田根 剛|未来の記憶

オープニングレセプション レポート

Archaeology of the FutureーImage & Imagination

初日に建築家・田根剛さんをお迎えし、オープニングレセプションをおこないました。当日は会場に入りきれないほどたくさんの方にお越しいただき、大変なにぎわいのなかご挨拶いただきました。
(以下はオープニングレセプションでのトークを一部抜粋・編集したものです。)

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(アルティアム・安田)本日は「田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the FutureーImage & Imagination」のレセプションパーティーにお越しくださり、誠にありがとうございます。本展は昨年秋に東京の二会場(TOTOギャラリー・間東京オペラシティ アートギャラリー)で開催されました展覧会を「Image & Imagination」というサブタイトルのもと、再構成し実現しました。関係者の皆さまに、心より感謝の気持ち申し上げます。本当にありがとうございます。

アルティアムとしましても、建築の展覧会は約5年ぶりということで、世界で活躍される田根剛さんに、ここで展覧会を開催いただきましたことを嬉しく思います。それでは、田根さんからご挨拶をお願いいたします。

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(田根剛さん)こんばんは。建築家の田根剛と申します。今日はお集まりいただきまして、本当にありがとうございます。僕自身、福岡に来るのは初めてです。一昨日着いてからほとんどこちらで最終確認をしており、なかなか街に出られなかったのですが、ようやく今日オープンして街を歩いた第一印象として、本当に文化度の高い街だなと感じました。海外に長く暮らしていると、わりと福岡出身の方に会う機会が多く、聞いてみると、福岡は東京に出るのも海外に出るのも感覚的には同じくらいだということで、海外に行く人も多いらしいですね。
そういう意味では今日こんなに集まってくださったことも含めて、好奇心の多い方が育まれるすばらしい環境だということが、なんとなく肌感覚としてあります。初めて来た街ながらもこんなに集まってくださって嬉しいなと思っています。

去年の秋にTOTOギャラリー・間という建築専門のギャラリーと、東京オペラシティ アートギャラリーの二会場で初の展覧会を開催し、それを福岡でやってくださるというお話をいただきました。

東京で開催した展覧会から、このアルティアムという会場に合わせて、展覧会を通して何を強く伝えたいかを再考し、「Image & Imagination」をテーマに、「物事を見てイメージすること」と「そこからより遠くへ想像力を働かせてつくっていくこと」を建築を通してやっていこうと構成しました。

展覧会は一回終わってしまうと再現は不可能なものだと思っています。その場所でしかできないことや体験できないこと、それを見る前と見た後とで、価値観に変化が生まれるような強いものをどうにか伝えたいという想いがあって。会場内の三つの部屋は異なる構成ながら、でもそれがひとつの建築、ひとつの建築家として形にできることを表現してみようと思いました。限られたスペースですが、濃密な体験が伝われば良いなという思いでやっていました。
たった三つの部屋でありながら、それぞれでまったく違う世界観と空間体験を、どうにかつくれたかなと思っています。
最初の部屋はイメージという二次元の表現で、真ん中の部屋では様々なプロジェクトの模型、奥の映像の部屋は光だけで出来上がった空間です。まったく異なる素材を使って、三つの会場をつくってみたので、そのアプローチの違いもぜひ楽しんでいただけたらと思います。

こちらのギャラリーは、一回チケットを買えば会期中何回来ても良いということなので、毎回来るたびに見えるものや伝わるものが変わってくるぐらい密度の濃い空間を体験しに、ぜひまた足を運んでくださると嬉しいなと思っています。ありがとうございました。

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「未来の記憶」をテーマに、三つの部屋を通して、イメージからイマジネーションへと飛躍していくプロセスをお楽しみください。
会期は3/10(日)まで。2/19(火)、2/20(水)は休館日です。ご注意くださいませ。
ご来場、お待ちしております。

【展覧会ページ】
田根 剛|未来の記憶
Archaeology of the FutureーImage & Imagination

2019/1/19 − 3/10

30祭SANJUSSAI凱旋

松尾スズキのトークなんとかここまで起訴されず

松尾スズキ

松尾スズキ

演劇ジャーナリストの徳永京子氏を聞き手に、唯一無二の演劇集団「大人計画」の設立から、メンバーと共に歩んだ30年の歴史、そして自身の出身地である福岡への想いを、思う存分語ります。

