okinawan portraits 2012-2016

アーティスト・トーク

倉石信乃(写真評論家)を聞き手に迎え、石川竜一が、本展で初の公開となる最新作や作品の魅力について語ります。トーク後にはサイン会を予定しています。

◆倉石信乃(Shino Kuraishi)プロフィール
明治大学大学院理工学研究科新領域創造専攻ディジタルコンテンツ系教授。近現代美術史・写真史・美術館論。1988-2007年、横浜美術館学芸員として「マン・レイ展」「ロバート・フランク展」「菅木志雄展」「中平卓馬展」「李禹煥展」などの展覧会を担当。著書に『反写真論』、『スナップショット-写真の輝き』、『失楽園  風景表現の近代1870-1945』(共著)など。

日  時   9月4日開場14:00、開演14:30〜90分程度
会  場  セミナールームAイムズ10階
聞  き  手  倉石信乃写真評論家
定  員  60名
料  金  500円
申  込  アルティアムまで要電話予約 ※8/5より受付開始

【展覧会ページ】
石川竜一
okinawan portraits 2012-2016

2016/9/3 − 9/25

安野光雅のふしぎな絵本展

ミニ・ワークショップ 鏡とあそぼう レポート

九州産業大学4年、博物館実習生の松永です。
安野光雅のふしぎな絵本展の「ミニ・ワークショップ 鏡とあそぼう」をご紹介していきます。

今回のワークショップでは鏡を使った2つの体験ができます。
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↑こちらは鏡を使った万華鏡です!鏡の中に絵が広がり万華鏡のように綺麗に映ります。

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作り方は簡単!まず丸い台紙に好きなように絵を描きます。この時点では鏡に映るとどのように見えるか分からないので子ども達はワクワクしていました。

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次に合わせ鏡を置いて回すだけです。これだけなので小さなお子さんも簡単に作ることができます♪今日は2歳になったばかりの女の子も素敵な万華鏡を作っていましたよ。


↑完成した物はこのように映ります!鏡を回すといろんな色や形が出てきます。子ども達は模様が蝶に見えたり、連結列車に見えたりと様々な発見をして喜んでいました。

 

もう一つの鏡での体験はアナモルフォーシスです。

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アナモルフォーシスとは、ゆがみ絵のことで、まずは方眼紙に絵を描きます。そのあと、ゆがんだ方眼紙に絵の座標を移し替えていくと・・・
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↑完成品はこのようになります!ぐにゃりと伸びた家が、筒状になった鏡に映すとまっすぐになってとても不思議です!少し難しいのですが子どもたちはとても集中して取り組んでいました。イムズ内B2Fと会場内にも安野さんのアナモルフォーシスもあるので観にいらしてください。

毎週このようなお子様連れも楽しめるワークショップを下記内容で開催しているので是非お越しください!お待ちしております。

 

ミニ・ワークショップ 鏡とあそぼう
日時:会期中の土曜日/各日11:00〜
参加無料・予約不要・随時参加 ※要・展覧会チケット
小学生以下は保護者様の同伴をお願いしています

【展覧会ページ】
安野光雅のふしぎな絵本展
2016/7/9 − 8/28

okinawan portraits 2012-2016

オープニングレセプション≪作家来場≫

石川竜一を迎えて、オープニングレセプションを開催します。

日 時 2016年9月3日 18 : 30 - 20 : 00
会 場 三菱地所アルティアムイムズ8F 
※参加無料・予約不要

【展覧会ページ】
石川竜一
okinawan portraits 2012-2016

2016/9/3 − 9/25

伊藤隆介のフィルム・スタディーズ

ゴールデン洋画トークレポート【その4】

トークレポートは今回でついに最終回です。【その1】【その2】【その3】もぜひ、お読みください。

(工藤さん)では、最後の部屋に入っていきましょう。

(伊藤さん)この《タワーリング・ムービー》という作品は、「タワーリング・インフェルノ」という、アーウィン・アレンがプロデュースした一連のパニック映画の中で、大ヒットした映画をモチーフにしているというか、インスピレーションを得たものです。

(澤さん)実はイムズには、映画にそっくりのエレベーターがあり、さらに上の階に、映画にでてくるパーティー会場そのまんまの飲食店街がある。このイムズの建物自体セットなんじゃないか、という状況下に「イムズ内イムズ」みたいタワーが、ここにあるわけですよね(笑)。

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(伊藤さん)本当にイムズが、「タワーリング・インフェルノ」の舞台になった建物に似てるんです。これは嬉しい偶然でした。映画では、ビルを建てるのはポール・ニューマンで、東海岸からヨーロッパで修行したと思しき建築家なんですよね。世界最高のタワーを作るんだけど、火事が起きる。手抜き工事とか予算管理みたいなものが原因で、現場で事故が起きちゃうんですけど。そこに乗り込んでくるのが、スティーブ・マックイーン演じる消防署長で、こちらは肉体派なんです。知識層に対して「あいつらは現場がわからんのですよ」って言う(笑)。そういうタイプのアメリカ映画って多いですよね。

