日常のとなり anno lab

オープニングレセプション レポート

初日にanno labの皆さまをお迎えし、オープニングレセプションを行いました。活動拠点の福岡で初個展ということもあり、たくさんの方にご来場いただきました。当日の様子をお届けします。
(以下はオープニングレセプションでのトークを一部抜粋・編集したものです。)

DSC00177

(アルティアム・安田)本日は「日常のとなり anno lab」オープニングレセプションにお集まりいただき、ありがとうございます。本日は、anno labのメンバーの皆さんに来ていただいています。

今回、「九州発信プロジェクト」という九州の魅力的な取り組みや表現活動を紹介するプロジェクトの一環として、anno labにお声掛けさせていただきました。 anno labは地元・福岡を拠点に、福岡市科学館、福岡市動植物園、福岡タワーなど、地元に根付いて活動をされているところ、「世界一楽しい街を創る」をモットーに活動されているところに興味を持ちまして、anno labだったらどんな展覧会をつくるのだろうと思ったのが、本展のはじまりです。

「日常のとなり」というテーマで、ここにリビングの部屋が出現し、実はこの中に、約20点の作品が潜んでいます。このあと、どこに作品があるのか発見し体験を楽しんでほしいと思います。

それでは、anno labの代表である藤岡定さんから、今回「日常のとなり」をテーマに設定した思い、どういったところを楽しんでほしいかをお話しいただければと思います。

DSC00184 t

(anno lab代表・藤岡定さん)今日はお集まりいただき、本当にありがとうございます。この展覧会で、「日常のとなり」をテーマに設定したきっかけですが、元々ぼくたちがものをつくる発想の中で、日常に落とし込んだ作品をつくりたいという思いがあります。

ものをつくる時のアプローチとして、非日常をつくりだして、日常を忘れて楽しい気分になってもらう方法もあると思います。一方で、ぼくたちはどちらかというと、日常自体をどんどん楽しくすることで、人生がどんどん豊かにになっていくのではないか、という思いがあり、日々ものづくりをしています。

この空間コンセプトは、まず実家に帰ってきた感覚になってもらおうと考えました。会場の入り口である押入れの中から服をかき分けて入っていくと、「なんじゃこりゃ!家やん!」という驚きとともにスタートしてもらいます。

こういった日常の空間をつくりだし、13人のメンバーが、それぞれの視点で、日常を切り出して、日常のとなりにどんなものがあれば、自分はわくわくするだろう、どういうものに知的好奇心を持って、ここまで生きてきたのだろうと考え、約20点の作品として形にしてもらいました。それぞれに味のある作品ができたのではと思います。

このリビング部屋の空間には、何の説明やキャプションもなくて、どこに作品が存在するのか、全く分からない状態ですが、実は、奥の空間では、リビング部屋の空間と同じ間取り図になっていて、ソファーやテーブルなどそれぞれの位置にどういった作品が仕掛けられているのか説明しています。

リビングの部屋で運良くいろんな作品を見つけられた方は、もちろん楽しんでいただけますが、もし見つけられなかった方も、奥の空間に入って、こういう作品があったんだ、じゃあもう少し遊んでみようと、楽しんでいただける仕組みになっています。

皆さまには、会場内の様々な作品を体験して、自分の日常を振り返り、日常でどういうことをすれば、もっとわくわく暮らすことができるだろうという発想に至るきっかけになればと思っています。

この作品をつくるにあたって、いろいろな方にご助言、ご鞭撻をいただきました。アルティアムにも本当に感謝しています。そして、メンバーの方々、来ていただいた皆さん、本当にありがとうございます。それでは、皆さん楽しんでください。

(安田)ありがとうございました。
会期中は、二つのイベントを予定しております。一つは、5/12(日)に、anno labと建築事務所Drawing Heads Fukuokaさんが共同開発した建築知育玩具KUMICAを組み立てて遊ぶワークショップを行います。イムズB2Fで11〜16時の間、予約不要で随時参加できます。ぜひ遊びにいらしてください。
もうひとつ、5/18(土)にギャラリーツアーを行います。会場内でanno labの皆さんが作品について解説いたします。この作品にこういった意図があったんだという発見のあるギャラリーツアーになるかと思います。こちらも予約不要です。ぜひご参加いただければと思います。

DSC00200

2012年に九州大学芸術工学府出身の4名で設立されたanno lab。現在のメンバー13名による作品を日常空間の中で見つけながらお楽しみください。
会期は6/2(日)までです。※休館日5/21(火)。ぜひ、会場に足をお運びください!