日時 : 2019年3月20日 開場18:00  開演18:30 終演予定20:00
会場 : イムズホールイムズ9F
出演 : 松尾スズキ
聞き手 : 徳永京子演劇ジャーナリスト
料金 :前売1,500 円 ※前売券は販売予定枚数に達したため、販売終了いたしました。
当日2,000円全席指定 ※当日券情報は3月1日イムズHPでご案内予定です。
チケット取扱 : 2月9日AM10:00より、チケットぴあ<Pコード 641-665>、ローソンチケット<Lコード 83088>、e+にて発売開始。
※未就学児の入場は不可
※トークイベントの詳細はこちら
※トークイベントに関するお問い合わせはスリーオクロックTEL 092-732-1688 / 平日10:00-18:30まで

【展覧会ページ】
30祭(SANJUSSAI)凱旋
大人計画大博覧会in福岡

2019/3/16 − 4/21

krank marcello ぼくらはいつのまにか 虹にさわれないことをおぼえていた

感想帳+作品紹介

好評開催中の本展、会期も残りわずかです。会場に設置している感想帳から来場者の声と、展示作品について紹介します。

・お店とはまた一味違った物語が見られて楽しかったです。お店にまた行きたくなりました。

・素敵な世界、時間をありがとうございます!ふと、ひとつひとつのタイトルと文章を読み、あらためて作品を見ると心の中にあった、なつかしい何かをたくさん思い出しました。また少し時間をおいて、見に来ようと思います。

・ 小さい頃、虹が出るたびに、虹の根っこまで行ったら触れる!と心から信じていたことを思い出しました。今回の展示を見て普段しまいがちな好奇心をもっと出していこうと思えたことや、いろんな感情があふれてきて、思わず涙がこぼれました。

・krank marcelloさんに加えて、haruka nakamuraさんや、tsumugiさんも参加されており、大好きな方の重なり合いで、とても素敵で居心地のいい展示でした。また何度も足を運びたいと思います。

・藤井さんの作品は初めてですが、素敵で感動しました!古くて新しくて、新鮮だけど懐かしい。寂しさと明るさと切なさとぬくもりと、たくさんのエッセンスが詰まった作品でした。また、音楽、照明、レイアウト、植物すべてが融合して生まれるハーモニーのようなものを感じました。

・ かげがでることをくふうしたり、おもしろいものがたくさんありました。お母さんが「こんなへやが自分のへやだといいな」と言っていました。

・ 大人になって何を忘れてしまったのだろうと思いながら、何かを思い出したくて来てみました。もう一度来ます。

・扉を開けて入りこんだ世界が、なんともなつかしく切なさを感じる空間で、思いがけずひとりいろいろなことに思いをはせるひとときとなりました。

・なんとなく見てみようと思って入ってみたのですが、すごく素敵で心が浄化され、童心を思い出しました。小さな繊細な気づきみたいなものがいっぱいに広がっていて、なつかしさを感じました。見れてよかったです!

・今日で5回目。少し展示内容が変わっていてまたいろいろと想像するのが楽しかったです。初めて娘と一緒に行けてよかった。馬から羽が生える映像を何度も見たり虹のボタンを何回も押してのぞきこんでいました。また来ます。

・北海道から来ました。来れて良かったです!とっても素敵で、帰るのが惜しい気持ち、ずっと居たい空間でした。これからも素敵なものをたくさんつくってください。

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会場では、ヴィンテージ家具と彫刻を組み合わせた作品や、光と影を用いたインスタレーションなど、約30点を展示しています。

「Mother」という作品では、光の大きさや角度、高さを変えて、一体の鹿から、タイトルにもある通り母と子のようなふたつの影が投影されます。ここにはいない母親が導いているかのような影に、いつも心に存在する大きくあたたかい相手のことを感じさせてくれるような作品です。藤井さんもお気に入りの作品とのこと。

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Mother

作品「祈り」では、動物が見上げる先に十字架の光が投影されています。一見どこかから十字型の光が照射されているかのようですが、実際は板に置いた鏡に当たった光が反射して映し出されたものです。作品の仕組みや仕掛けを考えながら見るのも楽しいです。

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祈り

ほかにも、一番制作時に苦労したと話されていた「最後に虹を描くボタン」では、水と光の屈折による本物の虹がこの装置のなかでご覧いただけます。こちらはぜひ会場でご覧くださいませ。

