日常のとなり anno lab

オープニングレセプション レポート

初日にanno labの皆さまをお迎えし、オープニングレセプションを行いました。活動拠点の福岡で初個展ということもあり、たくさんの方にご来場いただきました。当日の様子をお届けします。
(以下はオープニングレセプションでのトークを一部抜粋・編集したものです。)

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(アルティアム・安田)本日は「日常のとなり anno lab」オープニングレセプションにお集まりいただき、ありがとうございます。本日は、anno labのメンバーの皆さんに来ていただいています。

今回、「九州発信プロジェクト」という九州の魅力的な取り組みや表現活動を紹介するプロジェクトの一環として、anno labにお声掛けさせていただきました。 anno labは地元・福岡を拠点に、福岡市科学館、福岡市動植物園、福岡タワーなど、地元に根付いて活動をされているところ、「世界一楽しい街を創る」をモットーに活動されているところに興味を持ちまして、anno labだったらどんな展覧会をつくるのだろうと思ったのが、本展のはじまりです。

「日常のとなり」というテーマで、ここにリビングの部屋が出現し、実はこの中に、約20点の作品が潜んでいます。このあと、どこに作品があるのか発見し体験を楽しんでほしいと思います。

それでは、anno labの代表である藤岡定さんから、今回「日常のとなり」をテーマに設定した思い、どういったところを楽しんでほしいかをお話しいただければと思います。

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(anno lab代表・藤岡定さん)今日はお集まりいただき、本当にありがとうございます。この展覧会で、「日常のとなり」をテーマに設定したきっかけですが、元々ぼくたちがものをつくる発想の中で、日常に落とし込んだ作品をつくりたいという思いがあります。

ものをつくる時のアプローチとして、非日常をつくりだして、日常を忘れて楽しい気分になってもらう方法もあると思います。一方で、ぼくたちはどちらかというと、日常自体をどんどん楽しくすることで、人生がどんどん豊かにになっていくのではないか、という思いがあり、日々ものづくりをしています。

この空間コンセプトは、まず実家に帰ってきた感覚になってもらおうと考えました。会場の入り口である押入れの中から服をかき分けて入っていくと、「なんじゃこりゃ!家やん!」という驚きとともにスタートしてもらいます。

こういった日常の空間をつくりだし、13人のメンバーが、それぞれの視点で、日常を切り出して、日常のとなりにどんなものがあれば、自分はわくわくするだろう、どういうものに知的好奇心を持って、ここまで生きてきたのだろうと考え、約20点の作品として形にしてもらいました。それぞれに味のある作品ができたのではと思います。

このリビング部屋の空間には、何の説明やキャプションもなくて、どこに作品が存在するのか、全く分からない状態ですが、実は、奥の空間では、リビング部屋の空間と同じ間取り図になっていて、ソファーやテーブルなどそれぞれの位置にどういった作品が仕掛けられているのか説明しています。

リビングの部屋で運良くいろんな作品を見つけられた方は、もちろん楽しんでいただけますが、もし見つけられなかった方も、奥の空間に入って、こういう作品があったんだ、じゃあもう少し遊んでみようと、楽しんでいただける仕組みになっています。

皆さまには、会場内の様々な作品を体験して、自分の日常を振り返り、日常でどういうことをすれば、もっとわくわく暮らすことができるだろうという発想に至るきっかけになればと思っています。

この作品をつくるにあたって、いろいろな方にご助言、ご鞭撻をいただきました。アルティアムにも本当に感謝しています。そして、メンバーの方々、来ていただいた皆さん、本当にありがとうございます。それでは、皆さん楽しんでください。

(安田)ありがとうございました。
会期中は、二つのイベントを予定しております。一つは、5/12(日)に、anno labと建築事務所Drawing Heads Fukuokaさんが共同開発した建築知育玩具KUMICAを組み立てて遊ぶワークショップを行います。イムズB2Fで11〜16時の間、予約不要で随時参加できます。ぜひ遊びにいらしてください。
もうひとつ、5/18(土)にギャラリーツアーを行います。会場内でanno labの皆さんが作品について解説いたします。この作品にこういった意図があったんだという発見のあるギャラリーツアーになるかと思います。こちらも予約不要です。ぜひご参加いただければと思います。

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2012年に九州大学芸術工学府出身の4名で設立されたanno lab。現在のメンバー13名による作品を日常空間の中で見つけながらお楽しみください。
会期は6/2(日)までです。※休館日5/21(火)。ぜひ、会場に足をお運びください!

【展覧会ページ】
日常のとなり
anno lab

2019/4/27 − 6/2

田根 剛|未来の記憶

田根 剛 トークイベント レポート3

田根 剛 トークイベント「Archaeology of the Futureー未来の記憶 Image & Imagination」』レポート最終回です。第一回目二回目と合わせてご覧ください!

ホーム

(池田美奈子さん)今パリに事務所を持っていらっしゃるということですが、田根さんにとって、ホームはどんな所でも良いのでしょうか。現在たまたまパリということなのか、どこに行っても外部者という立場を好むのか。拠点やホームについてはどのようにお考えでしょうか。

(田根剛さん)あまり考えてなかったかもしれないです。現場がホームという感じです。今回も福岡に良い展覧会をつくろうという思いで来ているし、次の現場があればそこで一生懸命働くし、パリに戻ったらその中で日々の仕事をする。今は、現場で一生懸命やることがホームという感じですね。

(池田さん)なるほど。

(田根さん)その時にチームワークが重要で、関わる人たちとの信頼づくり、良い意識を持ってその場その場で活動するようにしています。

 

基本に戻る

(池田さん)バックグラウンドも価値観も国籍も違うであろう30数名の方々とチームワークをつくるときに、何を大事にされていますか。

(田根さん)今年初めにスタッフに伝えたのは、もう一度自分たちの基本に戻ろうということ。大きな展覧会も含めて、去年はかなり大変な一年でした。その一年を終えて、彼らにも自分にも言い聞かせたのは「back to the basic」。最も基本的なところに戻る。
日々働いていると、今日ここに何をしに来たのか考えなくなってくる。毎朝何がしたくてこの場所にいて、何をしようとしているのかという意識や思いが、ちゃんと自分自身に問いかけられているか。
ここで仕事をしたい、こういう建築をつくりたいという思いが、毎日の仕事のベースにあってほしいと。それを問いかけながら、この一年仕事をやろうと彼らに話したし、僕自身もこれから先に向けて、その基礎が固まらないともっと先にいけないなと思いました。