【展覧会ページ】
日常のとなり
anno lab

2019/4/27 − 6/2

チャペック兄弟の絵本・ブックデザイン・舞台

アニメーション上映会

ヨゼフ・チャペックの挿絵をもとに作家没後に作られたアニメーションなどを上映します。

日時:6月22日14:00〜、6月30日14:00〜、7月12日18:00〜上映時間:約40分

二人の少年と一匹の犬が走り回るのを見てごらん
Vizte vše, co dnes tropí dva kluci a jeden pes!
1925年/7分
監督:ヘルミーナ・ティールロヴァー、カレル・ドダル

子どもたち Naše děti
1935年/6分
製作:カレル・ミュラー

犬のおとぎ話Psí pohádka
1959年/15分
監督:エドゥアルド・ホフマン
原作:ヨゼフ・チャペック

失敗作のニワトリŠpatně namalovaná slepice
1963年/13分
原作:ミロシュ・マツォウレク
脚本・監督:イジー・ブルデチュカ

会場:三菱地所アルティアム内イムズ 8F
※参加無料・予約不要要展覧会チケット

配給:チェコ国立フィルム・アーカイブ

【展覧会ページ】
「ロボット」誕生100年記念
チャペック兄弟の絵本・ブックデザイン・舞台

2019/6/8 − 7/15

チャペック兄弟の絵本・ブックデザイン・舞台

オープニングイベント 講演チャペック兄弟の創作とその時代

中東欧の文学や美術を専門とし、チェコに関する著作や翻訳を多数手がけている阿部賢一氏が、チャペック兄弟の仕事と魅力をわかりやすくお伝えします。

日時:6月8日14:45開場、15:00開演90分程度
会場:デジタルハリウッドSTUDIO福岡イムズ 11F
話し手:阿部賢一東京大学 准教授
参加料:700円展覧会チケット付
定員:50名自由席・先着順
申込:要電話予約 ※5/15より受付開始
三菱地所アルティアム092-733-2050

【展覧会ページ】
「ロボット」誕生100年記念
チャペック兄弟の絵本・ブックデザイン・舞台

2019/6/8 − 7/15

日常のとなり anno lab

ギャラリーツアー

anno labメンバーが本展について詳しく話します。

日時:5月18日14:00〜20分程度
会場:三菱地所アルティアムイムズ8F
※参加無料・予約不要要展覧会チケット

【展覧会ページ】
日常のとなり
anno lab

2019/4/27 − 6/2

日常のとなり anno lab

ワークショップ

《KUMICA》2013 遊べる!デジタルアート展

《KUMICA》2013 遊べる!デジタルアート展

anno labが建築事務所Drawing Heads Fukuokaと共同開発した建築知育玩具KUMICAを組み立てて遊びます。

日時:5月12日11:00〜16:00
会場:イムズプラザイムズB2F
※参加無料・予約不要・随時参加可

【展覧会ページ】
日常のとなり
anno lab

2019/4/27 − 6/2

日常のとなり anno lab

オープニングレセプション《作家来場》

anno labメンバーを迎えて、オープニングレセプションを開催します。

日時:4月27日18:30〜20:00
会場:三菱地所アルティアムイムズ8F
※参加無料・予約不要

【展覧会ページ】
日常のとなり
anno lab

2019/4/27 − 6/2

田根 剛|未来の記憶

田根 剛 トークイベント レポート3

田根 剛 トークイベント「Archaeology of the Futureー未来の記憶 Image & Imagination」』レポート最終回です。第一回目二回目と合わせてご覧ください!