当時のパニック映画が見せていた恐怖って、今僕らが現実に向かい合ってる不安とか恐怖に比べると、牧歌的なんですよね。すごくスペクタクルな大変なことが起きて、脱出できなくなったり、世界戦争が起きたりしますけど、問題が近代的に統一されてるっていうか。ところが、僕らが現実に面している世界では、テロや原発や、個別の恐怖全てが僕らの生活に結びついていている。巨悪がいてどうこうという問題じゃなくなってますよね。片棒担いでるのは我々じゃないの?ってなる。そういうところが、ずいぶん違うんだなと感じてるんです。

(澤さん)牧歌的なパニック映画の話では、僕もそう言われればって思い出したことがあって。そもそもトークの名前が「ゴールデン洋画トーク」じゃないですか。昔は、いわゆる「ゴールデン洋画劇場」とか「金曜ロードショー」とか、毎日のように、テレビで映画が放映されてましたよね。僕らはそういう時代に生まれて、子どもの頃に恐怖を刷り込まれてしまったわけで。ただ、子どもだったから、パニックが解決するまで起きてられなかったんですよね。パニックになったまま、僕は眠りについてたんですよ(笑)。何も救われないまま朝を迎えてた。

なので、世の中終わっちゃったらどうしようとか、伊藤さんが子どもの頃に考えていたことっていうのは、僕も同じように思ってました。自分対世界みたいな、相手が宇宙とか世界っていう極端な存在になっちゃってたんですよね。今だと現実的な、例えば「借入金どうしようかな」とか(笑)。そういうのは、大人の恐怖のスケール感なわけですよ。子どもの頃、パニック映画がなぜしっくりくるかというと、リアリティーのある恐怖を知らないから。とにかく、この世の中終わっちゃったらどうしようみたいなところまでいっちゃう。

(伊藤さん)確かに。最後まで起きてなかったから、次の日洋画劇場見てた親に「あのあとどうなったの?」って聞いたら、「助かったよ」って、それだけ(笑)。親は当然逃げれることしか考えてないですからね。

(工藤さん)子供の頃、深夜にテレビで映画を見ていると、この世の中が全て虚構のように思えてきて、逆にリアリティーを感じなかったような記憶があります。むしろパニックやホラー映画でカタルシスが得られるようなところもあって、「恐ろしい」、「怖い」って感情より、今世界が全て消えてなくなるとしてもそれはそれで楽しいかも、なんて考えていたような・・・。一方で、クレイジーキャッツやドリフなどがこうした映画のパロディをやって、恐怖を笑いに変えてしまう。さっきのベッドがくるくるって上がっていく作品(《ドメスティック・アクシデント1》)を見て、不謹慎にも笑ってしまったんですけど、パニック、ホラーとコメディって実は表裏一体なんじゃないかと思ったりもします。当時のテレビ番組はそういう意味でバランスが取れていた。当時の子供達はそれで精神の安定を保っていたんじゃないかと(笑)。

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(伊藤さん)この部屋では2008年に作った《スクリーン・プロセス》って作品も《タワーリング・ムービー》と並べて展示しています。同じタワーでも時代によってあり方、感じ方が違うんで、一つの部屋で対比させるというか、見てもらおうとしています。

タイトルの《スクリーン・プロセス》は、映画では初期からある特撮の技術です。スターの人が車を運転しているシーンで、自動車の窓の後ろにスクリーンを立てて移動する道路の映像を投影したりとか、スターの人が本当に崖から落ちるわけにはいかないんで、崖を写したの映像の前で演技をして、合成したりする。あれが「スクリーン・プロセス」です。英語の方のタイトルは《The Seven Year Itch》としています。マリリン・モンローの「7年目の浮気」って映画があって、7年経つとそろそろ浮気の虫がウズウズしてくるよってことだと思うんですけど。「Itch」は「痒くなる」って意味ですから。2008年に作った作品です。2001年に9.11があって、最初のうちはいろんなこと考えてたんですけど、あれほどのショックだったのに、7年経って忘れてきてた時期なんです。9.11の際、最初にニュースの映像見たときに、具体的にはそんな映画見たことはないんですけど、映画みたいだなという既視感がありましたよね。それが、だんだん周りも忘れてる状況になってた。その時にこの作品を作ったんですね。後ろに流れてる音楽は、マリリン・モンローの当時の楽曲で「Do it again」、もう一度やり直そうって意味のタイトルがついてます。