(池田さん)何か転機があったのですか。

(田根さん)去年本当に大変だったということ、そして全て出し切ったからですかね。10年以上の仕事を、展覧会と「Archaeology of the Future」というマニフェストも含め、多方面に紹介してくださって、自分たちの手を離れて何かが伝わった印象がありました。
そこから更に次のステージにいきたいと思ったときに、原点に戻って基礎を固めないといけないと思った。このままやっていけば良いと安心したくなかった。ここからまた次に行くために、今何をしたら良いのかをもう一度、自分に問わないといけないということです。

(池田さん)厳しいですね。そのまま進むこともできそうですが、それは見直して、常にとどまらずにチャレンジされている。

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考えなくていいことは考えない

(池田さん)例えばエストニアのコンペは当時26歳で若くして挑戦されていますよね。エストニアは当時、安定したかしないかくらいの、政治的にも転機だったと思います。
非常に思い切ったことにチャレンジされているなと思います。そういうところにあえて飛び込んでいこうと思われた理由をお話いただけますか。

(田根さん)そうですね。チャレンジ精神は大事だと僕は思っているので、自分自身が本当にやりたいのか、ということ以外はあまり考えない。
20歳から海外に住み始めたことも含めて、大変だったけど一生懸命だったし、いろんな人の力もあってそれなりに楽しくできた。あまりやる前から大変そうだとか、頭で分かったかのような気になるより、とりあえず行ってみて、大変でも頑張ってみれば良いんじゃないかと思っています。

エストニア国立博物館も完成まで10年かかって大変でしたね、と言われます。大変だったかもしれないけど、やることもいっぱいあったし、どれだけやっても足りないほどの大きなプロジェクトだったので頑張るしかなかった、ということですよね。

(池田さん)規模もそうですし、転換期を迎えた国だった。エストニアにとっての最初の博物館ですか。

(田根さん)エストニアがソ連から独立をしたとき、国の約束として、国立博物館、美術館、オペラ座の三つをつくると宣言しました。実は過去に国立博物館という民族の精神を語る場を絶対につくりたいと、2、3回コンペも実施されましたが、頓挫したという経緯もありながら、いよいよ開かれたのが2005年の国際コンペで、初めて参加しました。

(池田さん)ある意味、エストニアという国のアイデンティティー、希望を背負った感じですよね。

(田根さん)もちろんそういった背景を建築が背負うことも大事ですが、一方で、何か創造していくというのは、規模が小さかろうと大きかろうと、考えすぎて、背負い込むのも良くないと思っています。

(池田さん)自由にできなくなる感じがしますね。

(田根さん)そうですね。様々な制約から解き放たれて、自由にものを創造できるのが建築の魅力なので。建物をつくる為の法律や予算のしばりはあっても、「建築を考える」ことは、本当に自由にやっていたいなと思います。考えなくていいことは考えない、考えたいことを一生懸命考えるというスタンスでやっています。

(池田さん)考えなくてもいいことは考えない。大事ですね。

 

三つの部屋

(池田さん)展覧会の見方があれば教えていただけますか。

(田根さん)展覧会場は、三つの部屋に分かれています。「Image & Imagination」というサブタイトルに基づいて、Room1は僕らのプロセスの原点ともいえる膨大なイメージの空間があります。Room2では、ものしかない空間に変わり、建築のプロセスでいうと、つくっていく作業が垣間見える部屋だと思います。今回は、いわゆる建築展にある図面も写真も、スケールという大きさを測るものもありません。模型を置いて、見る人が考古学的に、何がどれに繋がっているのか発掘するように見てもらう展示になっています。Room3は、リサーチや模型を経てできあがったプロジェクトのプロジェクション映像です。建物を展示会場に持ってくることはできなくても、映像技術を通して、空間体験ができればと思い、映像担当の方と制作しました。

(池田さん)3面の非常に大きな映像ですね。

(田根さん)限られたスペースの中で、全く異なる体験ができたらと思っています。

(池田さん)情報がぎゅっとつまっていて、本当に見応えがありました。

 

手を動かしながらイメージをつくりだす

(池田さん)Room2を拝見して面白かったのが、棚の上の模型です。つくっているライブ感が伝わる模型の原型、粘土や発泡スチロールでつくったもの、カラーのチップ等が置いてあります。
イメージを形にするより、手を動かしながらイメージ、アイデアをつくり出しているのかなと感じました。

(田根さん)仰ってくださったように、イメージしたものを形にするのはあまり面白くないんですね。最近は、つくっていくうちに思いつき、最終的に「こんなものができてしまった」、というプロセスのつくり方をし始めました。

(池田さん)もうひとつ面白いなと思ったのが、プロジェクトごとに分かれた棚に一文入っていますよね。非常に印象深い、ああそうかと膝を打つような言葉が随所に書かれています。これも結構見逃せないなと思いました。

(田根さん)会場内には、唯一その一文しかプロジェクトの解説といえるものはないので、言葉の力を借りて伝えられること、考えていることをテキストにしました。

(池田さん)あの一文は、建築を考えるときに、膨大な言葉が出てくる中で、選び抜かれた一文ということになりますか。

(田根さん)大概は、そのときに本当に思ったこと、書いているときに思ったことを率直に言葉にしていることが多いですかね。

(池田さん)ぜひ注目していただければと思います。

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Room 2 展示風景 撮影:古賀亜矢子

 

展覧会に足を運ぶ

(池田さん)これから展覧会をご覧になる方に、何かメッセージはありますか。

(田根さん)展覧会は、今見ないと終わってしまうもので、見ないと分からない。見たことで、何か自分のためになるかもしれないし、時代を感じるかもしれないし、怒りをおぼえるかもしれない。
また展覧会は、今起きていることをダイレクトに感じる場だと思います。見たものを自分の中にとどめず、人と話したり、それにより見方の違いを理解したり、そういった意味で展覧会は非常に大事なものだと思っています。

もうひとつは、芸術鑑賞は知的な好奇心を学ぶ場だと思います。そこにある意味を問い、何の関係があるのか、知的に読み解くことによって、よりたくさんのものを知ることができます。文化や芸術の意味を考える場として、ぜひ展覧会を通して、ただ見た、感じたというだけではなく、そこから次に繋がるものを考える、という体験をしていただけたらと思います。展覧会を見て、いろんな方と話していただけたら嬉しいなと思っています。

(池田さん)ありがとうございました。展覧会を介してアイデアを交換したり広げたりするような機会になればと思います。

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田根さんのお話をお読みいただいたうえで、もう一度展覧会をご覧いただくと、見る人それぞれに違った発見があるのではないでしょうか。本展会期は3/10(日)まで!ぜひ、足をお運びください。

【展覧会ページ】
田根 剛|未来の記憶
Archaeology of the FutureーImage & Imagination

2019/1/19 − 3/10

田根 剛|未来の記憶

田根 剛 トークイベント レポート2

建築家・田根剛さんと、聞き手に池田美奈子さんをお迎えし、開催した『田根 剛 トークイベント「Archaeology of the Futureー未来の記憶 Image & Imagination」』レポート二回目です。第一回目と合わせてご覧ください!

