近藤聡乃展 呼ばれたことのない名前

近藤聡乃トークイベント2019年も考え中レポート後編

近藤聡乃さんのトークレポート後半をお届けします!前編はこちらからお読みください。
※印の作品は展示しておりません。

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③《KiyaKiya》以前

《果肉》※ キャンバスに油彩 2008

《果肉》※ キャンバスに油彩 2008

(近藤聡乃さん)《てんとう虫のおとむらい》の次に作ったアニメーションが《KiyaKiya》なんですけど、二つのアニメーションの中間に制作した油彩です。過渡期の作品で、かつ初めての油彩で、なんとなく全体的に考え中だったような気がしますね。油彩はやっぱり難しかったです。

(アルティアム・山田)
これはどういったテーマで描かれたんでしょうか。

(近藤さん)
植物と人との交わりみたいなものがテーマになっています。「詩人の萩原朔太郎が精神的に衰弱した時、植物と交わる夢をみた」というエピソードを読んだことがあり、そういうところからもイメージを広げていきました。それについては「猿とみかんの皮」というエッセイでも触れています。

 

《1/15秒のスケッチ》※紙に鉛筆、油彩 2008

《1/15秒のスケッチ》※紙に鉛筆、油彩 2008

(近藤さん)これも同時期に描いた、考え中のような作品で、少し次のアニメーションに印象がかぶるところがあったりもします。

(山田)タイトルが《1/15秒のスケッチ》。

(近藤さん)1/15秒というのはアニメーションの単位で、スタジオジブリのアニメーションなどは1秒が24枚の絵でできているのですけど、私のアニメーションは15枚なんです。1/15秒を積み重ねて5分くらいのアニメーションにするのですが、その5分のアニメーションを作るのに、2、3年かかります。2、3年かけて1/15秒を積み重ねていく、みたいなことをしていると、特殊な時間の感覚になっていくんです。

(山田)絵画だと、アニメーションと違って構造を複雑にできるというか、いろんな情報が盛り込まれていますね。

(近藤さん)アニメーションとドローイングとで表現できることが違うと思います。マンガはもう少し物語を明確に伝えられますね。

(山田)1/15秒についての書かれたエッセイ「二十年後の皺寄せ」は、会場内壁面に近藤さんが手書きしています。ぜひご覧ください。

 

(近藤さん)これらの作品を2008年のミヅマアートギャラリー での個展で発表し終えてから渡米しました。

(山田)実際にニューヨークに行かれてどうでした。

(近藤さん)スッと気持ちが軽くなるような、解放されたような感じがしました。いい加減にしていても許されるような気楽さがあって、肩の力を抜いて生活できますね。言葉が日本語ほどは分からないのも案外良いのかもしれません。

 


④KiyaKiya

《KiyaKiya_sketch》紙に鉛筆、水彩 2009-2010

《KiyaKiya_sketch》紙に鉛筆、水彩 2009-2010 《KiyaKiya_sketch》紙に鉛筆、水彩 2009-2010

(近藤さん)アニメーション《KiyaKiya》の構想スケッチです。どんなアニメーションを作ろうか、ちょっとずつイメージを固めて描きためていったものが、今回の展示ではアニメーションの前に積み重ねてあります。

(山田)スケッチはあれで全部ではないですよね。

(近藤さん)そうですね。

(山田)1日に何枚くらい描かれていたんですか。

(近藤さん)1日何枚とは決めずに気が向いた時に描きました。描こうと思えばいくらでも描けるけど、一枚も描かない日もありました。描きながら考えて、いいものを残していきました。

 

(山田)「きやきや」という言葉については、フライヤーにも書いてくださっていますね。

(近藤さん)澁澤龍彦の『少女コレクション序説』の中で初めて知ったのですけど、「胸がきやきやする」という言葉があって。簡単にいうと、デジャヴみたいなものを体験した時に感じる、不思議な気持ち、あれを指す言葉なんですね。その言葉を知った時に、そういえばあの気分というのはよく知っているけど、あの気分の名前を知らなかったことに気がついて。そういう「名前のついていない物事」があるのかとすごく新鮮に感じました。英語圏で暮らすようになって、日本語と英語が噛み合っていかないとか、日本語にはあるけど英語にはないとか、その逆とかもあったり、言葉について考える機会が増えました。《KiyaKiya》は言葉について考えながら作った作品でもあります。

 