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最後に虹を描くボタン

会場の音楽を担当したharuka nakamuraさんや植物装飾を担当したtsumugiさんをはじめ、西浦裕太さん、samuloさん、rukaさん、zujo circusさんなどさまざまな分野で活躍する作家とのコラボレーションワークも展示。

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12/26(水)より一部展示替えをおこないました。一度来られた方も、ぜひ再入場できるチケットをご利用ください!
最終日1/14(月・祝)には藤井さんが来場する〈1日限定〉出張販売会もあります。貴重な機会にぜひお時間を合わせてお越しくださいませ。

【展覧会ページ】
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ぼくらはいつのまにか 虹にさわれないことをおぼえていた

2018/11/23 − 2019/1/14

田根 剛|未来の記憶

オープニングレセプション《作家来場》

Archaeology of the FutureーImage & Imagination

田根剛を迎えて、オープニングレセプションを開催します。

日時:1月19日19:00〜20:00
会場:三菱地所アルティアムイムズ8F
※参加無料・予約不要

【展覧会ページ】
田根 剛|未来の記憶
Archaeology of the FutureーImage & Imagination

2019/1/19 − 3/10

krank marcello ぼくらはいつのまにか 虹にさわれないことをおぼえていた

〈1日限定〉出張販売会

krank marcello代表の藤井健一郎さんがショップを飛び出して、アルティアム併設ショップにて、新作となる作品を販売いたします。1日限りの特別販売会です。

藤井さんの在店時間など、最新情報は、アルティアムSNS(Facebook,Twitter,Instagram)でお知らせいたします。

日時:2019年1月14日月・祝 10:00〜20:00
会場:アートショップ・ドットジーイムズ8F/アルティアム併設ショップ

【注意事項】
・ご購入作品は、後日krank marcelloより発送となります。当日はお持ち帰りいただけません。
・無くなり次第、販売終了とさせていただきます。
・お取り置き、通信販売は不可とさせていただきます。

【展覧会ページ】
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ぼくらはいつのまにか 虹にさわれないことをおぼえていた

2018/11/23 − 2019/1/14

田根 剛|未来の記憶

田根 剛 トークイベント

Archaeology of the Futureー未来の記憶 Image & Imagination

田根剛によるトークイベントを開催します。聞き手に池田美奈子氏をお招きします。

Photo: Yoshiaki Tsutsui

Photo: Yoshiaki Tsutsui

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【プロフィール】池田美奈子(いけだ・みなこ)

ドイツのゲーテ大学で美術史を学んでいた時にバウハウスと出会いデザインの道へ。帰国後、東京藝術大学大学院を修了し、同大学助手を務めた後、出版社に勤務しデザイン誌の編集者となる。独立して、IIDjを共同設立し、情報デザインを中心に活動を展開。2003年より現職。専門はデザインと情報編集。編著書に『情報デザイン』(グラフィック社)『カラー版日本デザイン史』(美術出版社)『編集デザインの教科書』(日経BP社)など。グッドデザイン賞、福岡県美しい街づくり建築賞、福岡市都市景観賞審査員などを歴任。東京都出身。

日時:1月19日 開場13:30、開演14:0090分程度
会場:あじびホール
福岡アジア美術館内/福岡市博多区下川端3-1リバレインセンタービル8F
聞き手:池田美奈子九州大学大学院芸術工学研究院 准教授
定員:120名先着順・自由席
料金:500円
申込方法:アルティアム092-733-2050まで要電話予約。12月27日より受付開始。※定員に達したため、申込受付を終了いたしました。

【展覧会ページ】
田根 剛|未来の記憶
Archaeology of the FutureーImage & Imagination

2019/1/19 − 3/10

krank marcello ぼくらはいつのまにか 虹にさわれないことをおぼえていた

オープニングレセプション レポート

初日にkrank marcelloの藤井健一郎さん、輝彦さん、スタッフの皆さま、キュレーターの林綾野さんをお迎えし、開催したオープニングレセプションの模様をお届けします。本当にたくさんの方にご来場いただき、ありがとうございました。
(以下はオープニングレセプションでのトークを一部抜粋・編集したものです。)

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(アルティアム・安田)本日はオープニングレセプションにお越しくださり、誠にありがとうございます。会場にはkrank marcelloの皆さまに来ていただいております。
krank marcelloは、藤井健一郎さん、輝彦さんを中心に、福岡市警固のショップを拠点に活動されています。お客様の中にも、お店を訪れた方はたくさんいらっしゃるかと思います。