記憶とは何か

(池田美奈子さん)今回サブタイトルを「Image & Imagination」とし、東京二会場と変えていて面白いなと思いました。そしてマニフェスト、「記憶は未来をつくる」という部分に非常に共感しました。
記憶というと、正しいとは限らないですよね。人は絶えず変わっていってしまう。記録は残るかもしれないけど、記憶は人の中にあって、ときに都合の良いように、または年代によって変わるかもしれない。「記憶」についてもう少し具体的にお話いただけますか。

(田根剛さん)ひとつ記憶が良いのは、記憶に正しいも間違いもない。一番大切なことは、正しさではなく、その記憶に何の意味があるのかを問いかけられることです。その問いが、記憶の力になるのではないかと思うと、僕らがものをつくる原動力もそこに集中していきやすい。
また記憶というと、人の記憶と思われがちですが、ここで語っているのは、場所の記憶です。人の記憶は変わって忘れられても、場所の記憶は絶対に忘れない。古代でも現代でもその場所で起きたことを僕らは掘り返し、その場所が持っている最も大切な記憶はなんだろうかと考えます。それを建築として残し伝えることで、もしかしたらそこから未来をつくることができるかもしれないと考えています。

(池田さん)なるほど。それが根本的な考え方なのですね。

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リサーチとクリエーション

(池田さん)アルティアムの展覧会は、膨大なリサーチ資料の部屋から始まります。建築の展覧会ということで、模型や図面、あるいはドローイングがあるのかなと思ったら、いきなり圧倒的な量のリサーチがある。

(田根さん)そうですね。

(池田さん)学問としてのアーキオロジー、考古学は、事実を求めていきますよね。でも、田根さんの場合、事実ではなく、何か別のものを掘り返している気がします。というのは、膨大なリサーチのイメージに添えられたキーワードが、どこかポエティックで恣意的なものかもしれない。それらのキーワードが、どうクリエーションに変わっていくのでしょうか。

(田根さん)その土地を掘り返して、様々な地層や土から見つかったものによって、歴史的な発見もできるかもしれないというモチベーションがある。
過去を掘り返すことで、歴史的な発見をしたいというのが考古学者であれば、僕らも同じように未来を創造したいという気持ちで、一見時間軸では未来とは真逆な過去を掘り返していく。このモチベーションが、日々の仕事に、密接に繋がっているような気がしています。

今回の展示は、最初の部屋に「記憶とは何か」をリサーチした約1,500枚以上の膨大なイメージがあり、ここに記憶の力が蓄積されているのではと考えています。イメージの中に、6つのキーワードがあり、例えば、「SYMBOL」の周りには、象徴的な画像や図像があります。古代人はシンボリックなものを見てそれを記憶してきた。または、シンボリックなものによって何かを崇拝、信仰する、祈る力があった。僕なりに、「象徴は記憶の原点ではないか」と考えています。他には、「IMPACT」の周りには、突然起こる出来事、予期せぬ衝撃を受けることで、「衝撃が最も強い記憶ではないか」。また「NARRATIVE」では、我々にとっての「記憶とは物語や伝承によって繋がる」ことができるのではないか、などの考えを展示しています。

イメージから様々な想像力を働かせ、建築を考え始める。これが基礎的な思考のプロセスだと思うと、この部屋なしで「Image & Imagination」というサブタイトルを語れないと思い、今回の展示構成に加えました。

(池田さん)展示を見られる方は、最初の部屋を読み解くと本当に面白いと思います。

(田根さん)読み解こう思えば、1時間でも2時間でも楽しめると思います。

 

リサーチの面白さ

(池田さん)プロジェクトごとに、このようなリサーチをされるのですか。

(田根さん)そうですね。どんなに小さなことでもやります。例えば、お酒のボトルをデザインしたことがあるのですが、たった一本のボトルデザインでも、お酒、ワインの容器の歴史的変遷やお酒を発酵させるプロセスを調べたりします。そうすると、大概はメソポタミアに辿り着くことが多いです。またこの文明に辿り着いたのかというくらい、大概のことはメソポタミア文明がやってしまっている。
メソポタミアで様々なものが発明されて、それを強い信仰で意味をつくり出したのがエジプトであったり、思想や哲学をつくったのがギリシャだったりします。ただ、大体はメソポタミアで発明されているというのが、僕の今のところの感想です。

(池田さん)そうすると、メソポタミアで生まれたものを、時間と空間を超えて我々は根源に持っていると。

(田根さん)コップにしても、持ちやすくするための取っ手は、メソポタミアが発明しています。ふたをすることもです。そういう意味でもなかなかすごい人々ですね。今日はそういう対談ではないですけど(笑)。

(池田さん)リサーチをやることでそういった発見がある、という面白さですよね。

(田根さん)僕らはまず言葉と本から学ぶことが多く、本を読みながら、書かれている言葉や気になっていることを見つけつつ、短時間で膨大な情報量を集めることができるインターネットを活用して作業をします。その作業がないとこのような様々な時代やスケールのものを扱えなかったのではと思うと、面白いですね。

 

ラベルを剥がす

(池田さん)あのリサーチの部屋自体がひとつの宇宙のように見えます。何かのプロジェクトがあれば、そこにだんだんフォーカスしていくと思いますが、全体の中であるものをどう位置付けていくのでしょうか。例えば「日本である」ということを、全体の中でどう位置付けますか。

(田根さん)例えば、「ここは日本である」といった抽象的な既成概念はどんどん外してしまう。そのとき、信じられるのは具体的な「場所」で、地名は信じていいと思っています。既成概念を外したときに何が見えるか、残っているか。または全く違うものを照らし合わせ、比較することで、何が見えてくるか。
日本という一応の概要はあっても、日本はどこかというと特定の場所はない。建築はその場所に建つので、場所の記憶の部分を探ってリサーチを行います。

(池田さん)なるほど。ラベルを剥がしていくということですかね。

(田根さん)そうですね。既成概念や一般化されたものは気にしないで、次々見ていくということですかね。

(池田さん)多くの人がラベルによって物事を認識して生きている中で、田根さんたちは、ラベルはないものとする、あるいは膨大な作業をするうちにどんどんラベルが剥がされていく。