《KiyaKiya》シングルチャンネル・アニメーションビデオ 6分39秒 2010-2011 音楽:ジョン・ゾーン music copyright ©︎ John Zorn

《KiyaKiya》シングルチャンネル・アニメーションビデオ 6分39秒 2010-2011 音楽:ジョン・ゾーン
music copyright ©︎ John Zorn

(近藤さん)これはアニメーション《KiyaKiya》の中から抜き出した静止画です。ここに出てくる文字はアルファベットとひらがなを組み合わせて自分で作った文字です。それで宮沢賢治の『インドラの網』という小説から抜粋した文章を書いています。

(山田)そうなんですね!何を書いているかは公にしていらっしゃらないと思っていました。

(近藤さん)公にはしていないんですけど、別に隠してもいないです。最初の3行は「ごらん そら インドラの網を」「ごらん そら 風の太鼓」「ごらん 青孔雀を」という文章になっています。

(山田)紙芝居というのは、何か意味があるんでしょうか。

(近藤さん)紙芝居は、絵と対応している文章が同じ紙の裏には描かれていないということに大人になってから気づきました。1枚前の絵の裏に、今見せている絵の文章が書かれているんです。紙の表裏に1枚分の時差があるんですよね。そのことに気がついて、びっくりして、それが《KiyaKiya》を作るときにはすごくヒントになりました。

 

⑤現在進行形の作品

(山田)近藤さんの手書きの文字が好きという方、すごく多いと思うんですけど、文字に対する思い入れはありますか。

(近藤さん)多分何かあると思うんですけど、あまり具体的には自分でもわからないですね。

(山田)現在連載中のマンガ『A子さんの恋人』では明朝体の文字ですが、近藤さんが手で書いてらっしゃる部分は、それ以上に何か見る人に強い印象を与えるようにと思います。

(近藤さん)そうですね。このマンガで初めて活字を使っています。作中作として5巻に主人公が描いたマンガがでてきますが、そこは手書きの字にしています。
今回展示しているのは、生原稿です。なるべく修正を出さないように描いています。

(山田)それは理由がありますか。

(近藤さん)それが一番きれいに描けるというか、一息に線を引いて決める方が気持ちが良いです。私はマンガ以外のドローイングなども描くので、そちらに修正を入れないように、マンガ原稿にもなるべく入れないようにしています。

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(近藤さん)次に作るアニメーションの構想段階のドローイング6点も展示しています。なんとなくこんな感じのものを作ろうかなと思っています。

(山田)今回の展覧会で初めて公開された作品ですね。女の人が小さな子どもを抱いている《アニメーションのためのドローイング01、母》というタイトルのこの作品は?

(近藤さん)まだニューヨークに住み始める前に、子どもを生んで名前をつけるという夢を見ました。今回の展示のタイトルに繋がるのですが、その夢をヒントにまだ呼ばれたことがない名前のものだけど、存在している何か、みたいなものをテーマにしようかなとちょっと考えています。この《アニメーションのためのドローイング02、貝》という作品も同じです。これも夢を見たことを元に描いた気がするんですけど、ちょっと忘れてきちゃったな。やっぱり具体的に作品にしていないことは忘れがちですね。

(山田)おかっぱの女の子ではないですね。

(近藤さん)もうおかっぱの女の子は出てこない気がしています。この《アニメーションのためのドローイング02、貝》という作品は、貝が空に浮かんでいるようなイメージがありました。『A子さんの恋人』の中でちょっと触れている、大江健三郎の『空の怪物アグイー』という小説の影響を受けている気がします。 これは《アニメーションのためのドローイング06、しみ》というタイトルが付いていて、その頃フルーツのしみで絵を描くのはどうかなと思ったりしていました。

(山田)エッセイを読んで、果物があまりお好きじゃないのかと思っていました。

(近藤さん)そうですね。食べるのはあまり好きじゃないんですけど、やはり「植物と人との交わり」というイメージから、興味があるものではあります。

(山田)これらのドローイングが描かれた2014年は…。

(近藤さん)多分『A子さんの恋人』の連載が始まっています。

(山田)『A子さんの恋人』と新しいアニメーションの構想を、同時進行で考えていらっしゃったんですね。

(近藤さん)そうなんですけど、『A子さんの恋人』で手一杯で、アニメーションの方は全く進まないままになっています。

(山田)《KiyaKiya》の時もスケッチをたくさん描きためて、そこから絵コンテを作るということだったので、今覚えていないとおっしゃっているけれども、これからこういったドローイングをたくさん描いていく段階なのですね。