作品では、ニューヨークのワールドトレードセンターの絵ハガキが貼ってあって、反対側では、「スター・ウォーズ」「ランボー」そういった80~90年代のパニック映画、SF映画の爆発、火事のシーンを編集したものをリピートして流して合成しています。一つ一つのイメージは関係ないんですけど、この絵ハガキとそういうシーンを一緒に見ると、現代を生きてる我々は記憶や連想、考察に結びついちゃうところがあって。ワールドトレードセンターは、預金残高や担保がどうだとか大人になってからの日常の象徴ですよね。ウォール街とかも。
あと、なぜ人間は買ってまで恐怖を買い占めたいのかっていうことも考えてます。9.11や3.11といった悲惨な体験を経て、通常はパニック映画なんてもう見なくていいでしょうってなりそうなんですけど、今、アベンジャーズとかスーパーヒーローが崩壊した世界でさらに戦うみたいな、最終戦争みたい映画をやってますよね。僕らの時代はパニック映画だったんですけど、今もテーマパークでお金を払って、長蛇の列に並んで、恐竜に追いかけられたり、インディ・ジョーンズライド(アトラクション)に乗って悲鳴をあげる理由がよくわかんなくて。それが面白いなって思いますね。それが70~80年代でいうと、映画だったんだなっていうことで。

 (工藤さん) 今回、伊藤さんの作品っていうのは、明確にこうですよああですよっていう答えがなくて、見る人がいろんな物語、そこからいろいろなことを考えるきっかけを与えてくれる作品なんですよね。伊藤さんがいろんな要素をごった煮に入れてるので、見る人によって、見る人の知識とか解釈の度合いによって、いろんなリンクを引っ張り出してこれるっていうことで、映画を知っていれば知っているほど、より楽しめるし、知らなくても、知らないなりの楽しみ方ができる、そこが伊藤さんの作品の一番面白いとこなんじゃないかなって思ったりもしました。

(澤さん)実際に経験したことじゃなくても、映画的な記憶の方がより圧倒的に恐ろしいとか悲しいとか嬉しいとか感じてるのかも。それが確かに自分の記憶だなとというのがあって。思ってる以上に、ヴァーチャルなものにリアルにイメージを受けていて、それを元に日々生活をしているというところも実はあったりする。そう言ったリアルなものを使っていながら、もう一度別の現実にしてみようっていうのが、この部屋のコンプレックスなんだと思いますね。

トークはこれで終わりなんですが、天神のTSUTAYAに元ネタの特集コーナーがありますので、是非是非見て欲しいですね。

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全4回にわたりお届けしてきたレポートもこちらで最後となります。展示や映画が見たくなった方は是非足をお運びくださいませ!

【展覧会ページ】
天神洋画劇場
伊藤隆介の「フィルム・スタディーズ」

2016/6/4 − 7/3

伊藤隆介のフィルム・スタディーズ

ゴールデン洋画トークレポート【その3】

レポートも後半戦の第3回目です!今回ご紹介するのはトーク中盤、伊藤さんの独壇場状態の時間帯のレポートです!【その1】【その2】もぜひ合わせてお読みください。
(※本文は、本イベントのトークを一部抜粋・編集したものです。)

(伊藤さん)こちらは、《コーネリアスのための映写機 PARTⅡ》です。映画は19世紀の終わりに発明されたものですけど、自転車の歴史も同じく19世紀に始まっているので結構新しいですよね。パーソナルな空想力とか移動の自由、どちらも個人主義の台頭が背景にあると思うんです。この作品では、それらを比較しています。
手動の映写機みたいな作品はこれまでも作ってました。そこに2011年に震災がありまして、電力の問題とかクロースアップされるようになりましたよね。
映画の場合は、本当に電気がないと、撮影も上映もできないんです。さらに、フィルム現像では化学薬品、鉱物資源を使って、地球を汚していく原罪があるっていうところがある。じゃあ、映画のフィルムはもういっぱいあるから、電気も薬品も使わないで映画を見る未来のシステムを作ってみたらどうかなと考えて作った、ある意味で革新的な発明です。タイトルの「コーネリアス」は、映画「猿の惑星」に出てくる科学者の名前です。主人公のチャールトン・ヘストンを助けるんですけど、ちょっと意気地が無い科学者で、フィアンセの女性科学者ジーラの方が勇気がある。

(澤さん)「猿の惑星」を吹き替え版で見ると、いつもコーネリアスってチャラい感じがして(笑)。あれがいい味出してますよね。

(伊藤さん)そうそう。とにかく情けない。「スター・ウォーズ」でいうC-3POみたいな。TV版の声優は、植木等さん(役名はゲイラン)がやっていましたからね。CIMG7857