ホーム

(池田美奈子さん)今パリに事務所を持っていらっしゃるということですが、田根さんにとって、ホームはどんな所でも良いのでしょうか。現在たまたまパリということなのか、どこに行っても外部者という立場を好むのか。拠点やホームについてはどのようにお考えでしょうか。

(田根剛さん)あまり考えてなかったかもしれないです。現場がホームという感じです。今回も福岡に良い展覧会をつくろうという思いで来ているし、次の現場があればそこで一生懸命働くし、パリに戻ったらその中で日々の仕事をする。今は、現場で一生懸命やることがホームという感じですね。

(池田さん)なるほど。

(田根さん)その時にチームワークが重要で、関わる人たちとの信頼づくり、良い意識を持ってその場その場で活動するようにしています。

 

基本に戻る

(池田さん)バックグラウンドも価値観も国籍も違うであろう30数名の方々とチームワークをつくるときに、何を大事にされていますか。

(田根さん)今年初めにスタッフに伝えたのは、もう一度自分たちの基本に戻ろうということ。大きな展覧会も含めて、去年はかなり大変な一年でした。その一年を終えて、彼らにも自分にも言い聞かせたのは「back to the basic」。最も基本的なところに戻る。
日々働いていると、今日ここに何をしに来たのか考えなくなってくる。毎朝何がしたくてこの場所にいて、何をしようとしているのかという意識や思いが、ちゃんと自分自身に問いかけられているか。
ここで仕事をしたい、こういう建築をつくりたいという思いが、毎日の仕事のベースにあってほしいと。それを問いかけながら、この一年仕事をやろうと彼らに話したし、僕自身もこれから先に向けて、その基礎が固まらないともっと先にいけないなと思いました。

(池田さん)何か転機があったのですか。

(田根さん)去年本当に大変だったということ、そして全て出し切ったからですかね。10年以上の仕事を、展覧会と「Archaeology of the Future」というマニフェストも含め、多方面に紹介してくださって、自分たちの手を離れて何かが伝わった印象がありました。
そこから更に次のステージにいきたいと思ったときに、原点に戻って基礎を固めないといけないと思った。このままやっていけば良いと安心したくなかった。ここからまた次に行くために、今何をしたら良いのかをもう一度、自分に問わないといけないということです。

(池田さん)厳しいですね。そのまま進むこともできそうですが、それは見直して、常にとどまらずにチャレンジされている。

DSC09408


考えなくていいことは考えない

(池田さん)例えばエストニアのコンペは当時26歳で若くして挑戦されていますよね。エストニアは当時、安定したかしないかくらいの、政治的にも転機だったと思います。
非常に思い切ったことにチャレンジされているなと思います。そういうところにあえて飛び込んでいこうと思われた理由をお話いただけますか。

(田根さん)そうですね。チャレンジ精神は大事だと僕は思っているので、自分自身が本当にやりたいのか、ということ以外はあまり考えない。
20歳から海外に住み始めたことも含めて、大変だったけど一生懸命だったし、いろんな人の力もあってそれなりに楽しくできた。あまりやる前から大変そうだとか、頭で分かったかのような気になるより、とりあえず行ってみて、大変でも頑張ってみれば良いんじゃないかと思っています。

エストニア国立博物館も完成まで10年かかって大変でしたね、と言われます。大変だったかもしれないけど、やることもいっぱいあったし、どれだけやっても足りないほどの大きなプロジェクトだったので頑張るしかなかった、ということですよね。

(池田さん)規模もそうですし、転換期を迎えた国だった。エストニアにとっての最初の博物館ですか。

(田根さん)エストニアがソ連から独立をしたとき、国の約束として、国立博物館、美術館、オペラ座の三つをつくると宣言しました。実は過去に国立博物館という民族の精神を語る場を絶対につくりたいと、2、3回コンペも実施されましたが、頓挫したという経緯もありながら、いよいよ開かれたのが2005年の国際コンペで、初めて参加しました。

(池田さん)ある意味、エストニアという国のアイデンティティー、希望を背負った感じですよね。

(田根さん)もちろんそういった背景を建築が背負うことも大事ですが、一方で、何か創造していくというのは、規模が小さかろうと大きかろうと、考えすぎて、背負い込むのも良くないと思っています。

(池田さん)自由にできなくなる感じがしますね。

(田根さん)そうですね。様々な制約から解き放たれて、自由にものを創造できるのが建築の魅力なので。建物をつくる為の法律や予算のしばりはあっても、「建築を考える」ことは、本当に自由にやっていたいなと思います。考えなくていいことは考えない、考えたいことを一生懸命考えるというスタンスでやっています。

(池田さん)考えなくてもいいことは考えない。大事ですね。

 

