藤森照信建築 と鸛庵

トークイベントレポート4

さて、いよいよ『藤森照信×ローランド・ハーゲンバーグ トークイベント』レポート(4)最終回です。レポート(1)レポート(2)レポート(3)とあわせてご覧ください。

藤森照信の最新作「鸛庵」について、藤森照信と創案者のローランド・ハーゲンバーグがお話ししました。

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▲本物の苔なので毎日、霧吹きしています。苔があると涼しく感じますね。

(以下はローランド・ハーゲンバーグのトークの内容を一部抜粋・編集したものです。)

(ローランド・ハーゲンバーグ)
私はローランド・ハーゲンバーグと申します。生まれはオーストリアのウィーンです。今日はライディング・プロジェクトについてお話したいと思います。
プロジェクトは3年前にオーストリアの小さな村で始まりました。この村は人口が800名程で、ウィーンの南、車で1時間くらいに位置しています。主な産業はワインと農業です。そしてこの村はフランツ・リストという有名な作曲家の生誕の地でもあり、音楽とワインで有名な所です。村の名前はライディングといい、オーストリアの東に位置していて15分ほど車でハンガリーに到着します。ブルゲンランド州は形が日本によく似ています。大きさは全然違って小さく、四国の1/5のサイズです。

そしてもう一つコウノトリの飛来する土地としても有名です。アフリカからライディングに4月にやって来て8月にアフリカに戻ります。その間、子育てを行います。渡り鳥の旅は危険にさらされることが多く、中には怪我をしたり、矢が刺さった状態で飛来する鳥もいます。コウノトリ専門の病院もある程です。100年の歴史をもつ巣もあります。地元の消防員が掃除を行っています。展示会場の映像に巣の掃除をしている消防員さんの姿もあります。

そして私たちのプロジェクトが始まりました。「鸛庵」の経緯をお話しします。藤森先生はいつも天高く建築を作られています。なぜあんなに高い建物をつくるのでしょうか。エキサイトな感覚や不安感が興奮させるのでしょうか。今までお聞きしたことはありませんでしたので、初めてお尋ねします!

(藤森照信)
そういうことを期待したわけではなく、作ったら揺れてしまったんです。ただ揺れ方には大変差があるということが分かって、ハンモック状の揺れはゆりかごのようで誰も嫌がりません。人間は生まれつきそういう感覚を身につけているんだと思います。台湾でロープで釣り下げている家(「空飛ぶ家」…会場内に模型を展示)が今年中には出来上がります。

(ローランド・ハーゲンバーグ)
藤森先生のやり方なのですが、作るときには地元の人たちも一緒に友達のように一緒にというのがテーマになっています。「鸛庵」のために村の人々全員が森に入って、木を選びました。

(藤森照信)
初めて外国で木を切りました。本当に驚いたことがあります。丘があって大量の木が生えていて、村人の誰かの土地のものなので、その人の許可があれば切っていいということになります。ところが村長さんにあの木を切りたいと言うとエスターハージィーというハプスブルグ家の流れの殿様(※現在はオーストリアの貴族制度は廃止)が大地主として全部取り仕切っているのです。殿様(今でもお城に住んでいる)にご挨拶に行ったら、ここは先祖が夕飯のときにハイドンが音楽を奏でてくれた部屋だと話してくれて、びっくりしました。ハプスブルグ家の流れをくんでいる人は今でも大きな力を持っているようです。その後、公共性があると認められて切ってもいいということになりました。

(ローランド・ハーゲンバーグ)
地元の人たちと集まって話し合いをしました。コウノトリの専門家にも来てもらい、アドバイスをいただきました。巣の大きさはどのくらいがいいのか、いつぐらいにくるのか、どんな巣を好むのか。とても興味深いことに何千年もの間、共存関係であり、良い関係を築いていたということです。コウノトリ自身は巣を作らなくなり、人間が用意をします。最後の仕上げだけをコウノトリがするという共存が何千年も続いています。コウノトリのための家を作りましたが、本当に来るかどうかは定かではありませんでした。半分ぐらいの人は来ないのではないかと言っていました。藤森先生は来ると思っていましたか?

(藤森照信)
来るとしても5~6年経って来るのではないかと思っていました。

(ローランド・ハーゲンバーグ)
そう思ってたことをいま初めて知りました…。

地元の友人、仲間たちと協力して作りましたが、偶然なのですが、オーストリアでも屋根は葦を使います。火災のとき危ないのではないかと聞かれますが、火がついたとしてもゆっくりで火が伝わるには2、3日かかるそうです。「鸛庵」が完成して、世界中の方が見に来ます。もちろん芸術作品としての意味もありますが、機能性も重視しています。機能性というのはもちろん使うことができるということを意味しています。先生が重視したのは内装です。とても自然でロマンチックで居心地がいいということです。そういうコンセプトなんですが、それと同時に現代的なトイレ、シャワーというアメニティーも備えていないといけません。でも人目につかないようになっています。モザイクには炭を使っています。このアイディアはどこからきたのでしょうか。そして、ドアがなぜこんなに小さいのでしょうか。

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▲貴重な資料や写真で鸛庵をご紹介。《スケッチブック》4冊は茅野美術館からお借りしました。藤森建築の発想の秘密を知ることができるかもしれません。

(藤森照信)
外壁は焼き杉を使っていて中でも炭を使いたいと思い、どうやろうかと考えていたのですが、日本でやってみるとなかなかうまくいきませんでした。ローランドさんがシーリングシリコンで付くんじゃないかというのですが、そんなこと聞いたことがありませんでした。やってみるとうまくくっ付いて、最初はこんなにやるつもりではなかったのですが、やり始めたら面白くて止まらなくなりました。
ドアについては、日本のにじり口の様式で小さくしましたが、法律でだめでした。日本の法律では廊下は60センチ、行き来するには120センチが必要ですが入口を狭くしようなんてと思う人がいないので制限はありません。こちらでは50センチにしたのですが、法律でだめだということで、ドアを別にもうひとつ作りました。ドイツ系の人たちの体系は大きいので、すごく小さく感じられるかもしれません。

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▲「鸛庵」内のインテリアやイベントの様子の写真を展示したスペース

日本での藤森建築の作り方をはじめてヨーロッパで試みた「鸛庵」。会場には現場の打ち合わせに使った図面などの生の資料を通して、やや現代離れした作り方とその成果を味わうことができます。「鸛庵」で使用されているインテリアなどもご紹介しています。
展覧会期最終日(5月25日)には本展プロデューサー/アーティストの ローランド・ハーゲンバーグによる展示プロジェクトの解説を行います!

【展覧会ページ】
藤森照信建築 と「鸛庵」
Storkhouse: The Architecture of Terunobu Fujimori

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