(伊藤さん)この作品では、人間が滅びたあと、猿が人間の文化を継承して生きてるけど、フィルムだけはどう使っていいか分からない。映写機だけが発見されない中で、いろんな猿の科学者が、人間が置いていった自転車とか、カーペットのコロコロとか、そういうものを駆使して、映画を見る装置を作って、人間の文化を継承しようとしてるっていうことなんです。

(澤さん)車輪の下のこれ、バナナ?(笑)

(伊藤さん)そうです。それはお弁当。

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特別に作品に乗って実演してくれた伊藤さん


(工藤さん)
じゃあ、次はこちらにどうぞ。

(伊藤さん)これは、最近始めたシリーズで、《涅槃に入る》という作品です。ここに仏像と安楽椅子がありまして、勝新太郎が出てる「釈迦」っていう大映の映画があるんですけど、仏像に投影される「釈迦」を見て、悟りを開いてもらうっていう作品です。

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置いてある椅子は、国際様式の近代を代表する椅子のシリーズの一つ(ミース・ファン・デル・ローエ作)なんです。
大映の映画って、高度成長の時に、日本の映画産業が洋画のスタンダードに近づくためにやってる映画という感じなんですよね。大リーグに行った日本の選手みたいな感じですよね。それらを組み合わせて作った作品です。

(澤さん)これは、ナム・ジュン・パイクの「TV仏陀」と関係はないんですか?

(伊藤さん)それのオマージュでもありますね。

 

(澤さん)さて、いよいよ最後のブロックに大波と大火事がみえますが、これらの構成も含めて説明してもらった方がいいかなと。

(伊藤さん)両面に見えるのが《ヘストンの海》っていう作品です。大作映画「十戒」で、モーゼ役のチャールトン・ヘストンが、ユル・ブリンナー演じるラメセスに追い詰められた時に、紅海がわっと割れて脱出していくシーンのオマージュです。

 

《ヘストンの海》の一部

《ヘストンの海》の一部


ここを通って次の部屋に行くんですが、両側のスペースはプロジェクターのブースになってます。実はその中も覗ける形になってます。向かって右側の方が、《渚にて》の部屋。「渚にて」という映画や原作小説が冷戦構造の話なんで、海辺にまつわるものだけではなく、核戦争に関わるポスターがいっぱい貼ってあります。

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左側のタイトルは《紙の砦》で、手塚治虫先生の作品から取りました。英語タイトルは「This must be the place」で、トーキングヘッズの曲から取っているんですが、オリバー・ストーン監督の映画「ウォール街」と、続編「ウォール・ストリート」のテーマ曲になっています。ここは、そのウォール街の世界をイメージしています。

この二つは特に映像の仕掛けはない、空間構成の作品になってます。

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作品という形ではないのですが、インスタレーションで映像が投影されている壁の裏の造作をどうするかって考えたんですね。普通の美術展は、きちっと裏側も板を貼って塗装します。でも今回はテーマが映画なんで、映画のスタジオ同様に、作りものの裏側が見えた方がいいでしょうってことで、ベニヤの板のまんまにしてます。昔は町のあちこちにベニヤが貼ってあって、そこに野立て看板として映画のポスターが貼られてましたよね。2週間にいっぺんくらい映画変わりますから、そこが貼り替えてく。今はあんまりないですよね?その野立て看板でよく見たような、70年代、新しくても80年代くらいの、今回テーマになってる作品の宣伝を見てもらおうと貼っています。

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トークレポートはいよいよ最終回・第4回に続きます!

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天神洋画劇場
伊藤隆介の「フィルム・スタディーズ」

2016/6/4 − 7/3

伊藤隆介のフィルム・スタディーズ

ゴールデン洋画トークレポート【その2】

作家の伊藤隆介さんに加え、澤隆志(映像作家・キュレーター)さんと工藤健志(青森県立美術館学芸主幹)さんをお招きし、開催した「ゴールデン洋画トーク」。レポート第二回目は、映画のタイトルが次々と出てくる内容となっています!ぜひ、【その1】と合わせてお読みください。ループする美術とテーマパーク、眠れない子どもの空想力など、興味深いお話が続きます!(※本文は、本イベントのトークを一部抜粋・編集したものです。)

(澤さん)次の作品も引き続き「Realistic Virtuality」シリーズで、タイトルは《定期便》ですね。この旅客機のイスは、3Dプリンターで作ったとかではなくて、一つ一つパーツを組み立てて作ったっていうことですが。

(伊藤さん)パーツはレーザーカッターでの製作です。でも、使ったことがないくせに、新テクノロジーに頼ると大変なことになるんですね。部品を切り取ったそばから、小さいパーツは、ゴミの吸引装置に吸い込まれていったという(笑)。