会場では、すてきな世界が目の前に広がっておりまして、本展はアートキッチンの林綾野さんにキュレーションを務めていただきました。krank marcello初の展覧会という形で、皆さまとこの空間を共有できますことを本当にうれしく思っております。
それでは、藤井健一郎さんの方からご挨拶をお願いいたします。

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(藤井健一郎さん)はじめまして。krank marcelloの藤井と申します。ここに並んでいるのは、この会場の制作をやった4人です。今日はこんなにたくさん来てくださって、ありがとうございます。感謝しています。

会場内には、作品が20数点並んでいて、一個一個メッセージと仕掛けとからくりがありますので、皆さんの心に残ってくれたらうれしいなと思っています。この会場に入って帰るまでに、ちょっとだけでも幸せな気持ちになってもらえたら何よりです。

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左から 林綾野さんと、krank marcelloの藤井健一郎さん、藤井輝彦さん、荒木忍さん、吉本康晃さん

中央にあるメインのオブジェを作ってくれたのは、tsumugiさんです。僕らがベルギーから見つけてきたヴィンテージのクリスマスオーナメントの鹿に、tsumugiさんが、木が生えているように植物で装飾してくれました。タイトルは「森の根」で、森の根っこの神様というイメージです。

表でケータリングを担当しているのは、料理家の広沢京子です。僕らがまだお店をはじめたばかりの16年前くらいに、東京に初めてお仕事で行った時、まったく誰も知らない中、彼女が色々なところに連れて行ってくれて。本当に僕らをバックアップしてくれた一人です。みんな、美味しいから食べて(笑)。

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撮影:吉本康晃(krank marcello)

会場で流れている音楽は、ミュージシャンのharuka nakamuraです。展示が決まった時に彼に最初にオファーして、このために書き下ろしてもらった「虹」という曲です。

 

(アートキッチン・林綾野さん)お店に行かれた方は皆さん感動されたと思うんですけど、本当にすばらしい空間で、この世界をもっと展示室のような大きな空間で表現してもらえたらなと、2年前くらいにご相談して、それからずっと構想をあたためてくださって。寝る時間も惜しんで、企画づくりから制作まで、スタッフの方々も、藤井さんも輝彦さんも本当にがんばってくださいました。すばらしい空間になって、うれしいなと思っています。

今日はたくさんの方々でにぎやかさを味わっていただいて、また度々足を運んでいただいて、この世界とそれぞれに対話していただけたらうれしいなと思います。

 

ご挨拶のあとも、展覧会や美味しいお食事を楽しまれていました。展示作品の中には、思わずわ〜っと声をあげてしまうような仕掛けがあるものも。また、COOK LUCKの広沢京子さんのお料理とドリンクも大変人気で、度々列ができるほどでした。
展覧会の会期は1/14(月・祝)まで。12/31(月)、1/1(火・祝)は休館日。ぜひ会場に足をお運びください!

【展覧会ページ】
krank marcello
ぼくらはいつのまにか 虹にさわれないことをおぼえていた

2018/11/23 − 2019/1/14

Local Prospects 4

アーティスト インタビュー

「この隔たりを」というテーマのもと、公募に挑み、作品を作り、そして展示を実現した3人のアーティストたち。それぞれ作品や制作背景、思いなどについて話をうかがいました。

取材・文:木下貴子(Fukuoka Art Tips)

01入口写真

●寺江圭一朗
《あなたの反応が私をつくる。私の行動があなたをつくる。》は、寺江が2016年8月から2018年1月にかけて研修制度で滞在していた中国・重慶市で出会った、ホームレスの青年との約1年にわたる交流を記録した映像と、二重露光の写真、青年が描いた絵画、作家によるテキストで構成される。

《あなたの反応が私をつくる。私の行動があなたをつくる。》2017-2018 展示風景

《あなたの反応が私をつくる。私の行動があなたをつくる。》2017-2018 展示風景

《あなたの反応が私をつくる。私の行動があなたをつくる。》2017-2018 展示風景

はじめは中国の再開発地域をもとに作品を作ろうと考えていたという寺江。「中国の問題点というか、古い建物を壊して新しいビルを建てているエリアがあって。全部壊されているなか、一つだけしぶとく居続けている宿があり、そこに泊めてもらうようになったんですよ。そのエリアを散策していたらアイデアでも出てくるかなって、1カ月ぐらい通っていたたなかで、ホームレスの彼を知ったんです」。