三つの部屋

(池田さん)展覧会の見方があれば教えていただけますか。

(田根さん)展覧会場は、三つの部屋に分かれています。「Image & Imagination」というサブタイトルに基づいて、Room1は僕らのプロセスの原点ともいえる膨大なイメージの空間があります。Room2では、ものしかない空間に変わり、建築のプロセスでいうと、つくっていく作業が垣間見える部屋だと思います。今回は、いわゆる建築展にある図面も写真も、スケールという大きさを測るものもありません。模型を置いて、見る人が考古学的に、何がどれに繋がっているのか発掘するように見てもらう展示になっています。Room3は、リサーチや模型を経てできあがったプロジェクトのプロジェクション映像です。建物を展示会場に持ってくることはできなくても、映像技術を通して、空間体験ができればと思い、映像担当の方と制作しました。

(池田さん)3面の非常に大きな映像ですね。

(田根さん)限られたスペースの中で、全く異なる体験ができたらと思っています。

(池田さん)情報がぎゅっとつまっていて、本当に見応えがありました。

 

手を動かしながらイメージをつくりだす

(池田さん)Room2を拝見して面白かったのが、棚の上の模型です。つくっているライブ感が伝わる模型の原型、粘土や発泡スチロールでつくったもの、カラーのチップ等が置いてあります。
イメージを形にするより、手を動かしながらイメージ、アイデアをつくり出しているのかなと感じました。

(田根さん)仰ってくださったように、イメージしたものを形にするのはあまり面白くないんですね。最近は、つくっていくうちに思いつき、最終的に「こんなものができてしまった」、というプロセスのつくり方をし始めました。

(池田さん)もうひとつ面白いなと思ったのが、プロジェクトごとに分かれた棚に一文入っていますよね。非常に印象深い、ああそうかと膝を打つような言葉が随所に書かれています。これも結構見逃せないなと思いました。

(田根さん)会場内には、唯一その一文しかプロジェクトの解説といえるものはないので、言葉の力を借りて伝えられること、考えていることをテキストにしました。

(池田さん)あの一文は、建築を考えるときに、膨大な言葉が出てくる中で、選び抜かれた一文ということになりますか。

(田根さん)大概は、そのときに本当に思ったこと、書いているときに思ったことを率直に言葉にしていることが多いですかね。

(池田さん)ぜひ注目していただければと思います。

IMG_9902 s

Room 2 展示風景 撮影:古賀亜矢子

 

展覧会に足を運ぶ

(池田さん)これから展覧会をご覧になる方に、何かメッセージはありますか。

(田根さん)展覧会は、今見ないと終わってしまうもので、見ないと分からない。見たことで、何か自分のためになるかもしれないし、時代を感じるかもしれないし、怒りをおぼえるかもしれない。
また展覧会は、今起きていることをダイレクトに感じる場だと思います。見たものを自分の中にとどめず、人と話したり、それにより見方の違いを理解したり、そういった意味で展覧会は非常に大事なものだと思っています。

もうひとつは、芸術鑑賞は知的な好奇心を学ぶ場だと思います。そこにある意味を問い、何の関係があるのか、知的に読み解くことによって、よりたくさんのものを知ることができます。文化や芸術の意味を考える場として、ぜひ展覧会を通して、ただ見た、感じたというだけではなく、そこから次に繋がるものを考える、という体験をしていただけたらと思います。展覧会を見て、いろんな方と話していただけたら嬉しいなと思っています。

(池田さん)ありがとうございました。展覧会を介してアイデアを交換したり広げたりするような機会になればと思います。

DSC09422

田根さんのお話をお読みいただいたうえで、もう一度展覧会をご覧いただくと、見る人それぞれに違った発見があるのではないでしょうか。本展会期は3/10(日)まで!ぜひ、足をお運びください。

【展覧会ページ】
田根 剛|未来の記憶
Archaeology of the FutureーImage & Imagination

2019/1/19 − 3/10

田根 剛|未来の記憶

田根 剛 トークイベント レポート2

建築家・田根剛さんと、聞き手に池田美奈子さんをお迎えし、開催した『田根 剛 トークイベント「Archaeology of the Futureー未来の記憶 Image & Imagination」』レポート二回目です。第一回目と合わせてご覧ください!