(近藤さん)いつも作り終わったあとに、「作っていた時はこういうことが気になっていたのかな」と分かったりもするので、作った後にもうちょっとうまく話せるのかなという気がします。

 

(山田)夢の中で子どもを生むというのはすごく不思議な体験ですね。

(近藤さん)夢占いによると縁起が良いことのようです(笑)。夢の中で、私が突然子どもを生んで、それが女の子なんですよ。そして、私が架空の夫に向かって「この子には『窓乃』(まどの)という名前を付ける」と宣言するんです。「『外に向かって開かれた人になるように』という願いを込めて『窓』、『聡乃』から『乃』をとって『窓乃』、「マドノ」は「『ノマド』のアナグラムでもある」と夢の中で滔々と説明するんですよ(笑)。まだ結婚もしておらず、出産についても考えたことがなかったので、びっくりしましたね。アメリカに移住する前に見た夢です。

(山田)以前そのお話をしてくださった時、近藤さんは「名前しかない子どもだ」という言い方をされたんですよ。それが「からだのない子どもたち」という2001-2002年のアニメーション作品《電車かもしれない》のたまの歌詞と合致して驚きました。同じモチーフが間隔をあけて再浮上してくる近藤作品の流れを垣間見た瞬間でした。

(近藤さん)そうですね。ずっと何か気になっている何かなんでしょうね。

 

(山田)近藤さんの20年以上におよぶ制作を俯瞰すると、高校生の頃から現在に至るまで一貫したものを感じます。ノンジャンルで包括的な展覧会をしましょうとなった時に、近藤さんは「展覧会全体を大きな物語として捉えたい」とおっしゃったんです。そこで、展覧会の構成は、物語の章立てなんだなと思いました。ただし、当初から「年代順でなくていい」ということもおっしゃっていて。つまり、順序の入れ替え可能な物語であり、その都度様々に読み替え可能な物語を、作家活動全体を通して実践していらっしゃるのかなと思いました。制作のときに、その点を意識されていますか?

(近藤さん)いや、意識はしていないんですけど、卒業制作の《てんとう虫のおとむらい》が頓挫した経験から、間違えると進まなくなることはわかっているので、「慎重に勘で選ぶ」ようにしています。

(山田)それから、近藤さんの作品のほとんどに日付がきっちり入っていますよね。あの膨大な数の《KiyaKiya》のスケッチにも一枚一枚に、ほぼ日付が入っていました。『A子さんの恋人』1巻で、A子さんとA君が出会うシーンの背景に、河原温さんの《Today》シリーズが描かれていますが、日付は意識されているのでしょうか。

(近藤さん)意識はしてないのですが、自分にとって重要なことなのかもしれません。河原温さんの《Today》シリーズは、本では知っていたのですが、実際に観てハッとした経験があります。それ以来大好きな作品です。

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最後に設けた質疑応答のコーナーでは、興味深い質問がたくさんあがりました。以下にいくつか紹介いたします。

Q. おかっぱの女の子は、今後はもう出てこないのでしょうか。

(近藤さん)おかっぱの女の子は、今描いているエッセイマンガ『ニューヨークで考え中』で自画像として出てきます。多分それに置き換わってしまって、『ニューヨークで考え中』だけにずっと出てくるのかなという感じもしています。

(山田)『ニューヨークで考え中』はある意味、ドキュメンタリーではないんですね。近藤さんの髪型は、おかっぱじゃないですし。

(近藤さん)そうですよね。自画像でエッセイなので、そのまま、「あのキャラクターが私自身で、私の生活全て」みたいにも読めるんですけど、実際は描きたいことを選んで描いている訳で、作中の自画像は「私がこういうふうに見られたいという姿」だとも思うんですよね。そのせいかあのマンガを読んでくださった方から、すごく良い人だと思われていると感じることが多いです(会場笑)。『ニューヨークで考え中』ではずっとおかっぱの女の子を描くと言いましたが、キャラクターが私の年齢に見えないという問題に直面しています。今私は38でもうすぐ39になるので、キャラクターにもちょっとずつ年をとらせたいのですが、なかなか難しい。最近はアップの時とかに顔をたるませたりして工夫してるんです(笑)。

