Local Prospects 4

公募審査結果発表

三菱地所アルティアムでは、九州・沖縄とその周辺地域を拠点とする作家を中心に、“いま、ここで紹介すべき作家”を発信する展覧会シリーズ「Local Prospects 4」を開催いたします。
2015年にスタートした本シリーズは、門戸の開かれた展覧会とするため、第2回から出展作家4名のうち1名を公募で選出してきました。回を重ねて迎えた今回の「Local Prospects 4」では、さらなる可能性を求めて、出展作家全員を公募で選出いたしました。

絵画、写真、映像、インスタレーション、メディアアートなど、多彩な表現による46件のエントリーがありました。厳正なる審査の結果、下記の作家による展示プランが選出されました。この度のご応募、誠にありがとうございました。審査結果、審査員による講評は、以下の通りです。

●審査概要
募集期間:2018年6月1日(金)〜8月3日(金)
応募総数:46件
入選者:木浦 奈津子(1985年鹿児島県生まれ、鹿児島県在住)、寺江 圭一朗(1981年広島県生まれ、東京都在住)、吉濱 翔(1985年沖縄県生まれ、沖縄県在住)
審査員:後小路 雅弘(九州大学大学院人文科学研究院 教授)、阿佐美 淑子(三菱一号館美術館 学芸員)、宮本 初音(ART BASE 88/Fukuoka Art Tips)、山田 晃子(三菱地所アルティアム)

●審査員コメント
後小路 雅弘(九州大学大学院人文科学研究院 教授)
この展覧会の審査は初めてなので、過去3回との比較はできないが、応募者数も予想したよりずっと多く、内容的な面でも、箸にも棒にもかからないといったものはほぼなく、予想以上にレベルが高く、粒ぞろいだったので、選考にはたいへん苦労した。逆に言うと、全体のレベルは水準以上だが、その中でさらに突出している作家も見られず、どんぐりの背比べ、といった面も否めなかった。
審査というのは、今回に限らず常にそうだが、選考対象の作家や作品を審査するというよりは、自分自身の美術観や美意識、展覧会への向き合い方といったものを自ら問い直すことになる。今回は、作品そのものの持つ魅力、展覧会場での表現力といった面を判断基準にしたし、同時に、テーマの「隔たり」を、自己と他者(あるいは客体)との単なる図式を越えて深めているかどうか、そして、ローカリティがただの「九州/沖縄らしさ」といったレベルを越える、あるいは裏切る内実を持っているか、それが必然性や切実さに裏打ちされているかどうか、といったことを考えながら選んだ。
とはいえ、今回は公募展であり、わたしの個人的な基準をクリアする十分な実力のある作家を選ぶというより、ある到達点を目指して、呻吟し、歩み続ける、未完の可能性を意識的に選んだ、ということになるだろう。

阿佐美 淑子(三菱一号館美術館 学芸員)
展覧会「Local Prospects」も今年で4回目。今回は、3名の招待作家に加える公募作家一名を選ぶ第2回、第3回から発展、全員を公募とする形式をとった。その理由は、前回までの審査において、多くの応募作家の力量が招待作家に匹敵することが分かり、全て公募としたほうが展覧会として見応えが増すのではと運営側が予測したからだった。
その読みは当たった。応募数はこれまでで最高の46本、しかも、充実した作品が驚くほど多かった。そのため、審査には予想以上の時間を必要とした。レベルの高さに審査員全員が驚きの感想をもらしたのは痛快だった。福岡はもともと現代アートが盛んで、長年、若い作家のレベルが高く保たれているが、彼らがこの展覧会に注目し、挑んでくれたおかげで、展覧会そのものの成長が見えたからだ。また複数の九州在住の海外出身の作家の応募もあったことは、審査員にとって大変幸福なことだった。国内外に開かれたアートシーンが醸成されているのは、福岡の街の歴史を考えれば当然かもしれないが、大変好ましいことだ。
一つだけ残念だったのは、前回までの応募作品にも同様だったが、社会や歴史に眼差しを向けた作品が大変少なかったことである。自己と向き合う作品は、もちろん悪くない。が、福岡、日本を出て世界に挑むためには、自己だけでなく、世界を見つめ、思考を深め、それを作品に表現することが必要だ。次回展では、ぜひ自己の外へ開かれた作品を期待したい。

宮本 初音(ART BASE 88/Fukuoka Art Tips)
「人数、増やせないの?!」なんども選考の現場で発せられた声です。応募者数が少なかったのではありません。選出するアーティスト数を増やしたい、落とすには惜しい、そんな葛藤に溢れた選考会でした。
今回はアーティスト全員が公募ということで選出できる数が増えましたが、アーティストの力量や仕事のバリエーションを考えるともっと多くを選んで会場でせめぎあってほしいと思ってしまいました。それほど、熱い審査になったのはなぜか。
応募数が増えたことがひとつ。そしてその資料が見やすくなったということも一因です。過去のデータ、今回のコンセプト、その文字や画像のデータをもとに私たちは空想します、どんな作品が出てくるのか。ちゃんとそこを想起させる資料が増えたということです。なかなか採用されないと思っているかたは、ひとりで苦しまずアドバイスを受けたらよいと思います。アーティストはもともと資料より作品を作る人なのですから。
審査の結果、ユニークな3人が揃いました。テーマをどう咀嚼して作品が登場するか、また相互の関係もわくわくします。ただ、お気づきでしょうか、いま福岡に住んでいるアーティストが含まれていません。これは過去にもあった、福岡での公募展において対象が広がると出てくる現象です。福岡で「アートすること」が日本、アジア、世界の中でどんなポジションにあるのか、この展覧会を通して、私もまた考えることになるでしょう。

山田 晃子(三菱地所アルティアム)
今回の公募では、「この隔たりを」というテーマを設定することで、作家自身が切実に感じている違和感や距離などの“隔たり”に対して、どのような在り方を作品化しているのか、そしてそれを展覧会というフォーマットでどのように見せようとしているのか、という2つの問いを投げかけたことは、公募告知文に記した通りである。
そのため、テーマを独自に咀嚼し深く思考しているか、 作品として強度があり展示プランにすべてがうまく落とし込まれているか、という点を審査基準とした。寺江圭一朗に関しては、自身の思考行動や体験から生じる非言語的なものをうまく作品化している点を評価した。吉濱翔は、2014年以降の自身の創作活動を総括的にとらえてテーマ解釈するという独自のスタンスが興味深い。木浦奈津子は絵画という古典的フォーマットと技法で、他者に開かれた風景画をシンプルに追求し、展示プランでもその点に意識的であったことを評価した。3者ともにすばらしい展示空間をつくり出してくれるにちがいないと期待する。
また、今回は舞台芸術領域で活動しているアーティストからも複数応募があり、主催者としては、本シリーズが美術に限らず、広く関心を集めることができたことを大変うれしく思う。 応募いただいた作家全員に感謝するとともに、今回の応募が今後の制作活動にプラスになることを強く願う。

●展覧会概要
Local Prospects 4 この隔たりを
会 期:2018年10月27日(土)〜11月18日(日) ※11/6(火)は休館日
会 場:三菱地所アルティアム(福岡市中央区天神1-7-11イムズ8階)
時 間:10:00〜20:00
入場料:一般400(300)円、学生300(200)円、高校生以下無料、再入場可、( )内は前売料金/チケットぴあ・10名以上の団体料金、障がい者等とその介護者1名は無料、アルティアムカード会員・三菱地所グループCARD(イムズカード)会員無料
主 催:三菱地所、三菱地所アルティアム、西日本新聞社

【展覧会ページ】
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この隔たりを

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