記憶とは何か

(池田美奈子さん)今回サブタイトルを「Image & Imagination」とし、東京二会場と変えていて面白いなと思いました。そしてマニフェスト、「記憶は未来をつくる」という部分に非常に共感しました。
記憶というと、正しいとは限らないですよね。人は絶えず変わっていってしまう。記録は残るかもしれないけど、記憶は人の中にあって、ときに都合の良いように、または年代によって変わるかもしれない。「記憶」についてもう少し具体的にお話いただけますか。

(田根剛さん)ひとつ記憶が良いのは、記憶に正しいも間違いもない。一番大切なことは、正しさではなく、その記憶に何の意味があるのかを問いかけられることです。その問いが、記憶の力になるのではないかと思うと、僕らがものをつくる原動力もそこに集中していきやすい。
また記憶というと、人の記憶と思われがちですが、ここで語っているのは、場所の記憶です。人の記憶は変わって忘れられても、場所の記憶は絶対に忘れない。古代でも現代でもその場所で起きたことを僕らは掘り返し、その場所が持っている最も大切な記憶はなんだろうかと考えます。それを建築として残し伝えることで、もしかしたらそこから未来をつくることができるかもしれないと考えています。

(池田さん)なるほど。それが根本的な考え方なのですね。

DSC09427

リサーチとクリエーション

(池田さん)アルティアムの展覧会は、膨大なリサーチ資料の部屋から始まります。建築の展覧会ということで、模型や図面、あるいはドローイングがあるのかなと思ったら、いきなり圧倒的な量のリサーチがある。

(田根さん)そうですね。

(池田さん)学問としてのアーキオロジー、考古学は、事実を求めていきますよね。でも、田根さんの場合、事実ではなく、何か別のものを掘り返している気がします。というのは、膨大なリサーチのイメージに添えられたキーワードが、どこかポエティックで恣意的なものかもしれない。それらのキーワードが、どうクリエーションに変わっていくのでしょうか。

(田根さん)その土地を掘り返して、様々な地層や土から見つかったものによって、歴史的な発見もできるかもしれないというモチベーションがある。
過去を掘り返すことで、歴史的な発見をしたいというのが考古学者であれば、僕らも同じように未来を創造したいという気持ちで、一見時間軸では未来とは真逆な過去を掘り返していく。このモチベーションが、日々の仕事に、密接に繋がっているような気がしています。

今回の展示は、最初の部屋に「記憶とは何か」をリサーチした約1,500枚以上の膨大なイメージがあり、ここに記憶の力が蓄積されているのではと考えています。イメージの中に、6つのキーワードがあり、例えば、「SYMBOL」の周りには、象徴的な画像や図像があります。古代人はシンボリックなものを見てそれを記憶してきた。または、シンボリックなものによって何かを崇拝、信仰する、祈る力があった。僕なりに、「象徴は記憶の原点ではないか」と考えています。他には、「IMPACT」の周りには、突然起こる出来事、予期せぬ衝撃を受けることで、「衝撃が最も強い記憶ではないか」。また「NARRATIVE」では、我々にとっての「記憶とは物語や伝承によって繋がる」ことができるのではないか、などの考えを展示しています。

イメージから様々な想像力を働かせ、建築を考え始める。これが基礎的な思考のプロセスだと思うと、この部屋なしで「Image & Imagination」というサブタイトルを語れないと思い、今回の展示構成に加えました。

(池田さん)展示を見られる方は、最初の部屋を読み解くと本当に面白いと思います。

(田根さん)読み解こう思えば、1時間でも2時間でも楽しめると思います。

 

リサーチの面白さ

(池田さん)プロジェクトごとに、このようなリサーチをされるのですか。

(田根さん)そうですね。どんなに小さなことでもやります。例えば、お酒のボトルをデザインしたことがあるのですが、たった一本のボトルデザインでも、お酒、ワインの容器の歴史的変遷やお酒を発酵させるプロセスを調べたりします。そうすると、大概はメソポタミアに辿り着くことが多いです。またこの文明に辿り着いたのかというくらい、大概のことはメソポタミア文明がやってしまっている。
メソポタミアで様々なものが発明されて、それを強い信仰で意味をつくり出したのがエジプトであったり、思想や哲学をつくったのがギリシャだったりします。ただ、大体はメソポタミアで発明されているというのが、僕の今のところの感想です。