(山田)『ニューヨークで考え中』の連載は、ずっと続けていくのでしょうか。

(近藤さん)担当の編集さんと、お互いどちらかが死ぬまで頑張りましょうと言い合っているので、多分死んだら代表作になると思います(笑)。

(山田)『ニューヨークで考え中』を続けていく一方で、今『A子さんの恋人』に集中している時期だと思うんですけど。マンガが終われば、次はアニメーションを作って、絵画も描いてという流れを一つとすると、さらにその次のアニメーションはまだまだ先になりそうですね。

(近藤さん)そうですね。だから死ぬまでにあと何本アニメーション作れるんだろうと考えてしまいます。案外2本くらいなんじゃないかと思っています。思いがけずマンガの連載に6年近くかかっていて、それも全く予想外だったので。また何か予想外のことに取り組んだりもしそうですし。

 

Q. 『A子さんの恋人』を描いた理由は?

(近藤さん)「主人公の女の子が恋人に物を貸されてしまったせいで縁が切れない」というアイデアは随分前からあり、ラフを描いて、ずっと編集さんに預けていました。ただ、「今はまだ描けないような気がする」ということで、まず『うさぎのヨシオ』を描いたんです。『うさぎのヨシオ』の連載が終わって、編集さんが「では、そろそろこれはどうですか」ということになって、『A子さんの恋人』を描き始めました。

(山田)『A子さんの恋人』を読んだ時、この人も英子なんだと驚きました。おかっぱじゃないし、年齢も29歳。どんな理由があるんでしょうか。

(近藤さん)私はぎりぎり28の時に渡米して、行ってすぐに29になったんですけど。昔読んだ本で、人の人生は29で転機があるって。人生には一度しか転機がなくて、それが29で、29で良い転機を迎えられた人はその後の人生がうまくいくとその方はおっしゃっていました。「29でうまくいかなかった人はどうなるんですか」という質問に対しては、「来世まで待つしかない」と(笑)。それで主人公は29だなと思ったんですよ。

 

Q. 『A子さんの恋人』5巻で主人公以外のキャラクターの作家性や方向性も描かれていますが、なぜそうした要素を盛り込んだのでしょうか。美大出身で作家でもある近藤さん自身の経験を反映していますか。

(近藤さん)自分が作家になりたいと思って、実際に作家になって、作家の知り合いとかもできてみると、結構驚いたことは「あ、みんな全然私と似ていないんだな」ということでした。どこかで「私みたいな人が作家になる」と思い込んでいたので、それは割とショックだったんですよ。「あ、全然気が合わない人もいる!」と思って(笑)。作家と言ってもみんな違うような人が違うように作家になるんだなと気づきました。A子さんたちは美大出身ですが、それぞれ向き不向きがあって、それぞれの生き方を探しています。向いていることを見つけて仕事にできたら良いかもしれないけど、そうでなくても生活は続くし、別に美大を出たからってそれを仕事にしなくたっていいと思うんですよね。まだ描いていないのでなかなかうまく言えないですが、最後の巻にはそのあたりのことも描けたら良いです。

 

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本展会期は11月10日(日)まで。レポートを読んで展覧会をご覧いただくと、さらなる深い体験が味わえると思います。まだ展覧会を見ていない方はお早めに。併設ショップにも映像作品を展示しています。グッズと合わせてお見逃しなく!ご来場お待ちしています。

【展覧会ページ】
近藤聡乃展 呼ばれたことのない名前
Kondoh Akino Exhibition: Never Before Named

2019/10/12 − 11/10

近藤聡乃展 呼ばれたことのない名前

近藤聡乃トークイベント2019年も考え中レポート前編

10月13日(日)におこないましたトークの内容を抜粋編集し、2回に分けてお届けします!
※印の作品は展示しておりません。

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(アルティアム・山田)
最初に近藤さんにアルティアムで個展をお願いしたいというお話をした時に、アニメーション、マンガ、絵画などのジャンルに限定せず、網羅的な展覧会はどうでしょうかと提案しました。

(近藤聡乃さん)そうですね。初めの頃は開催時期について相談していて、今雑誌で『A子さんの恋人』というマンガを連載しているので、その連載との兼ね合いで時期を決めましたが、予定はずれにずれ、まだ連載は終わっていないです(笑)。

(山田)すごくお忙しい中やっていただいて、ありがとうございます。近藤さんにとって過去最大規模の個展ということで、回顧展にしましょうという話になり、作品の選定や構成を近藤さんご自身に考えていただきました。展覧会は①初期作品、②てんとう虫のおとむらい、③《KiyaKiya》以前の作品、④KiyaKiya、⑤現在進行形の作品という5つの構成になっています。今日はこの5部構成の流れに沿って、近藤さんにお話していただきます。