青年に初めて声をかける場面を映す《出会う》からはじまる記録映像は全10作。うち半数以上が、椅子を作ったり、絵を描いたり、トウモロコシを焼いて食べたりと、寺江が青年に何かを提案し、それを受けての青年の行動が映し出される。青年がホームレスになった理由や社会背景などには特に触れることなく、2人の交流の様子が淡々と流れる。「作品には使ってないけど『なんでホームレスになったか』とか『働かないの?』とか、一応聞いてはいるんですね。話はしたけど、あんまり……。僕が選んでいるんでしょうね。提案はたくさんして彼がやらなかったこともすごくいっぱいあったし、要は彼がやってもいいよってことだけでできています」。2人の会話は、当然ながら中国語だ。寺江による手書きの字幕は、寺江自身も分からない箇所があり、それらは謎の記号やぐちゃぐちゃっとした線で表されている。通訳も翻訳も介さない。「訳してもいいんだろうけど、僕にとってはあんまり意味がなかったんで。夢の絵を描いてもらった《夢》という作品は、帰る直前に撮影してつい最近編集したんですけど、まじでなに言っているかわかんなくて。あれ、なんでこれしゃべれてるんだろう、なに言ってるんだ、みたいな(笑)」。

過去に寺江は、韓国で見知らぬ人に韓国語でトイレ掃除をさせてほしいとお願いする作品なども作っているが、本作も言語を強く意識したのだろうか。「作品に表れているか分かりませんが、基本的に人って考えたりするときも言葉を使うと思うんですよ。すごく理想的な概念みたいなのってたくさん生みだされてはいるけど、便利な言葉が。たとえば『平和』とか。だけど頭で思いついてはいるけど、基本的にはそれができていない。せっかく思いついてはいるけどできないっていうのは、まだ言葉で考えることができないからだと僕は考えていて。言葉の扱い方というか、そういうのを更新できるようなことができたらもうちょっとマシな人間になるというか、僕自身も世の中の人々も。言葉についてはそういうことを考えています」。『この隔たりを』というテーマは、これまで寺江が考えてきた言葉に対する意識に近かったともいえるかもしれない。

会場奥には、本展覧会直前に重慶に渡り、青年と再会した時の様子を記したテキストが展示される。

04寺江
「僕の提案によって彼が何かやってくれたり、話をしてくれたりしたものがカメラに映る。彼の反応や僕に話しかけている雰囲気が、僕のイメージを作ってくれているっていうふうに最初は考えましたね。彼の映像を通して、鑑賞者には僕自身がどういう人かっていうのも見えるんじゃないかと思ったんですよ。あとは、僕は外国人で彼は中国人で、彼はホームレスで僕は美術やってる人でって、まったく違う2人で、でも彼の生き方みたいなものがそのまま僕の生き方みたいなものにも少し関係するようになってきていて。いまは。だからといって僕はホームレスにはならないと思うけど、具体的に作品として見えにくい部分で、彼が僕に影響を与えているということは確実にありますね」。映像ではタイトルの《私の行動があなたをつくる。》の部分を感じられたが、会場奥にあるテキストこそタイトル全体を表しているように思える。「確かに作品として示せているのは、これが一番そうかもしれません」。とても長いテキストだが、ぜひ会場で読み通してほしい。映像を見るだけよりも、本作の感じ方、捉え方がきっと異なるだろう。

寺江圭一朗

寺江圭一朗

 

●木浦奈津子
3面の壁に展示される13点の絵画。《うみ》あるいは《こうえん》と題されたこれらの作品は、木浦の生活圏内である鹿児島の風景を描いたものである。「書道のように描きたい」というはやく勢いのある線で簡潔に描かれた画面。特定の場所や時間、作家の心情をできる限り排除し、他者に開かれた風景画として提示される。