(澤さん)パニック映画じゃないですか(笑)。

《定期便》のセット

《定期便》のセット

(澤さん)映画「エアポートシリーズ」なんかもスタジオはこういうセットだったんですかね。

(伊藤さん)こういうことでしょうね。映画「エアポートシリーズ」で僕が熱中して見たのは、パート2にあたる「エアポート’75」です。操縦していた人が心臓発作を起こしたセスナが、ジャンボジェット機の操縦席にぶつかるっていうストーリーで。ないですよ、それは(笑)っていう映画なんです。機長、パイロット、頼れる人たちがみんな死んじゃって、スチュワーデスさんが通信しながら操縦して戻れるかっていうお話です。

映画は博打なので、10テイク撮って、1回でもうまくいけばOKなんですよ。1テイクで、特撮でも役者さんでもNGがなかったらOK。できなければ10回やるんです。この「Realistic Virtuality」シリーズと映画を比べてみると、映画の場合は1回うまくいけばいいんですが、美術作品の場合って繰り返さないといけないんです。1回だけで止まっちゃう展示だと、それはパフォーマンスのアートになってしまう。だから、飛行機が飛ぶ、揺れている、墜落するっていうのだと、映画になっちゃう。美術作品では、墜落しても、もう一回それを繰り返すとかっていうことになってないといけない。

(澤さん)ループ?

(伊藤さん)ループですね。ループを利用している体系って何かっていうと、テーマパークってそうですよね。映画のシーンを作ってるんですけど、それは繰り返しの都合で作ってる。

(澤さん)伊藤さんの場合は、いわゆるDVDプレーヤーとかハードディスクでループ再生するんじゃなくて、ループ再生してるかのような映像をクランクなんかを使って歯車的に機械でやっちゃってますよね。

(伊藤さん)そうですね。それと、クランクなんかの機構も見えた方が面白いっていう人がいまして。今回は結構クランクを見せて動かしてますね。

(澤さん)伊藤さんの作品は、必ず何かしらが動いてるんですよね。カメラ自体が動いてたり、カメラは固定してるけど対象物がぐるぐる回ってたりして。この作品も、すごく単純な回転が、こういう複雑な動きになるっていう。それにしても、酔うなぁ(笑)。

(工藤さん)ずっと見ていたら本当に酔っちゃいますね。今改めて思ったのですが、最近は精神にきついダメージを与える映画って少ないなあと。この時代の映画って視覚を越えて心に直接傷をつけるものばかりでしたよね。そんな記憶が呼び覚まされて、帰りの飛行機に乗るのが怖くなってきました。

次はこの二ついきましょうか。

(伊藤さん)この作品は、《ドメスティック・アクシデント1》と《ドメスティック・アクシデント2》です。「家庭内事故」というタイトル。

(澤さん)良いタイトル付けたなぁ。

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(伊藤さん)こちらはブライアン・デ・パルマの出世作「キャリー」で、リメイクもされてる作品です。学校で目立たなくていじめられてる女の子が、実は超能力者で。女の子にはシングルマザーのお母さんがいて、その人がすごい狂信的なキリスト教のカルト集団に入っているようなお母さんで、歪んだ教育を受けてる。娘はティーンエイジャーだから、お母さんのことを愛しているけど、お母さんの言う通りに生きてたら、人生大変なことになっちゃうと。娘とお母さんとの愛憎を描いているようなところがあるんですけど、最後は恐ろしい惨劇が起きちゃうんです。学校でも家庭でも。その中で、超能力で包丁が飛んだりするんですね。その包丁が飛んでるシーンにインスピレーションを得た作品です。包丁が飛んだりするとやっぱり面白い。面白いっていうか、その(笑)。

(一同)笑。

(伊藤さん)とても映画的なんですよね。撮影はピアノ線で包丁を吊って、それをカメラの前でヒューって振ってるだけ(笑)。包丁が飛ぶシーンは、15~20秒に3秒くらいのカットが5~6カット入るだけなんですよ。ただ、このシーンがあるのとないのとでは、超能力感が違う。包丁が飛んでくるのが象徴的なんだなぁというふうに思って、こういう作品を作ってみました。

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《ドメスティック・アクシデント2》のセット

(澤さん)背景の壁紙とかかわいいですよねぇ。

(伊藤さん)はい。これは千代紙っていうか壁紙で。後ろが花畑っていうか花柄のところを包丁が飛んでくる。

(澤さん)これ処女性を強調してる。

(伊藤さん)はいはい。そうですね。

(工藤さん)原作は、これスティーヴン・キング。ご覧になった方も多いと思いますけど、いい映画ですよね。

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(伊藤さん)「エクソシスト」っていうホラー映画がありまして、リンダ・ブレア演じる女の子に悪霊が乗り移ってしまって、いろいろ超常現象が起きる。エクソシストっていう祈祷師の人たちが、少女を助けられるかって映画。今見ると地味なんですけど、女の子が空中に浮かんだりとか首が180度回ったりとか、いろんな恐ろしいことが起きるんですね。そこからインスピレーションを得た作品です。こんな派手には飛ばないんですけど、夜ベッドが飛んで、っていう作品になってます。