(田根さん)そうかもしれないですね。一般的な見方をすると、どんどんものごとがつまらなく見えてきてしまう。でも、ものの意味を深く探っていくと、非常にたくさんの記憶が蓄積されている。
そう思うと、知っていく想像力が面白い。何も知らないことを前提に、知ろうとする好奇心が、物事をより深く広く繋げていく作業が面白いなと。

(池田さん)そういったベースがあると、まったく見たこともない新しいものがつくれる。

(田根さん)つくれるかもしれない。僕らがつくるものは基本的には建築なので、リサーチしたことがダイレクトに形や色に反映されるという訳ではありません。あくまで知らないことを知ることにより、自分たちの中になかったものが次々と思考の中に入ってきて、そこから何かつくりたいという衝動に変わっていく。内側からこみ上げる衝動をより強くする仕事としてやっています。

(池田さん)体づくりのような感じですかね。

(田根さん)基本は体育会系なので、筋トレとしてやっているような部分はあるかもしれないですね(笑)。

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Room 1 展示風景 撮影:古賀亜矢子

 

リサーチを始めたきっかけ

(池田さん)体育会系というのが気になってしまったのですが、どういうことでしょうか。

(田根さん)実は、元々スポーツをずっとやっていました。
2011年に長野・松本で、サイトウ・キネン・オーケストラという小澤征爾さんの舞台で、オペラの舞台空間をつくる仕事がありました。その時に舞台裏でオーケストラの方々がリハーサル前に個人でウォームアップをしていました。日々のトレーニング、ウォームアップで自分と向き合っている時間やその音色がとても美しくて、それを見たときに非常にショックを受けました。

基礎トレーニングとして、音楽家であれば本番に向けてリハーサルや練習をする。スポーツであれば、試合に向けてトレーニングを行う。それに対して、設計をやっている僕らが、いきなりプロジェクトを始めてしまうのは、何の準備もしてないのではないかと。
そこから、僕たちであればリサーチを基礎トレーニングとして繰り返すことによって、本当にオリジナリティのある仕事ができるのではないか、と気づき、必要を感じて、基礎の作業としてリサーチを始めました。それが、今仕事に大きく役立つようになったという経緯があります。

(池田さん)非常に納得感がありました。

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レポートは第三回に続きます!

【展覧会ページ】
田根 剛|未来の記憶
Archaeology of the FutureーImage & Imagination

2019/1/19 − 3/10

田根 剛|未来の記憶

田根 剛 トークイベント レポート1

初日に開催した『田根 剛 トークイベント「Archaeology of the Futureー未来の記憶 Image & Imagination」』の模様を3回に分けてお届けします。第一回目は、トークの導入として建築家の田根剛さんにプレゼンいただいたご自身の設計事務所や本展のテーマやマニフェストについてご覧ください。


Atelier Tsuyoshi Tane Architects

(田根剛さん)オフィスはAtelier Tsuyoshi Tane Architectsという名前で、パリに拠点があります。フランス、日本、イタリア、オーストラリア、カナダやキプロス島など様々なところから集まった30数名のスタッフがいます。若い世代を中心に、異なる文化や背景を持ったスタッフが集まり、一緒に建築を考えています。
デジタル化が進み、コンピューターでの設計作業も多いですが、しっかりと自分たちの手を使いものを考えながらつくっていこうと思い、「アトリエ」を事務所の名前の最初につけました。また、「アーキテクツ」には、建築家として未来、次の時代を考え、つくっていこうとする意思を持った集団でありたいという想いがあります。
つくることからものの始まりがあると思っています。つくりながら考え、考えたものを図面に起こし、建築に展開することを日々の仕事としています。

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展覧会のテーマ

今回の展覧会のテーマは「Archaeology of the Future」です。「アーキオロジー」は「考古学」や「遺跡」などの訳がありますが、今回は展覧会に向けて「記憶」と意訳し、「未来の記憶」というタイトルにしました。
建築が生まれるときに、遺跡発掘現場のように、その場所を掘り返していく。過去を掘り返すことで、遠い時代や、現在の場所や時代にはなかったものが発掘される。考古学の発掘現場では、発掘されたものによって、それまで与えられてきた歴史を塗り替えることがあります。建築においても、この建築をつくることによって未来が変わるかもしれない。
そう考えたときに、考古学的なアプローチを「Archaeological Research(考古学的リサーチ)」と呼び、設計のプロセスを始める前に、その場所にまつわる様々なものを文脈だけでなく、ありとあらゆるものを調べ尽くします。気になったもの、発見したもの、そこから関係、発展したものなどを考察し、類推することで、多くの知らないことを知っていくという作業です。

去年の秋に15年間続けてきた仕事を東京の二会場で展示しました。単純に仕事を紹介するより、時代を切り取る「展覧会」というフォーマットを使って、「この時代、建築が何を考え、何を志すのか」を示すチャレンジの場にしたいという思いがありました。
東京オペラシティ アートギャラリーでは、サブタイトルを「Digging & Building」とし、掘り下げていくことと、未来を立ち上げていくことをテーマに。建築の専門ギャラリーであるTOTOギャラリー・間では、サブタイトルを「Search & Research」とし、仕事の考察のプロセスを探索していく作業と、リサーチという実験のような作業を見せ、同じ展覧会テーマ「Archaeology of the Future」で、二館違う側面を提案しました。

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展覧会のマニフェスト

展覧会のメッセージは、『記憶』、何かを覚えていること、それは単に過去を覚えているだけではなくて、「記憶は未来をつくるためにあるのではないか」という問い掛けです。展覧会を構想していく中で、このメッセージをいかに伝えるかを考えてきました。
そして今回、アルティアムの展覧会サブタイトルは、「Image & Imagination」としました。一見似た言葉ですが、「Image」は、ものを視覚的にみること、または見なくても自分の中でイメージできること、図像としてのイメージ。そして、「Imagination」には、想像力によってイメージを乗り越えたいという思いがある。東京会場とは異なるサブタイトルと展示構成で伝えようとしました。

また、作品集を初出版し、展覧会で考えてきたこと、見せてきたものを1冊の本にまとめています。単なるプロジェクトの紹介ではなく、建築が持つ形式や言語を、マニフェストやコンセプト、イメージ、ドローイングなど異なる役割を持ったフォーマットで表現した本です。

 