展示風景

展示風景

展示風景

「あまり絵を作り込みたくないというか、作り込むと嘘になるんじゃないかというのを昔からずっと思っています」。作り込まずに出せる方法として、はやく描く。作品は構図を決めて撮った写真を参考に、色も印象を変えずに描くという。「対象物をみた印象をそのままに。写真を撮った後に描くわけなので、その写真を撮った時の自然なまま、自分の感情を入れずに絵を描くためにもはやく描く方法が一番いいかなと。(時間をかけてしまうと)いろんなものが変化するし、自分自身も変化します。その変わっていくことのが嘘じゃないかなって感じたことがあって。自分の意識というよりも見たそのものを描いていくというところが大きいですかね。じゃあ写真でいいじゃんって思うんですけど(笑)。でもそれを絵画でやりたいと思っています」。個人的な場所を表す風景でもなく、心象風景でもなく、他者に向けて。木浦の描く風景画は、だからこそ見る者にとっては、そこが未知なる場所にもかかわらず、昔行ったことがあるような、あるいは夢の中で見たような、感覚を共有するような作品となるのではなかろうか。

風景に人が入った作品もある。「昔は景色だけだったんですが、意図的にというわけではないですけど、最近人が増えてきました。人にちょっと興味がでてきたのかもしれません。いままで風景がおもしろいなって思っていたんですが、人が風景に入っているのもおもしろいなって思えてきたのも大きいかもしれません」。ただ人とはいっても、人影のように描かれ、性別も年齢も判断できない。ここでもまた、特定のものが排除されている。

《うみ》2018

《うみ》2018

自分を出さないように、感情を入れ込まないように描く一方で、「自分となかなか切り離せないというか、結局は自分のフィルターを通して絵を描かざるをえません。そこに矛盾というか『隔たり』があります」。

木浦奈津子

木浦奈津子

Local Prospectsの公募に応募したのは、今回で3回目。「受かるまで出そうと思っていた」と胸の内を明かしてくれた。「アルティアムのように有名なギャラリーで作家を公募するという企画自体がめずらしくて。ずいぶん前ですが、別の公募展(※「For Rent! For Talent!」)も企画されていましたよね。その時に、アルティアムは地元の作家を後押ししてくれるようなところなんだと思い、何度か展覧会も見にきて、ここで展示したいなと思っていました」。もう一つ、Local Prospectsの公募選出が作品そのものではなく作品展示プランであったことも大きい。いくつもの作品を壁に展示して生まれる「空気感」を木浦はとても大切にするからだ。会場ではぜひこの「空気感」まであわせて、鑑賞してほしい。

会場風景

会場風景


●吉濱 翔

吉濱は新作と過去作で空間を構成した。映像はいずれも大きなスクリーンではなくタブレットを使用し、タブロイド紙のテキスト《僕は舟でゆこう》は前に1人掛けの小さなベンチを置き、座った目線でみられる高さにするなど、1つの作品と1人の観客が向き合う展示となっている。

会場風景

会場風景

はじめに展示される《魂のゆくえ》は、吉濱の知人女性が「マブイグミ」という沖縄の風習をおこなっているドキュメント映像作品だ。とにかく音のインパクトがすごい。「マブイグミ」とは身体から抜け落ちた魂(マブイ)をもう一度身体に込めるおまじないというが、小さい画面にもかかわらず映し出されたその場所に、まさに自分の魂が入りこんでいるような感覚にさえなる。「音がきれいでしょう。バイノーラル録音という方法で、360度音を拾って撮っています。僕がカメラをもち、僕が実際に聴いている音がそのまま入っているんで、距離とか位置とかが伝わるんです」。園児らの声がするシーンに至っては、つい振り向いてしまったほどリアルだ。「儀式をやってくれた(出演者の)彼女との関わりが重要な作品ですが、もう一つ、音に気持ちや時間を込めると聴こえ方が変わるのではないかということを試してみたかった作品です。石を川に投げるシーンがあるんですが、彼女にはその石を一週間もち続けてもらいました。石が川の水面に当たるとおそらくポチャンと鳴るんだろうけど、一週間もち続けた石だとその音の響きが違うんじゃないか、心まで響いてくるんじゃないかってことを音楽的に考えたんです。彼女には好きなように行動してもらいましたが、その石の演出だけはお願いしましたね」。