実は僕、小学生の時に夜眠れなくなっちゃう子だったんですよ。怖い映画の予告なんて全然ダメで、見ると全く眠れなかった。映画を見てる時じゃなくても、核戦争が起きたらどうなるんだろうとか、いろんなことを子どもは悩まなくちゃいけないんで、それで眠れないっていうパターンでしたね。ところが面白いのは、映画の作品って眠れない子どもが多いんですよ。古いのは、アニメーションの元祖のウィンザー・マッケイの「リトル・ニモ」っていう漫画ですね。高畑勲さんたちが日本でもアニメ化した作品です。夜、子どもが眠れなくて、ベッドの上でいろんな冒険が起きるっていう作品ですね。それから、テリー・ギリアムの出世作「バンデットQ」って映画もやっぱり眠れない子どもが出てくる。ポスターも会場に貼ってあるんですけど、ディズニーの子ども向け映画「ベッドかざりとほうき」もベッドから始まる。その変形として、「ナルニア国物語」とかでは、戸棚に入っていくんですね。

スタートは「エクソシスト」で始まったんですけど、作ってるうちに、子どもの不安と空想力の作品になったっていう、ちょっとかわいらしい感じの作品です。

トークレポートは第3回以降に続きます!

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天神洋画劇場
伊藤隆介の「フィルム・スタディーズ」

2016/6/4 − 7/3

伊藤隆介のフィルム・スタディーズ

ゴールデン洋画トークレポート【その1】

作家の伊藤隆介さんに加え、澤隆志(映像作家・キュレーター)さんと工藤健志(青森県立美術館学芸主幹)さんをお招きし、開催したギャラリートーク「ゴールデン洋画トーク」のレポートを4回に分けてお届けします! 3D眼鏡を装着したお三方の様子からも分かるように、終始マニアックかつ興味深いお話が繰り広げられました。 第1回目のレポートは、映画と美術、そして宣伝にまつわるお話と、映画のセットと作品をめぐる現実と虚構のお話です。(※本文は、本イベントのトークを一部抜粋・編集したものです。)

 

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左から工藤健志さん、澤隆志さん、伊藤隆介さん

 (澤さん)まず、ここになぜ眼鏡をかけた3人がいるのかっていうところから始めたいと思うんですけど、そもそも伊藤隆介さんはこうした美術館、ギャラリーでの発表もするし、映画祭で映像作家としても出品されたりもしています。ざっくり分けると、青森県立美術館の工藤さんが美術、僕が映画というそれぞれの領域で、ずっと付き合いがあったわけです。一昨年11月に伊藤さんのホームタウンであります札幌で個展(伊藤隆介ワンマンショー; RYUSUKE ITO SHOW ; ALL THINGS CONSIDERED)がありまして、そこでもこんな感じでトークしてたんですね。その時に、福岡でやりませんかと、飲みながら話してたことが本当に現実になっちゃいました。できあがったばかりの展覧会ですし、完成するまでのことを伊藤さんも今せっかく覚えていらっしゃるので、そのことを話していただきつつも、僕らが横で「はは~」みたいな感じでいければいいかなと。

 (工藤さん)一応、二人ともキュレーターなんですが、今回の展覧会のキュレーターしてるわけじゃないんです。今回は映画がテーマなので、展覧会の作り方も映画的な手法を真似ようよっていうことで、今回キュレーションではなく、宣伝部員を澤さんと僕でやらせてもらいました。まず、チラシの話をすると、これは上田信さんという今回ポスターとかメインビジュアルを手がけていただいた方、画家というよりは絵師、イラストレーターという方の原画ですね。

展覧会ポスタービジュアル

展覧会ポスタービジュアル

 昔の映画ってこう、看板職人さんが手書きで描かれてたじゃないですか。せっかくだからそういう雰囲気で、今回の映画のモチーフみたいなものを、まとめてポスター・チラシのメインビジュアルにできないかとなりまして。上田さんに相談したら「いいよ」って。実質二週間くらいしかなかったんですが、こんな素晴らしい原画を描いてくださいました。文字も上田さんの手書きで、書いてもらってます。こういったビジュアルがまずできまして、僕はチラシを担当して、映像の方を澤さんが進めてくれました。