①初期作品

《女子校生活のしおり》コピー用紙にインク 1998 撮影:古賀亜矢子

《女子校生活のしおり》コピー用紙にインク 1998 撮影:古賀亜矢子 《女子校生活のしおり》コピー用紙にインク 1998
撮影:古賀亜矢子

(近藤さん)会場入ってすぐのところに展示してある、マンガ「女子校生活のしおり」は、高校3年生の時に当時通っていた美術予備校のコンペに出品するために描いたマンガです。展示作品のほとんどにおかっぱの女の子が描かれていて、多くの作品では主役として登場していますが、その女の子が初めて登場したのがこのマンガです。「英子」という名前で、はじめは主役ではなくで、主人公の女の子が憧れる女の子という設定で登場しました。主人公の女の子が英子に惹かれるきっかけになるのが英子の書いた作文なのですが、この作文は私が実際に体験したことをもとに書きました。エッセイ集(『近藤聡乃エッセイ集 不思議というには地味な話』ナナロク社、2012年)にもその話を書いていますが、実家の近くで見かけたカエルを毎日見ていたらどんどん石になっていったという体験です。本当かどうかは分からないですけど、人から聞いた話では、カエルは死ぬと石化して石になることがあるらしいです。私が見たのも本当にカエルだったのかもしれません。

(山田)三つ編みの女の子が主人公の陽子ちゃんですね。

(近藤さん)そうです。特に迷わずに、陽子ちゃんと英子ちゃんにしたのですけど、理由はあまり覚えていないです。「英子」という名前はこの後もずっと出てきて、連載中のマンガ『A子さんの恋人』の主役もこの名前です。

 

《3年5組》イラストボードにアクリル絵具 2000

《3年5組》イラストボードにアクリル絵具 2000

(近藤さん)大学2年生の課題で描いた作品で、大学で初めてとても褒められた作品です。確か「シュルレアリスム」という課題だったと思います。この頃からどんな作品を作りたいかお方向性がなんとなく決まってきた気がします。

(山田)学科はグラフィックデザイン科でしたよね。

(近藤さん)あまりデザインが向いてなくて、大学3、4年生は表現系と呼ばれる、イラストレーションやアニメーションなど自由に作って良い授業ばかり選択していました。デザインが全くさっぱり分からなかったというか、ぴんとこなかったですね。

 

《密着アルバム》手術用ゴム手袋にビーズ、スパンコール、刺繍糸 2002 《密着アルバム》漫画原稿用紙に鉛筆、インク 2005 撮影:古賀亜矢子

《密着アルバム》手術用ゴム手袋にビーズ、スパンコール、刺繍糸 2002
《密着アルバム》漫画原稿用紙に鉛筆、インク 2005
撮影:古賀亜矢子

(近藤さん)大学4年生の時、表現系の授業の課題で作った作品です。手術用のゴム手袋に刺繍をしています。触覚的な思い出を立体化するというテーマで作りました。同じタイトルのマンガ作品と対になっています。マンガで描かれている、てんとう虫の思い出が、後の《てんとう虫のおとむらい》というアニメーション作品に繋がっていきます。

(山田)アニメーション作品以外にも、近藤さんの作品にはてんとう虫というモチーフが繰り返し出てきますよね。

(近藤さん)てんとう虫に関する印象的な思い出がいくつかあるんです。私は小さい頃の体験や記憶をもとに作品を作ったりするのですが、一つの体験から複数の作品を作ることもあります。

 

《電車かもしれない》シングルチャンネル・アニメーションビデオ 3分56秒 2001-2002 音楽:知久寿焼 music copyright ©︎ CHIKU Toshiaki

《電車かもしれない》シングルチャンネル・アニメーションビデオ 3分56秒 2001-2002 音楽:知久寿焼
music copyright ©︎ CHIKU Toshiaki

(近藤さん)《電車かもしれない》は、初めて作ったアニメーション作品です。自分の好きな音楽にアニメーションをつけるという大学3年の課題で作り始めました。

(山田)この作品でNHK「デジタルスタジアム」や文化庁メディア芸術祭アニメーション部門などで賞を獲られています。課題で作った立体作品と対になるマンガ《密着アルバム》も青林工藝舎から出版されるなど、学校の課題でありながら、作家として発表し評価された作品が多いですね。