(池田さん)そうすると、メソポタミアで生まれたものを、時間と空間を超えて我々は根源に持っていると。

(田根さん)コップにしても、持ちやすくするための取っ手は、メソポタミアが発明しています。ふたをすることもです。そういう意味でもなかなかすごい人々ですね。今日はそういう対談ではないですけど(笑)。

(池田さん)リサーチをやることでそういった発見がある、という面白さですよね。

(田根さん)僕らはまず言葉と本から学ぶことが多く、本を読みながら、書かれている言葉や気になっていることを見つけつつ、短時間で膨大な情報量を集めることができるインターネットを活用して作業をします。その作業がないとこのような様々な時代やスケールのものを扱えなかったのではと思うと、面白いですね。

 

ラベルを剥がす

(池田さん)あのリサーチの部屋自体がひとつの宇宙のように見えます。何かのプロジェクトがあれば、そこにだんだんフォーカスしていくと思いますが、全体の中であるものをどう位置付けていくのでしょうか。例えば「日本である」ということを、全体の中でどう位置付けますか。

(田根さん)例えば、「ここは日本である」といった抽象的な既成概念はどんどん外してしまう。そのとき、信じられるのは具体的な「場所」で、地名は信じていいと思っています。既成概念を外したときに何が見えるか、残っているか。または全く違うものを照らし合わせ、比較することで、何が見えてくるか。
日本という一応の概要はあっても、日本はどこかというと特定の場所はない。建築はその場所に建つので、場所の記憶の部分を探ってリサーチを行います。

(池田さん)なるほど。ラベルを剥がしていくということですかね。

(田根さん)そうですね。既成概念や一般化されたものは気にしないで、次々見ていくということですかね。

(池田さん)多くの人がラベルによって物事を認識して生きている中で、田根さんたちは、ラベルはないものとする、あるいは膨大な作業をするうちにどんどんラベルが剥がされていく。

(田根さん)そうかもしれないですね。一般的な見方をすると、どんどんものごとがつまらなく見えてきてしまう。でも、ものの意味を深く探っていくと、非常にたくさんの記憶が蓄積されている。
そう思うと、知っていく想像力が面白い。何も知らないことを前提に、知ろうとする好奇心が、物事をより深く広く繋げていく作業が面白いなと。

(池田さん)そういったベースがあると、まったく見たこともない新しいものがつくれる。

(田根さん)つくれるかもしれない。僕らがつくるものは基本的には建築なので、リサーチしたことがダイレクトに形や色に反映されるという訳ではありません。あくまで知らないことを知ることにより、自分たちの中になかったものが次々と思考の中に入ってきて、そこから何かつくりたいという衝動に変わっていく。内側からこみ上げる衝動をより強くする仕事としてやっています。

(池田さん)体づくりのような感じですかね。

(田根さん)基本は体育会系なので、筋トレとしてやっているような部分はあるかもしれないですね(笑)。

IMG_9873 s

Room 1 展示風景 撮影:古賀亜矢子

 

リサーチを始めたきっかけ

(池田さん)体育会系というのが気になってしまったのですが、どういうことでしょうか。

(田根さん)実は、元々スポーツをずっとやっていました。
2011年に長野・松本で、サイトウ・キネン・オーケストラという小澤征爾さんの舞台で、オペラの舞台空間をつくる仕事がありました。その時に舞台裏でオーケストラの方々がリハーサル前に個人でウォームアップをしていました。日々のトレーニング、ウォームアップで自分と向き合っている時間やその音色がとても美しくて、それを見たときに非常にショックを受けました。

基礎トレーニングとして、音楽家であれば本番に向けてリハーサルや練習をする。スポーツであれば、試合に向けてトレーニングを行う。それに対して、設計をやっている僕らが、いきなりプロジェクトを始めてしまうのは、何の準備もしてないのではないかと。
そこから、僕たちであればリサーチを基礎トレーニングとして繰り返すことによって、本当にオリジナリティのある仕事ができるのではないか、と気づき、必要を感じて、基礎の作業としてリサーチを始めました。それが、今仕事に大きく役立つようになったという経緯があります。

(池田さん)非常に納得感がありました。

DSC09418

レポートは第三回に続きます!

【展覧会ページ】
田根 剛|未来の記憶
Archaeology of the FutureーImage & Imagination

2019/1/19 − 3/10

ニュース&レポート アーカイブ