 (澤さん)映画館に行くと、予告編が流れるわけなんですけれども、映画の予告編は美術と違うところがあって、美術の場合は展覧会ができた後に、展評なり、批評なりが載りますよね。なかなか予告編っていうのがないじゃないですか。映画の場合は、配給しないといけないので、煽るわけです。映画が公開される前にいかに仕込むかっていうのが大事なんですね。なので、チラシを作ったり、予告編もとにかく前から前から仕込んでいくわけですよ。その体を取ろうということで、上田さんのこういう素晴らしいイラストレーションがあるので、これをカタカタ動かしちゃえばいいんじゃないかって思って、僕の友人の最勝健太郎さんっていう映像のディレクターにお話ししたら快諾していただいて作りました。今アルティアムのHPにもありますし、イムズのエレベーターに乗っても見れますけれども、おどろおどろしい予告編ができてしまって、すごく映画っぽくなったかなって思います。映画の形式を引用した宣伝と、映画から引用している作品を展示するということで、今入り口に立ってもらっているわけです。

 

(工藤さん)伊藤さんのこのシリーズっていうのは「Realistic Virtuality」シリーズということになってるんですけど、(註:「Realistic Virtuality / リアリスティック・ヴァ-チャリティ(現実的な仮想性)」は、伊藤隆介さんによるビデオ・インスタレーションのシリーズ。我々を取り巻くメディア社会について、視覚的・詩的批評を試みる作品です。本展で紹介しているものの多くは、そのシリーズの新作です。詳しくはこちら)これはあえて壁の構成で「Realistic Virtuality」が分断してますよね。普段は並存していて、同じ視界の中に「Realistic」と「Virtuality」があるんですけど、これはわざわざ分断してあって、これ、面白い仕掛けだなと思いました。最初に種明かしをみせないっていう、最初お客さんが入ってきたときには、プロジェクションの映像が流れていて、これは記録された映像なのかなと思いますよね。裏を見ると、実はそれがリアルタイムの模型をライブで撮影されて、実際にプロジェクションされている。この関係性、なかなか新鮮ですね。最初入ったときに自分の影とどちらが現実でどちらがフィクションか分からなくなる。これは非常に面白い仕掛けだなと。

(伊藤さん)それは別に僕が考えたわけじゃなくて、プロデューサーの中村光信さんとアルティアムの方々がこういう見せ方が面白いだろうと。

 ※入口の作品《恐竜の支配》については、レセプションのレポートを是非ご覧ください。

 (澤さん)次は《ローマ 1972年~アミティ島 1975年》ですが。

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(伊藤さん)ローマ1972年”っていうのは、ブルース・リーの映画「ドラゴンへの道」が1972年公開で、舞台がローマなんですね。“アミティ島”っていうのは、スティーブン・スピルバーグ監督「ジョーズ」が1975年に公開されていて、そこに出てくる架空の海水浴場の島の名前に由来しています。東海岸のイメージですが、実際にはない架空の街です。「ドラゴンへの道」では、現地では観光地のシーンだけ一週間くらいで撮られていて、あとは全部セットなんですよね。当時は分からなかったですけど、DVDとかブルーレイで見ると、背景があからさまに写真、絵ということになっていて。実在の1972年のローマじゃないっていうのが面白くて。アミティ島の方は、実際は島がないので、映画の中の街とかロケーションはマサチューセッツ州に作られたものだっていう。

《ローマ 1972年~アミティ島 1975年》のセット

《ローマ 1972年~アミティ島 1975年》のセット

映画のロケーションの虚構についての作品ということなんですね。自分としてこだわったところは、サメは特に分かりやすいんですが、後ろの背景のところに、実際の撮影では使われていない特撮用のブルースクリーンが貼ってあるんですね。映画見てると「映画のセットの再現ね」っていうふうに思うんですけど、そうじゃなくて、「映画のセットのイメージについての作り物」なんで、それを行ったり来たりすることが面白い、大事なところなんじゃないかな。

 (澤さん)わざとセットのアラを正確にモデリング化しているところが離れ業なんですよね。その現実を見せることによって、「イメージなの?本当なの?本当の体のイメージなの?またそれの作り物なの?」っていうのを紛らわしくさせる、ある種、立体視させるというか。すごい作り込んでるのに、わざわざこんな線とか出しっぱなしにするっていうのが味わいどころなんですよ。あと、このカメラっていわゆる自宅のペットとかを見る監視カメラ用のカメラなんですね。これって録画したビデオのソースを流してるんじゃなくて、同時中継なんですよ。フィルムじゃない、つまり映画じゃできなくて、「ビデオメディアって何」ってことを問う形でもあるんです。いわゆるビデオ・テレビも含めて、みんなが現実に受け止めているものは、実はイメージ上にしかないっていうことが往々にしてあるわけですよ。みんなが恐怖してた映画だったりとか、歴史的な事件だったりとか。それをわざわざ作り物くさいセットにして、その現実の度合いを疑うというか、イメージで受け入れた現実が「本当にどこまで現実なの?」みたいなことを、半分冗談も含めて問いかけているものなんですね。