レポート第二回目は、池田美奈子さんをお迎えした対談に続きます。

【展覧会ページ】
田根 剛|未来の記憶
Archaeology of the FutureーImage & Imagination

2019/1/19 − 3/10

田根 剛|未来の記憶

オープニングレセプション レポート

Archaeology of the FutureーImage & Imagination

初日に建築家・田根剛さんをお迎えし、オープニングレセプションをおこないました。当日は会場に入りきれないほどたくさんの方にお越しいただき、大変なにぎわいのなかご挨拶いただきました。
(以下はオープニングレセプションでのトークを一部抜粋・編集したものです。)

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(アルティアム・安田)本日は「田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the FutureーImage & Imagination」のレセプションパーティーにお越しくださり、誠にありがとうございます。本展は昨年秋に東京の二会場(TOTOギャラリー・間東京オペラシティ アートギャラリー)で開催されました展覧会を「Image & Imagination」というサブタイトルのもと、再構成し実現しました。関係者の皆さまに、心より感謝の気持ち申し上げます。本当にありがとうございます。

アルティアムとしましても、建築の展覧会は約5年ぶりということで、世界で活躍される田根剛さんに、ここで展覧会を開催いただきましたことを嬉しく思います。それでは、田根さんからご挨拶をお願いいたします。

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(田根剛さん)こんばんは。建築家の田根剛と申します。今日はお集まりいただきまして、本当にありがとうございます。僕自身、福岡に来るのは初めてです。一昨日着いてからほとんどこちらで最終確認をしており、なかなか街に出られなかったのですが、ようやく今日オープンして街を歩いた第一印象として、本当に文化度の高い街だなと感じました。海外に長く暮らしていると、わりと福岡出身の方に会う機会が多く、聞いてみると、福岡は東京に出るのも海外に出るのも感覚的には同じくらいだということで、海外に行く人も多いらしいですね。
そういう意味では今日こんなに集まってくださったことも含めて、好奇心の多い方が育まれるすばらしい環境だということが、なんとなく肌感覚としてあります。初めて来た街ながらもこんなに集まってくださって嬉しいなと思っています。

去年の秋にTOTOギャラリー・間という建築専門のギャラリーと、東京オペラシティ アートギャラリーの二会場で初の展覧会を開催し、それを福岡でやってくださるというお話をいただきました。

東京で開催した展覧会から、このアルティアムという会場に合わせて、展覧会を通して何を強く伝えたいかを再考し、「Image & Imagination」をテーマに、「物事を見てイメージすること」と「そこからより遠くへ想像力を働かせてつくっていくこと」を建築を通してやっていこうと構成しました。

展覧会は一回終わってしまうと再現は不可能なものだと思っています。その場所でしかできないことや体験できないこと、それを見る前と見た後とで、価値観に変化が生まれるような強いものをどうにか伝えたいという想いがあって。会場内の三つの部屋は異なる構成ながら、でもそれがひとつの建築、ひとつの建築家として形にできることを表現してみようと思いました。限られたスペースですが、濃密な体験が伝われば良いなという思いでやっていました。
たった三つの部屋でありながら、それぞれでまったく違う世界観と空間体験を、どうにかつくれたかなと思っています。
最初の部屋はイメージという二次元の表現で、真ん中の部屋では様々なプロジェクトの模型、奥の映像の部屋は光だけで出来上がった空間です。まったく異なる素材を使って、三つの会場をつくってみたので、そのアプローチの違いもぜひ楽しんでいただけたらと思います。

こちらのギャラリーは、一回チケットを買えば会期中何回来ても良いということなので、毎回来るたびに見えるものや伝わるものが変わってくるぐらい密度の濃い空間を体験しに、ぜひまた足を運んでくださると嬉しいなと思っています。ありがとうございました。

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「未来の記憶」をテーマに、三つの部屋を通して、イメージからイマジネーションへと飛躍していくプロセスをお楽しみください。
会期は3/10(日)まで。2/19(火)、2/20(水)は休館日です。ご注意くださいませ。
ご来場、お待ちしております。

【展覧会ページ】
田根 剛|未来の記憶
Archaeology of the FutureーImage & Imagination

2019/1/19 − 3/10

krank marcello ぼくらはいつのまにか 虹にさわれないことをおぼえていた

感想帳+作品紹介

好評開催中の本展、会期も残りわずかです。会場に設置している感想帳から来場者の声と、展示作品について紹介します。

・お店とはまた一味違った物語が見られて楽しかったです。お店にまた行きたくなりました。

・素敵な世界、時間をありがとうございます!ふと、ひとつひとつのタイトルと文章を読み、あらためて作品を見ると心の中にあった、なつかしい何かをたくさん思い出しました。また少し時間をおいて、見に来ようと思います。

・ 小さい頃、虹が出るたびに、虹の根っこまで行ったら触れる!と心から信じていたことを思い出しました。今回の展示を見て普段しまいがちな好奇心をもっと出していこうと思えたことや、いろんな感情があふれてきて、思わず涙がこぼれました。

・krank marcelloさんに加えて、haruka nakamuraさんや、tsumugiさんも参加されており、大好きな方の重なり合いで、とても素敵で居心地のいい展示でした。また何度も足を運びたいと思います。

・藤井さんの作品は初めてですが、素敵で感動しました!古くて新しくて、新鮮だけど懐かしい。寂しさと明るさと切なさとぬくもりと、たくさんのエッセンスが詰まった作品でした。また、音楽、照明、レイアウト、植物すべてが融合して生まれるハーモニーのようなものを感じました。

・ かげがでることをくふうしたり、おもしろいものがたくさんありました。お母さんが「こんなへやが自分のへやだといいな」と言っていました。

・ 大人になって何を忘れてしまったのだろうと思いながら、何かを思い出したくて来てみました。もう一度来ます。

・扉を開けて入りこんだ世界が、なんともなつかしく切なさを感じる空間で、思いがけずひとりいろいろなことに思いをはせるひとときとなりました。

・なんとなく見てみようと思って入ってみたのですが、すごく素敵で心が浄化され、童心を思い出しました。小さな繊細な気づきみたいなものがいっぱいに広がっていて、なつかしさを感じました。見れてよかったです!