(近藤さん)グラフィックデザイン学科はとても課題が多くて忙しかったんですよ。なので、うまく課題を使わないと自分の作品を作れなくて。作品だけど、課題としても出せるようなものを作っていました。

 

《月の花 vol.4 背後の気配》※ 紙に鉛筆、アクリル絵具 2003

《月の花 vol.4 背後の気配》※ 紙に鉛筆、アクリル絵具 2003

(近藤さん)大学を卒業した後は、就職はせずに作家になろうと思っていました。そんな時に、ギャラリーエスというところで個展をさせていただけることになったので、そのために描いた作品です。

(山田)本展ではこの作品は展示していませんが、《月の花》シリーズの別の作品を2点展示しています。一つのテーマをもとに、複数の作品を描くというシリーズ展開を、この後も結構されていると思うんですが、それは理由がありますか。

(近藤さん)自分の好きなことをテーマに絵に描くと何度も同じような絵を描きたくなるんですよね。そういう意味でも、同じような作業を毎日繰り返すアニメーション制作は自分に向いているのかなと思います。

 

②てんとう虫のおとむらい

卒業制作版《てんとう虫のおとむらい》※ シングルチャンネル・アニメーションビデオ 2002

卒業制作版《てんとう虫のおとむらい》※ シングルチャンネル・アニメーションビデオ 2002 卒業制作版《てんとう虫のおとむらい》※ シングルチャンネル・アニメーションビデオ 2002

 

《てんとう虫のおとむらい》2003(『はこにわ虫』所収 青林工藝舎 2004)

《てんとう虫のおとむらい》2003(『はこにわ虫』所収 青林工藝舎 2004) 《てんとう虫のおとむらい》2003(『はこにわ虫』所収 青林工藝舎 2004)

(近藤さん)これは大学の卒業制作で作ったアニメーション作品で、卒業制作版《てんとう虫のおとむらい》と呼んでいます。今回展示しているアニメーション《てんとう虫のおとむらい》とは違う作品です。卒業制作版は、先に描いた同じタイトルのマンガをもとにアニメーションを作り始めたのですが、頓挫しました。仕上がらなかったけれど、卒業はしまして(笑)。割と忠実にマンガから抜き出してアニメーションにしています。ただそのやり方に無理があって、失敗したのかなという気がします。アニメーションは完成するまでにとても時間がかかるので、最後までその作品に興味を持っていないと、なかなか作り切るのが難しいのですが、途中で気力が失せてしまいました。大学を卒業したのは2003年ですが、それからずっと気になっていたので、2005年に作り直しました。完成版《てんとう虫のおとむらい》は、絵コンテから描き直して作り、卒業制作版とは全く違う内容になりました。

(山田)絵コンテの前にされることはあるんですか。

(近藤さん)スケッチブックみたいなものにイメージをたくさん描いて構想を固めたりします。それで作り切るまで気持ちが持つところまでもっていって、絵コンテをおこして、それに沿って1、2年かけて制作する、というプロセスになります。

(山田)いったん抽象的なところまで立ち戻って、改めて組み立て直したという感じでしょうか。

(近藤さん)そうですね。

 

《夜の鼓動 vol.2》パネルに鉛筆、アクリル絵具、ジェッソ 2005

《夜の鼓動 vol.2》パネルに鉛筆、アクリル絵具、ジェッソ 2005

(近藤さん)これは2004年から2005年にかけてドローイングを集中して描いていた時期の作品です。アニメーション《てんとう虫のおとむらい》の構想段階に描いた作品です。てんとう虫が出てくるわけではないけど、なんとなく似たイメージですね。

(山田)このシリーズは、円形の作品が多いですね。

(近藤さん)四角い形の絵もあるんですけど、よく見ると四隅のところを切り落としても大丈夫な構成になっていることが多くて。丸が一番自分に向いている形なのかなという気はします。

(山田)小さい人も、よく描かれていますね。

(近藤さん)小さい人が最初に出たのは、高校3年の時に描いた《女子校生活のしおり》ですね。教室の中を飛び回る卵子の絵があって、多分その延長上の何かだと思います。

 

