荒木経惟 左眼ノ恋

オープニングレセプション レポート

ただいま開催中の『荒木経惟 「左眼ノ恋」』にたくさんのご来場をいただいております。ありがとうございます。
大変お待たせしました。開催初日のオープニングレセプションレポートです。荒木さんご本人が都合により来場できなかったことは大変残念でしたが、たくさんのお客さまにお集まりいただき、本展に携わったキュレーター兼平彦太郎さんより、作品について丁寧にお話しいただきました。

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(以下はレセプションでの兼平さんのご挨拶を一部抜粋・編集したものです。)
この展覧会を企画させていただきました兼平と申します。本日はお越しいただいてありがとうございます。荒木さんがいらっしゃれればベストだったのですけれども諸事情により来れませんでしたので、私の方から作品や展覧会についてお話しさせていただきます。

まず、「左眼の恋(さがんのこい)」というタイトルは、エド・ファン・デア・エルスケンという写真家が1956年につくった「セーヌ左岸の恋(さがんのこい)」という写真集に荒木さんがインスピレーションを得てつけたものです。内容は荒木さんオリジナルのものですが、そういうエピソードがあります。
会場手前の空間にはモノクロの大きな作品、奥にはカラーの作品を展示しています。モノクロの作品は今年の3月に「新潮」という文芸雑誌の中で発表したものです。他の方たちは小説や文学を書いているのですが、荒木さんは文芸誌に写真作品を発表しました。見てお分かりになる通り、雑誌を見開いた状態のように右と左で分かれた写真になっています。既にご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、荒木さんは右眼の血栓が詰まってしまって見えなくなってしまいました。左側は実際見えている左眼のクリアーな今までの荒木さんの写真になっていて、右側はある日突然かげってしまった眼の視野、視界を表すような光のハレーションやフォーカスを外した写真を組み合わせています。荒木さんは常日頃、“エロスとタナトス”をテーマにしていて、それが人生であり、愛、写真だとおっしゃっていますが、この作品も1枚の平面の中に、そういった“エロスとタナトス”、“生と死”、“明と暗”という、相反して同居する人生というものが表現されているように思います。
少し技法的なことを申しますと、この作品は2枚別々に焼いた写真の真ん中をストレートにカットして繋げて1枚の平面としてフレーミングされています。一方でカラーの作品はポジの段階で1枚の写真の右半分を黒いマジックで塗りつぶして焼いています。黒くなっている部分をよく見ていただくと黒に塗りつぶされていながらもその下のカラーの光景が透けて見えているものもあります。同じように左右で分かれている作品ですが、カットしてコラージュした作品とポジに黒く塗った作品という違いもお楽しみいただけると思います。

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今回、カラーとモノクロの作品にあわせて、真ん中の空間に展示しているのは“天空”というポラロイド800枚からなる空の写真のインスタレーションです。こちらも皆さんにぜひ見ていただきたいということで展示をさせていただきました。なぜこの作品を皆さんに見ていただきたかったかと言いますと、荒木さんは陽子さんの死や、飼っていた猫のチロちゃんの死、自分の前立腺がん、そして震災という、メンタル面で落ち込むことがありました。でもその時々で荒木さんは向かってくる死に対して、生で立ち向かって、もう一回奮い立つのです。そういう時の作品には荒木さんらしい強さを感じられて、見る側にも元気や勇気を与えているのではないかと思います。陽子さんが亡くなった時に1番最初に撮ったのが空であり、チロちゃんが亡くなった後には遊んでいたベランダを初めて撮ったというエピソードがあります。今回写真家として眼が見えなくなった後も精力的に写真を撮り続けているという荒木さんの姿を象徴的に表す作品として、2002年に撮った古い作品で空の写真を展示させていただきました。この空の写真は、皆さんがよくご存知の緊縛や女性のヌード、花のエロティックな部分などの作品とは違う、荒木さんのセンチメンタルな部分、写真に対するノスタルジーな部分、荒木さんの揺れ動いている感情的な部分のようなもうひとつの一面、もうひとつの見方をご紹介できたらと思い、このような構成にさせていただきました。楽しんで見ていただけたらと思います。

 

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アルティアムでは今回で3回目の展示となります。今年はアラーキーイヤーと言われる程、展覧会が多く開催されています。
今回展示しているモノクロの写真は“新潮”で発表されたものですが、展示としては本展が世界初公開という貴重な機会と言えます。来月、パリで発表予定で先駆けての展示となりました。2人の有名人の写真もありますが、いつもと違う表情をしていて、TVなどで見るのとは違う別の一面もあるのだと気付かされてびっくりしました。また荒木さんらしさも失われていない作品です。

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タイトルの書についてよくご質問いただくのですが、荒木さんご本人が書かれたものをもとにしてつくっています。墨が飛び散った様子から力強さが感じられます。

 

【展覧会ページ】
荒木経惟 「左眼ノ恋」
Nobuyoshi Araki : Love on the Left Eye

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