・今日で5回目。少し展示内容が変わっていてまたいろいろと想像するのが楽しかったです。初めて娘と一緒に行けてよかった。馬から羽が生える映像を何度も見たり虹のボタンを何回も押してのぞきこんでいました。また来ます。

・北海道から来ました。来れて良かったです!とっても素敵で、帰るのが惜しい気持ち、ずっと居たい空間でした。これからも素敵なものをたくさんつくってください。

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会場では、ヴィンテージ家具と彫刻を組み合わせた作品や、光と影を用いたインスタレーションなど、約30点を展示しています。

「Mother」という作品では、光の大きさや角度、高さを変えて、一体の鹿から、タイトルにもある通り母と子のようなふたつの影が投影されます。ここにはいない母親が導いているかのような影に、いつも心に存在する大きくあたたかい相手のことを感じさせてくれるような作品です。藤井さんもお気に入りの作品とのこと。

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Mother

作品「祈り」では、動物が見上げる先に十字架の光が投影されています。一見どこかから十字型の光が照射されているかのようですが、実際は板に置いた鏡に当たった光が反射して映し出されたものです。作品の仕組みや仕掛けを考えながら見るのも楽しいです。

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祈り

ほかにも、一番制作時に苦労したと話されていた「最後に虹を描くボタン」では、水と光の屈折による本物の虹がこの装置のなかでご覧いただけます。こちらはぜひ会場でご覧くださいませ。

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最後に虹を描くボタン

会場の音楽を担当したharuka nakamuraさんや植物装飾を担当したtsumugiさんをはじめ、西浦裕太さん、samuloさん、rukaさん、zujo circusさんなどさまざまな分野で活躍する作家とのコラボレーションワークも展示。

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12/26(水)より一部展示替えをおこないました。一度来られた方も、ぜひ再入場できるチケットをご利用ください!
最終日1/14(月・祝)には藤井さんが来場する〈1日限定〉出張販売会もあります。貴重な機会にぜひお時間を合わせてお越しくださいませ。

【展覧会ページ】
krank marcello
ぼくらはいつのまにか 虹にさわれないことをおぼえていた

2018/11/23 − 2019/1/14

krank marcello ぼくらはいつのまにか 虹にさわれないことをおぼえていた

オープニングレセプション レポート

初日にkrank marcelloの藤井健一郎さん、輝彦さん、スタッフの皆さま、キュレーターの林綾野さんをお迎えし、開催したオープニングレセプションの模様をお届けします。本当にたくさんの方にご来場いただき、ありがとうございました。
(以下はオープニングレセプションでのトークを一部抜粋・編集したものです。)

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(アルティアム・安田)本日はオープニングレセプションにお越しくださり、誠にありがとうございます。会場にはkrank marcelloの皆さまに来ていただいております。
krank marcelloは、藤井健一郎さん、輝彦さんを中心に、福岡市警固のショップを拠点に活動されています。お客様の中にも、お店を訪れた方はたくさんいらっしゃるかと思います。

会場では、すてきな世界が目の前に広がっておりまして、本展はアートキッチンの林綾野さんにキュレーションを務めていただきました。krank marcello初の展覧会という形で、皆さまとこの空間を共有できますことを本当にうれしく思っております。
それでは、藤井健一郎さんの方からご挨拶をお願いいたします。

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(藤井健一郎さん)はじめまして。krank marcelloの藤井と申します。ここに並んでいるのは、この会場の制作をやった4人です。今日はこんなにたくさん来てくださって、ありがとうございます。感謝しています。

会場内には、作品が20数点並んでいて、一個一個メッセージと仕掛けとからくりがありますので、皆さんの心に残ってくれたらうれしいなと思っています。この会場に入って帰るまでに、ちょっとだけでも幸せな気持ちになってもらえたら何よりです。

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左から 林綾野さんと、krank marcelloの藤井健一郎さん、藤井輝彦さん、荒木忍さん、吉本康晃さん

中央にあるメインのオブジェを作ってくれたのは、tsumugiさんです。僕らがベルギーから見つけてきたヴィンテージのクリスマスオーナメントの鹿に、tsumugiさんが、木が生えているように植物で装飾してくれました。タイトルは「森の根」で、森の根っこの神様というイメージです。

表でケータリングを担当しているのは、料理家の広沢京子です。僕らがまだお店をはじめたばかりの16年前くらいに、東京に初めてお仕事で行った時、まったく誰も知らない中、彼女が色々なところに連れて行ってくれて。本当に僕らをバックアップしてくれた一人です。みんな、美味しいから食べて(笑)。

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撮影:吉本康晃(krank marcello)

会場で流れている音楽は、ミュージシャンのharuka nakamuraです。展示が決まった時に彼に最初にオファーして、このために書き下ろしてもらった「虹」という曲です。

 

(アートキッチン・林綾野さん)お店に行かれた方は皆さん感動されたと思うんですけど、本当にすばらしい空間で、この世界をもっと展示室のような大きな空間で表現してもらえたらなと、2年前くらいにご相談して、それからずっと構想をあたためてくださって。寝る時間も惜しんで、企画づくりから制作まで、スタッフの方々も、藤井さんも輝彦さんも本当にがんばってくださいました。すばらしい空間になって、うれしいなと思っています。

今日はたくさんの方々でにぎやかさを味わっていただいて、また度々足を運んでいただいて、この世界とそれぞれに対話していただけたらうれしいなと思います。

 

ご挨拶のあとも、展覧会や美味しいお食事を楽しまれていました。展示作品の中には、思わずわ〜っと声をあげてしまうような仕掛けがあるものも。また、COOK LUCKの広沢京子さんのお料理とドリンクも大変人気で、度々列ができるほどでした。
展覧会の会期は1/14(月・祝)まで。12/31(月)、1/1(火・祝)は休館日。ぜひ会場に足をお運びください!

【展覧会ページ】
krank marcello
ぼくらはいつのまにか 虹にさわれないことをおぼえていた

2018/11/23 − 2019/1/14

Local Prospects 4

アーティスト インタビュー

「この隔たりを」というテーマのもと、公募に挑み、作品を作り、そして展示を実現した3人のアーティストたち。それぞれ作品や制作背景、思いなどについて話をうかがいました。

取材・文:木下貴子(Fukuoka Art Tips)

01入口写真

●寺江圭一朗
《あなたの反応が私をつくる。私の行動があなたをつくる。》は、寺江が2016年8月から2018年1月にかけて研修制度で滞在していた中国・重慶市で出会った、ホームレスの青年との約1年にわたる交流を記録した映像と、二重露光の写真、青年が描いた絵画、作家によるテキストで構成される。

《あなたの反応が私をつくる。私の行動があなたをつくる。》2017-2018 展示風景

《あなたの反応が私をつくる。私の行動があなたをつくる。》2017-2018 展示風景

《あなたの反応が私をつくる。私の行動があなたをつくる。》2017-2018 展示風景

はじめは中国の再開発地域をもとに作品を作ろうと考えていたという寺江。「中国の問題点というか、古い建物を壊して新しいビルを建てているエリアがあって。全部壊されているなか、一つだけしぶとく居続けている宿があり、そこに泊めてもらうようになったんですよ。そのエリアを散策していたらアイデアでも出てくるかなって、1カ月ぐらい通っていたたなかで、ホームレスの彼を知ったんです」。

