「朗読とスライドの会」のレポート、最終回です。レポート(1)、レポート(2)もぜひお読みください。
第40回木村伊兵衛写真賞を受賞した『明星』のお話から。(谷川俊太郎さん(以下:T)と川島小鳥さん(以下:K)のお話しを一部抜粋・編集したものです。)
K 谷川さんには『明星』の帯に詩という形で書いてもらったんですけど。すごいなあと思います。
T これみんな買ってるのかな?
K いやみんな買っていないと思います。
T けしからん。じゃあ帯の詩を読もう。そしたら買ってくれるかもしれないじゃん。この裏表紙の人はどんな人?
K 高校生でした。性格はツンデレで冷たいときと優しいときの切り替えがあって優しくされたら冷たくされるみたいな感じで。
T ツンデレって何語ですか?今の若い人たちの言葉?(裏表紙を見て)これは雨?
K 雨です。
▲第40回木村伊兵衛写真賞を受賞した「明星」の表紙(左)と裏表紙。併設のアートショップ「ドットジー」で販売しています。
【帯の詩を朗読】
T 良い詩じゃーーん。こんな言葉が出てくるんですから、やっぱり小鳥さんの写真はすごいですよ。この写真を見たから、こういう言葉が出てきたんだから。
写真集の内容を知らせようとして少し説明的になっているかもしれませんね。もっと離れて書けたらもっと面白いかもしれませんけど。
K こんな素晴らしい詩はない。
T ある。
K ありますか?
T 今度はどんな写真集作るの?
K 何も考えていないです。
T いいですね。何も考えてないっていうのが1番大事ですよ。みんな考えすぎてるから。
K 考えられない。
T 今は考えられなくて、ぽこぽこっと考えられるようになるんじゃない?
K そうそうそうそう。谷川さんは次々にすごいですね。
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≪質問のコーナー≫
Q 一日の生活の中で一番幸せな時間やことってどういうことですか?大切にしている瞬間は?
K 良い写真が撮れた時です。あれ?寝る前とかってこと?
いえ。小鳥さんは良い写真が撮れたときだろうなと思いました。
T すぐに良い写真が撮れたってわかるの?現像する前に?
K 分かります。
T 現像してみてやっぱり良かったって思える?
K 思えるときと、「あ・・・」って言うときがあります。
T 僕は夜寝る時ですね。ベッドに入る瞬間が1番幸せ。
Q 二人がお互いに似ているなって思えること全然違うなって思えるところは?
T そういうのって言葉にしちゃうとつまんなくなっちゃうというか、違うものになっちゃうんですよね。ある人を好きになったりするのって、言葉の部分で好きになっているんじゃなくて、もっと深いところで気が合ったり合わなかったりするんだと思うんですよね。だからいいところっていえば、小鳥さんは私より若いところがいいと思うけど、そんなこと言ったってどうってことない。つまんないじゃない。写真って言っても面白くない。そういうことってもちろん関わりはあるんだけど、なんとなく“人となり”がいいっていうのが1番近いんですよね。僕の感じでいえば、1番の問題はその人の“人となり”だと思うんですけどね。でも今はみんな“人となり”を感じてくれないことが多くて、プラス情報とか意見とかにフォーカスしちゃうんですよね。だからちょっと深いところまでいかないなって感じがしますけどね。
K はぁ(ため息)。さっき谷川さんが言っていたことは、昔思っていたけど同じ考えの人がいないと思っていたので、今聞いて感動しました。違うところは谷川さんは一日一食しか食べないところです。
・・・あ、いま笑うところだったんですけど。
Q 50歳くらい離れた二人がなぜタッグを組んだのか?
T 「未来ちゃん」という写真集で小鳥さんを知ったんだけど、ナナロク社の人が小鳥さんの写真を見せてくれて写真の詩集を作りましょうとなりました。小鳥さんは僕の詩を読んでた?
K 読んでました。
T 小鳥さんとは面白くてずっと付き合っています。
何気ない会話から、二人の創作の秘密が聞けました。二人にとって、初めての共著となる作品集『おやすみ神たち』に収録された写真と詩を再構成し、本の世界を体験できる本展。改めて展覧会をゆっくり見返したくなりました。また新たな発見がありそうです。会期が残りわずかとなってきましたので、どうぞお見逃しなく。
【展覧会ページ】
川島小鳥+谷川俊太郎|おやすみ神たち