《魂のゆくえ》2014

《魂のゆくえ》2014

新作《寄り道しながらゆこう》は、吉濱が普天間基地移設問題に向き合うために高江に向ったプロジェクトだ。「僕は基地反対だけど、デモとか座りこみとかに参加するときに労働歌を歌ったりとか、みんなで『基地反対』とか声を揃えることに対してすごく居心地が悪くなって、デモの現場に行きたくなくなるんです。他に関わり方がないかなと自分なりに考えた答えが、じゃあいろんなものを挟んで現場に行こうって……。おいしいご飯食べて、海みて、観光して、友達とふつうのことしゃべってとかしつつ、北上して現場に近づくにつれてみんなの意識も現場に近づいていく。どんどん頭の中の割合を占めるようになってようやく、体も心も辺野古や高江にチャンネルを合わすことができるんじゃないか。そういう試みというか、アクションです。現場で見て、歴史を学ぼうとか戦争がどうとかいうのは自分一人では抱えきれないから、そういうのではなく、美味しい物食べて行った先にそういう問題があるという関わり方もあるんじゃないでしょうか」。プロジェクト実行時の記録映像ではなく、プロジェクト実施後にイメージとして作られた映像と、プロジェクトに関するメモや地図が展示される。

「僕にとって大事なのは現場性だったり即興性だったりするので、そうじゃないものを展示することになるので作品とはいいにくい。個人的な思い入れとか、記憶とか、体験とかを振り返って、じゃあそれをどうもっていくのか。今回は、見せるためにものを作って展示したというよりは、どちらかいうと日記のようなもので、個人的なものをこの期間だけちょっとお見せするというのがイメージとして近いですかね」と話す。その日記のような視点から、見えない(あるいは見たことのない)沖縄の一部が見えたように感じた。

吉濱 翔

吉濱 翔

 

●活動する地域、あるいは見つめる地域について
今年で4回目となるシリーズ展「Local Prospects」は、地域を見つめる多様な視点の創出を一つの継続するテーマに開催している。3人それぞれに活動する地域、あるいは見つめる地域についてどう捉えているか尋ねてみた。

寺江は東京在住だが、大学卒業後は福岡で活動を長く行い、現在も福岡市西区にアトリエを構えている。
寺江:僕にとっては、場所ってすごく大きくて。アトリエもそうです。たとえば一軒家をアトリエにしているのと、アパートをアトリエにしているのではできあがるものがまったく変わってきます。できることが変わるんで。というのと一緒で、たとえば福岡で作れるものと東京で作れるものって僕は絶対違うと思うから、そういう意味でいまのところ僕は福岡のアトリエは大事にしています。僕にとって福岡は、すごく作品を作るにはいい場所だと思っています。地域性も含めて。

大学時代から数年は離れたが、いままた故郷・鹿児島を拠点に活動する木浦。
木浦:私にとっては、制作がしやすいところが一番の場所。鹿児島じゃなくほかの県でもいいんですけど、何にも属していない自分が……何か理由があればいいんです。大学があるとか、会社があるとか、働いているとか。何の理由もないのにその土地に住む理由はないなと思っていて。鹿児島は生まれた土地なので、住む理由としては生まれた土地、育った土地っていうのがあるし、その場所を描いてもいい権利があるという気がしています。他の場所を描いていると負い目があるというか、その地域のことも知らないのに、私なんかが描いていいんだろうかと……。逆に自分の身近な場所だと、描く理由があるというか、描くときにストレスを感じないんです。

沖縄生まれの吉濱は、大学卒業後、京都、東京に住み、昨年ロンドンに一年間滞在。この春、沖縄へ戻った。
吉濱:最近移動していて思ったのが、どこの土地も似ていて、そこにどれだけ根付いて生活できるか、足を下ろせるかということです。京都には4年住んでいましたが、1年住んだら出るかもしれないとか思っていて、そうすると地に足がついた活動がまったくできなくて。地域の人たちと関わる場所に出向かないとか、顔なじみの店を作らないようにしようとかやってたら、どこにも観光にいけなかったし、お店も知れなかったし、結局作品も1つも作らなかったんです。ロンドンでも同じ現象が起きてしまったのも、自分がいつ出てもいい状況だったからの結果なのかと。だから今回沖縄に戻ってきて、いつまで住むのかは分からないんですけど、今度は覚悟をもって土地と関わろうかなって。そうしないと自分の土地にならないことがわかりました。生まれた場所だけど5年ほど離れていたので、沖縄ももう自分の手元にはない。扱いにくいというか、自分の場所がない場所になっていたので、過ごしやすく生活できる場所を作ろうと意識したのかもしれません。沖縄、九州、日本がというふうに場所で分けて考えるというのではなく、自分とその土地の関わり、つまり自分の問題なのかなという感じですね。

【展覧会ページ】
Local Prospects 4
この隔たりを

2018/10/27 − 11/18

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