青年に初めて声をかける場面を映す《出会う》からはじまる記録映像は全10作。うち半数以上が、椅子を作ったり、絵を描いたり、トウモロコシを焼いて食べたりと、寺江が青年に何かを提案し、それを受けての青年の行動が映し出される。青年がホームレスになった理由や社会背景などには特に触れることなく、2人の交流の様子が淡々と流れる。「作品には使ってないけど『なんでホームレスになったか』とか『働かないの?』とか、一応聞いてはいるんですね。話はしたけど、あんまり……。僕が選んでいるんでしょうね。提案はたくさんして彼がやらなかったこともすごくいっぱいあったし、要は彼がやってもいいよってことだけでできています」。2人の会話は、当然ながら中国語だ。寺江による手書きの字幕は、寺江自身も分からない箇所があり、それらは謎の記号やぐちゃぐちゃっとした線で表されている。通訳も翻訳も介さない。「訳してもいいんだろうけど、僕にとってはあんまり意味がなかったんで。夢の絵を描いてもらった《夢》という作品は、帰る直前に撮影してつい最近編集したんですけど、まじでなに言っているかわかんなくて。あれ、なんでこれしゃべれてるんだろう、なに言ってるんだ、みたいな(笑)」。

過去に寺江は、韓国で見知らぬ人に韓国語でトイレ掃除をさせてほしいとお願いする作品なども作っているが、本作も言語を強く意識したのだろうか。「作品に表れているか分かりませんが、基本的に人って考えたりするときも言葉を使うと思うんですよ。すごく理想的な概念みたいなのってたくさん生みだされてはいるけど、便利な言葉が。たとえば『平和』とか。だけど頭で思いついてはいるけど、基本的にはそれができていない。せっかく思いついてはいるけどできないっていうのは、まだ言葉で考えることができないからだと僕は考えていて。言葉の扱い方というか、そういうのを更新できるようなことができたらもうちょっとマシな人間になるというか、僕自身も世の中の人々も。言葉についてはそういうことを考えています」。『この隔たりを』というテーマは、これまで寺江が考えてきた言葉に対する意識に近かったともいえるかもしれない。

会場奥には、本展覧会直前に重慶に渡り、青年と再会した時の様子を記したテキストが展示される。

04寺江
「僕の提案によって彼が何かやってくれたり、話をしてくれたりしたものがカメラに映る。彼の反応や僕に話しかけている雰囲気が、僕のイメージを作ってくれているっていうふうに最初は考えましたね。彼の映像を通して、鑑賞者には僕自身がどういう人かっていうのも見えるんじゃないかと思ったんですよ。あとは、僕は外国人で彼は中国人で、彼はホームレスで僕は美術やってる人でって、まったく違う2人で、でも彼の生き方みたいなものがそのまま僕の生き方みたいなものにも少し関係するようになってきていて。いまは。だからといって僕はホームレスにはならないと思うけど、具体的に作品として見えにくい部分で、彼が僕に影響を与えているということは確実にありますね」。映像ではタイトルの《私の行動があなたをつくる。》の部分を感じられたが、会場奥にあるテキストこそタイトル全体を表しているように思える。「確かに作品として示せているのは、これが一番そうかもしれません」。とても長いテキストだが、ぜひ会場で読み通してほしい。映像を見るだけよりも、本作の感じ方、捉え方がきっと異なるだろう。

寺江圭一朗

寺江圭一朗

 

●木浦奈津子
3面の壁に展示される13点の絵画。《うみ》あるいは《こうえん》と題されたこれらの作品は、木浦の生活圏内である鹿児島の風景を描いたものである。「書道のように描きたい」というはやく勢いのある線で簡潔に描かれた画面。特定の場所や時間、作家の心情をできる限り排除し、他者に開かれた風景画として提示される。

展示風景

展示風景

展示風景

「あまり絵を作り込みたくないというか、作り込むと嘘になるんじゃないかというのを昔からずっと思っています」。作り込まずに出せる方法として、はやく描く。作品は構図を決めて撮った写真を参考に、色も印象を変えずに描くという。「対象物をみた印象をそのままに。写真を撮った後に描くわけなので、その写真を撮った時の自然なまま、自分の感情を入れずに絵を描くためにもはやく描く方法が一番いいかなと。(時間をかけてしまうと)いろんなものが変化するし、自分自身も変化します。その変わっていくことのが嘘じゃないかなって感じたことがあって。自分の意識というよりも見たそのものを描いていくというところが大きいですかね。じゃあ写真でいいじゃんって思うんですけど(笑)。でもそれを絵画でやりたいと思っています」。個人的な場所を表す風景でもなく、心象風景でもなく、他者に向けて。木浦の描く風景画は、だからこそ見る者にとっては、そこが未知なる場所にもかかわらず、昔行ったことがあるような、あるいは夢の中で見たような、感覚を共有するような作品となるのではなかろうか。

風景に人が入った作品もある。「昔は景色だけだったんですが、意図的にというわけではないですけど、最近人が増えてきました。人にちょっと興味がでてきたのかもしれません。いままで風景がおもしろいなって思っていたんですが、人が風景に入っているのもおもしろいなって思えてきたのも大きいかもしれません」。ただ人とはいっても、人影のように描かれ、性別も年齢も判断できない。ここでもまた、特定のものが排除されている。

《うみ》2018

《うみ》2018

自分を出さないように、感情を入れ込まないように描く一方で、「自分となかなか切り離せないというか、結局は自分のフィルターを通して絵を描かざるをえません。そこに矛盾というか『隔たり』があります」。

木浦奈津子

木浦奈津子

Local Prospectsの公募に応募したのは、今回で3回目。「受かるまで出そうと思っていた」と胸の内を明かしてくれた。「アルティアムのように有名なギャラリーで作家を公募するという企画自体がめずらしくて。ずいぶん前ですが、別の公募展(※「For Rent! For Talent!」)も企画されていましたよね。その時に、アルティアムは地元の作家を後押ししてくれるようなところなんだと思い、何度か展覧会も見にきて、ここで展示したいなと思っていました」。もう一つ、Local Prospectsの公募選出が作品そのものではなく作品展示プランであったことも大きい。いくつもの作品を壁に展示して生まれる「空気感」を木浦はとても大切にするからだ。会場ではぜひこの「空気感」まであわせて、鑑賞してほしい。