《てんとう虫のおとむらい2-10-02》※パネルに鉛筆、アクリル絵具、ジェッソ 2006

《てんとう虫のおとむらい2-10-02》※パネルに鉛筆、アクリル絵具、ジェッソ 2006

(近藤さん)このドローイングは、アニメーションが完成したあとに描いたもので、アニメーションで描ききれなかった部分を描くという意味もあったと思います。

(山田)最初にマンガを描いて、スケッチやドローイングを描いて、アニメーションを作って、描ききれなかったものを絵画にして「てんとう虫のおとむらい」という一つのテーマを、何年もかけて複数のメディアを巡って終了したんですね。

(近藤さん)この《てんとう虫のおとむらい》のシリーズが終わった後に作った《KiyaKiya》のシリーズも、何年か掛けて取り組んでいます。

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レポートは後編に続きます。

【展覧会ページ】
近藤聡乃展 呼ばれたことのない名前
Kondoh Akino Exhibition: Never Before Named

2019/10/12 − 11/10

音と旅する鉱物展

ギャラリーツアー 鉱物の魅力にせまる旅

中西_プロフィール写真_正方形
九州大学総合研究博物館の中西 哲也准教授が、鉱物の魅力についてお話しします。

日時:1月11日 14:00〜30分程度
会場:三菱地所アルティアムイムズ8F
※参加無料・予約不要要展覧会チケット

【展覧会ページ】
音と旅する鉱物展
九州大学総合研究博物館コレクション

2019/12/21 − 2020/1/26

音と旅する鉱物展

原 摩利彦 オープニングトーク 音をめぐる旅

原 摩利彦 photo: Kiyotaka Hatanaka

原 摩利彦 photo: Kiyotaka Hatanaka

本展のサウンドを手がけた原 摩利彦が、音楽活動や制作についてお話しします。

日時:12月21日 開場13:45 開演14:00〜90分程度
会場:デジタルハリウッドSTUDIO福岡イムズ11F
参加費:500円
定員:50名自由席
申込:アルティアム092-733-2050まで要電話予約。11月27日より受付開始。

【展覧会ページ】
音と旅する鉱物展
九州大学総合研究博物館コレクション

2019/12/21 − 2020/1/26

氷室友里のテキスタイル展

ギャラリーツアー

氷室友里が、作品や制作について詳しく話します。

日時:11月17日、30日 両日とも15:30〜40分程度
会場:三菱地所アルティアムイムズ8F
※参加無料・予約不要要展覧会チケット

【展覧会ページ】
氷室友里のテキスタイル展
TEXTILE PLAY GROUND

2019/11/16 − 12/15

氷室友里のテキスタイル展

ワークショップ ミニファブリックパネルをつくろう

ミニファブリックパネル見本

ミニファブリックパネル見本

SNIP SNAPの生地を使用して、18×14cmサイズのファブリックパネルを作ります。
当日は新作の生地を使用します(画像の生地とは異なります)。

日時:11月17日、30日両日とも14:00〜50分程度
会場:会議室イムズ8F
定員:各回12名
講師:氷室友里
料金:2,000円
申込方法:アルティアム092-733-2050まで要電話予約。 10月28日より受付開始。

【展覧会ページ】
氷室友里のテキスタイル展
TEXTILE PLAY GROUND

2019/11/16 − 12/15

氷室友里のテキスタイル展

オープニングレセプション《作家来場》

氷室友里を迎えて、オープニングレセプションを開催します。

日時:11月16日18:30〜20:00
会場:三菱地所アルティアムイムズ8F
※参加無料・予約不要

【展覧会ページ】
氷室友里のテキスタイル展
TEXTILE PLAY GROUND

2019/11/16 − 12/15

世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦

SNSキャンペーン

DSC01516

展覧会ハッシュタグをつけてSNS投稿した画面のご提示で、特製しおりをプレゼントします。このしおりは、タラブックスにてシルクスクリーン制作時のミスプリントを再利用したものです。

<応募方法>
1. アルティアム会場内で撮影した画像や感想をSNS(Facebook,Twitter,Instagram)で展覧会ハッシュタグをつけて投稿
#世界を変える美しい本 #タラブックス展 #三菱地所アルティアム
2. 受付で投稿画面を提示
3. その場でしおりを差し上げます

キャンペーン期間:8月31日〜  10:00〜20:00
*しおりがなくなり次第終了いたします。絵柄はお選びいただけません。
お渡し場所:三菱地所アルティアム受付イムズ8F

【展覧会ページ】
世界を変える美しい本
インド・タラブックスの挑戦

2019/8/31 − 10/6

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