほどビジネスをやってまいりましたが、ビジネスというものも、やはり常に新しいものを作り続けていくものだということが(私も)この歳になりまして、やっと分かってきたような気がしています。現代アートの世界というのは、そういう点からいくとビジネスよりもずっと進んだ世界なのです。ある意味では、ビジネスの行き先を暗示してくれているのではなかろうかと考えているわけでございます。そういった素晴らしい現代アートをできるだけ多くの人に、特に若い人に見ていただきたい。学生さんや子どもさんにもぜひとも見ていただきたいと、そういう想いでコレクションを手がけてまいりました。
今回、この三菱地所アルティアムで「しあわせの相関図」という展覧会を企画していただきました。私どもの作品が九州の皆様方にもご覧いただける機会を得ましたことを、本当にありがたく喜んでいる次第でございます。作品をご覧いただきましたら、ぜひとも皆様方のご意見、あるいはご要望を寄せていただきたいと思っております。見ていただく方のご意見に基づいて作品を集めていきたいと考えておりますので、ぜひともご協力をいただきたいのです。 今後ともタグチ・アートコレクションをよろしくお願いいたします。簡単ではございますが、ご挨拶とさせていただきます。

ご挨拶の後も来場された方の質問などに、気さくにお答えしていた田口さん。来場者の皆さんも作品やコレクションへの興味が高く、田口さんへ次々に感想をお伝えしていたようです。
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また、田口さんのご挨拶を受けて、会場には感想帳を用意しております。 感想や、この作家の作品が見たい!という熱いリクエストをぜひ書いてみてくださいね◎
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最後に、本展に参加している作家の展覧会をご紹介いたします。どちらも東京ですがこちらもお見逃しなく!
◆小泉明郎 「MOTマニュアル2016 キセイノセイキ
(会場:東京都現代美術館 ~5/29まで)
◆ライアン・マッギンレー 「ライアン・マッギンレー BODY LOUD!
(会場:東京オペラシティギャラリー ~7/10まで)

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伊藤隆介のフィルム・スタディーズ

ギャラリートークゴールデン洋画トーク

伊藤隆介×澤隆志+工藤健志

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澤隆志(映像作家・キュレーター)+工藤健志(青森県立美術館学芸主幹)を聞き手に、会場内にてトークを開催します。

日時:2016年6月5日  14:00〜15:30
会場:三菱地所アルティアムイムズ8F
参加無料・予約不要 ※要・展覧会チケット

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天神洋画劇場
伊藤隆介の「フィルム・スタディーズ」

2016/6/4 − 7/3

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