会場風景

会場風景


●吉濱 翔

吉濱は新作と過去作で空間を構成した。映像はいずれも大きなスクリーンではなくタブレットを使用し、タブロイド紙のテキスト《僕は舟でゆこう》は前に1人掛けの小さなベンチを置き、座った目線でみられる高さにするなど、1つの作品と1人の観客が向き合う展示となっている。

会場風景

会場風景

はじめに展示される《魂のゆくえ》は、吉濱の知人女性が「マブイグミ」という沖縄の風習をおこなっているドキュメント映像作品だ。とにかく音のインパクトがすごい。「マブイグミ」とは身体から抜け落ちた魂(マブイ)をもう一度身体に込めるおまじないというが、小さい画面にもかかわらず映し出されたその場所に、まさに自分の魂が入りこんでいるような感覚にさえなる。「音がきれいでしょう。バイノーラル録音という方法で、360度音を拾って撮っています。僕がカメラをもち、僕が実際に聴いている音がそのまま入っているんで、距離とか位置とかが伝わるんです」。園児らの声がするシーンに至っては、つい振り向いてしまったほどリアルだ。「儀式をやってくれた(出演者の)彼女との関わりが重要な作品ですが、もう一つ、音に気持ちや時間を込めると聴こえ方が変わるのではないかということを試してみたかった作品です。石を川に投げるシーンがあるんですが、彼女にはその石を一週間もち続けてもらいました。石が川の水面に当たるとおそらくポチャンと鳴るんだろうけど、一週間もち続けた石だとその音の響きが違うんじゃないか、心まで響いてくるんじゃないかってことを音楽的に考えたんです。彼女には好きなように行動してもらいましたが、その石の演出だけはお願いしましたね」。

《魂のゆくえ》2014

《魂のゆくえ》2014

新作《寄り道しながらゆこう》は、吉濱が普天間基地移設問題に向き合うために高江に向ったプロジェクトだ。「僕は基地反対だけど、デモとか座りこみとかに参加するときに労働歌を歌ったりとか、みんなで『基地反対』とか声を揃えることに対してすごく居心地が悪くなって、デモの現場に行きたくなくなるんです。他に関わり方がないかなと自分なりに考えた答えが、じゃあいろんなものを挟んで現場に行こうって……。おいしいご飯食べて、海みて、観光して、友達とふつうのことしゃべってとかしつつ、北上して現場に近づくにつれてみんなの意識も現場に近づいていく。どんどん頭の中の割合を占めるようになってようやく、体も心も辺野古や高江にチャンネルを合わすことができるんじゃないか。そういう試みというか、アクションです。現場で見て、歴史を学ぼうとか戦争がどうとかいうのは自分一人では抱えきれないから、そういうのではなく、美味しい物食べて行った先にそういう問題があるという関わり方もあるんじゃないでしょうか」。プロジェクト実行時の記録映像ではなく、プロジェクト実施後にイメージとして作られた映像と、プロジェクトに関するメモや地図が展示される。

「僕にとって大事なのは現場性だったり即興性だったりするので、そうじゃないものを展示することになるので作品とはいいにくい。個人的な思い入れとか、記憶とか、体験とかを振り返って、じゃあそれをどうもっていくのか。今回は、見せるためにものを作って展示したというよりは、どちらかいうと日記のようなもので、個人的なものをこの期間だけちょっとお見せするというのがイメージとして近いですかね」と話す。その日記のような視点から、見えない(あるいは見たことのない)沖縄の一部が見えたように感じた。

吉濱 翔

吉濱 翔

 

●活動する地域、あるいは見つめる地域について
今年で4回目となるシリーズ展「Local Prospects」は、地域を見つめる多様な視点の創出を一つの継続するテーマに開催している。3人それぞれに活動する地域、あるいは見つめる地域についてどう捉えているか尋ねてみた。

寺江は東京在住だが、大学卒業後は福岡で活動を長く行い、現在も福岡市西区にアトリエを構えている。
寺江:僕にとっては、場所ってすごく大きくて。アトリエもそうです。たとえば一軒家をアトリエにしているのと、アパートをアトリエにしているのではできあがるものがまったく変わってきます。できることが変わるんで。というのと一緒で、たとえば福岡で作れるものと東京で作れるものって僕は絶対違うと思うから、そういう意味でいまのところ僕は福岡のアトリエは大事にしています。僕にとって福岡は、すごく作品を作るにはいい場所だと思っています。地域性も含めて。

大学時代から数年は離れたが、いままた故郷・鹿児島を拠点に活動する木浦。
木浦:私にとっては、制作がしやすいところが一番の場所。鹿児島じゃなくほかの県でもいいんですけど、何にも属していない自分が……何か理由があればいいんです。大学があるとか、会社があるとか、働いているとか。何の理由もないのにその土地に住む理由はないなと思っていて。鹿児島は生まれた土地なので、住む理由としては生まれた土地、育った土地っていうのがあるし、その場所を描いてもいい権利があるという気がしています。他の場所を描いていると負い目があるというか、その地域のことも知らないのに、私なんかが描いていいんだろうかと……。逆に自分の身近な場所だと、描く理由があるというか、描くときにストレスを感じないんです。

沖縄生まれの吉濱は、大学卒業後、京都、東京に住み、昨年ロンドンに一年間滞在。この春、沖縄へ戻った。
吉濱:最近移動していて思ったのが、どこの土地も似ていて、そこにどれだけ根付いて生活できるか、足を下ろせるかということです。京都には4年住んでいましたが、1年住んだら出るかもしれないとか思っていて、そうすると地に足がついた活動がまったくできなくて。地域の人たちと関わる場所に出向かないとか、顔なじみの店を作らないようにしようとかやってたら、どこにも観光にいけなかったし、お店も知れなかったし、結局作品も1つも作らなかったんです。ロンドンでも同じ現象が起きてしまったのも、自分がいつ出てもいい状況だったからの結果なのかと。だから今回沖縄に戻ってきて、いつまで住むのかは分からないんですけど、今度は覚悟をもって土地と関わろうかなって。そうしないと自分の土地にならないことがわかりました。生まれた場所だけど5年ほど離れていたので、沖縄ももう自分の手元にはない。扱いにくいというか、自分の場所がない場所になっていたので、過ごしやすく生活できる場所を作ろうと意識したのかもしれません。沖縄、九州、日本がというふうに場所で分けて考えるというのではなく、自分とその土地の関わり、つまり自分の問題なのかなという感じですね。

【展覧会ページ】
Local Prospects 4
この隔たりを

2018/10/27 − 11/18

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