 (工藤さん)伊藤さんのすごいところは、本当に自分で、手で作っているっていうところなんですね。誰かに発注してどこかの人に作らせるんじゃなくて、基本的には資料を随分リサーチをして、できるだけ当時のものを忠実に再現してるわけですよね。映画では普段は見えていない部分っていうのをなんとかして見せていこうとしている。見えないものに対する伊藤さん個人の欲望みたいなものが表れていると思います。そういう模型のディテールを見る楽しみというのは、やっぱり美術なんだろうなって思うし。 今までだったら、アーティストが模型と言うと、ちょっと一段低いものとされてきたと思うんです。でも、伊藤さんはそういう序列みたいなものが全くないんですね。とにかく興味のあるものに対して、とことん迫っていく。美術だろうが、映像だろうが、模型だろうが、いろんなジャンルを行き来しながらできたものがこういった作品。それはあくまで、伊藤さんの個人的な欲望であると同時に、現代に生きている我々の欲望でもあると、そういう仕掛けの作品ですよね。

展覧会ビジュアルを手掛けていただいた上田信さんの新刊が出たてのほやほやです!編集は、トークでも熱く語ってくださった工藤健志さん。アルティアム併設ショップでも展覧会会期中は取り扱っておりますので、是非お手に取ってご覧ください!

トークレポートは第2回以降に続きます!

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伊藤隆介の「フィルム・スタディーズ」

2016/6/4 − 7/3

伊藤隆介のフィルム・スタディーズ

オープニングレセプション レポート

初日に開催しましたオープニングレセプションの様子をお届けします! 伊藤隆介さんの挨拶を抜粋でレポートします。たくさんの方にご来場いただき、ありがとうございました。

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(ディレクター・笠井)皆さま、本日はご来場いただきまして、誠にありがとうございます。『天神洋画劇場 伊藤隆介の「フィルム・スタディーズ」』と題しまして、映像作家、美術家でいらっしゃいます伊藤隆介さんの九州で初めての個展です。では、早速伊藤さんからご挨拶いただきたいと思います。

(伊藤さん)今回展覧会を開いていただきました作家の伊藤でございます。僕は福岡に初めて来たのがアジ美のトリエンナーレで10年近く前ですけど、その時からまた帰ってきたいなと思っていました。こういう機会をいただきまして、とてもうれしく思っています。

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(伊藤さん)今回の展覧会の目玉だと思ってるんですが、こちらはイラストレーターの上田信先生が描き下ろしてくださいました天神洋画劇場のオリジナルポスターの原画です。これを見たとき、とっても僕も感激しました。と言うのは、上田先生は、僕ら子どもの時にタミヤ模型のボックスアート(プラモデルの箱絵)として、わくわくするようなイラストを描いてくださっていた、サブカルチャーの恩人みたいな方なんです。そんな上田先生にこんなに素晴らしいポスターを描いてくださいまして、もうこれ見たら帰っていいよっていう感じがするんですけど(笑)。他の作品もじっくりご覧になってください。

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(伊藤さん)今回は映画をテーマにした展覧会でして、実はあちこちに昔の映画のポスターが貼ってあります。1970~80年代のものが多いんですけど、特に1970年代は、僕が子どものとき、映画館で予告編やポスターを見て、怖くて眠れなくなった、トラウマになっているものが多いんですね。そのひとつに、ユル・ブリンナーが出演している「ウエストワールド」という、ロボットがアミューズメントパークで人間を襲ってくるっていう怖い映画があります。それで、子どもの時からアミューズメントパークのこと、ちょっと怖いんですね。そういうことを思い出してつくった作品が展示室の最初にある《恐竜の支配》です。僕がアミューズメントパークに行って不思議だなと思うのは、怖いことばっかりなんですね。日本でも、世の中は怖いこと多いんですけど、わざわざお金を払って、怖い思いをしに行く。僕はそういうところが、人間ってとってもおもしろいなと思っているんです。今回の作品の多くは、そういうテーマでつくられている作品が多いですね。火事だとか、飛行機が揺れていたり。子どものときはすごく怖かったんですけど、だんだん大人になってくると、そういうものに寄ってきていますね。今回特に70~80年代のパニック映画をテーマにした大きい理由のひとつです。

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それぞれの作品解説については、6/5(日)に開催したトークイベントが拡大版となりましたので、詳しくはそちらのレポートでお届けいたします!おたのしみに!

【展覧会ページ】
天神洋画劇場
伊藤隆介の「フィルム・スタディーズ」

2016/6/4 − 7/3

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