フクオカ × アニメーション スペシャルトーク vol.1 レポート

6月12日(金)に開催した関連イベント「フクオカ × アニメーション スペシャルトーク vol.1」レポートをお届けします。空気株式会社(KOO-KI)より、白川東一さん、告畑綾さんにお越しいただき、ご自身の作品やKOO-KIというクリエイティブ・スタジオについて、影響を受けたアニメーションなどに関してお話を伺いました。

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(以下はトークの内容を一部抜粋・編集したものです。聞き手:アルティアム笠井)

(白川さん)KOO-KIは福岡で映像を作っている会社です。設立から18年になる会社で現在25名のスタッフがいます。個性を持ったディレクターが数名いて、最近はインタラクティブの作品を作ることが多いのでプログラムに特化したディレクターもいますし、ドイツからやってきたディレクターもいます。
KOO-KIは『絶対に「オモシロイモノ」しか作りません。』というのがスローガンになっています。

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▲「Mr.shape」ほか、KOO-KIの映像作品をいくつかご紹介していただきました。

KOO-KIはいろんな表現の映像を作っていまして、他にも「めんたいぴりり」というドラマも作っていて、これは博多座で舞台化もされました。
Mr.shapeについては、百貨店のファミリーフロアのマスコットキャラクターになっています。それから、今日発売になった平野レミさんのキャラクターで“Mrs.remy”のLINEスタンプも作りました。
Mr.shapeはシンプルなキャラクターで丸と三角と四角で出来ています。子どもでも描けるようなシンプルなキャラクターで、親子のコミュニケーションツールというか絆を深めるために何か役立てることができないかと作ったキャラクターです。ずっとアニメーションやスマホアプリでの展開を行ってきましたが、商業施設での展開に発展しています。今後、新しいアプリも出ますし、どんどん広がっています。

———そもそもMr.shapeというのは誰かに頼まれて作ったということではないと思うのですが、生まれたいきさつをお聞かせください。

(白川さん)映像業界はハードな世界で体力・知力の限界まで削って作っていくという環境です。働いていて結婚をして子どもが出来たんですが、それまでと同じようにハードな仕事を続けていて、家族を養うためにそれまで以上にハードに仕事をしていたら、頑張れば頑張るほど家族との距離が離れていきました。本当は家族のために頑張ってきたのに矛盾した結果になっていて、このままではいかんと思いました。いろんな選択肢がある中で、自分にやれることってなんだろうと考えたときに、自分は映像を作っていてアニメーションが好きなので自分の子どもに対して胸を張ってこれはパパが作ったんだよ。という映像を作りたいと思って、Mr.shapeを作り、今に至ります。

———自分でゼロから作ったということで、クライアントがいる仕事と比べて制約がないわけですが、大変なこともあるし、面白いこともあると思います。表現としてここに拘っているというというところはありますか。

(白川さん)オリジナルを作っていて生みの苦しみってあると思うのですが、誰かに依頼されて作る作品ではなくて自ら生み出す作品は、社会人になると機会が少なくなってきます。広告の世界に18年くらいいますが、広告の世界というのはテーマがあり、クライアントから「今こういう状況だから」と依頼があって、それに対して「こういう風にしていこう」とか「こういう形にしよう」と決めていくわけです。それを常に千本ノックのようにやってきまして、いざオリジナルを作るというときには困りました。学生のときには思いがもっとあったのですが、そういうことに久しい事に気づいて、もう難しいことを考えるのはやめようと思いました。
Mr.shapeは子ども向けでもありますので、とにかくシンプルにすることにしましたが、チープに見えるのはよくないと思いました。どういうところに気をつけたかと言うと、例えばただの線だったとしてもそれがゆらゆら動いているとか、あえてフィルムノイズを入れてみたり、30秒の短いストーリーだったとしても必ずオチを入れます。それがどういうオチだったとしても、今までそうだと思っていたことが、そういう考えもあるんだという見る角度を変えると発見や驚きになるようなものを入れることで、シンプルなものでも訴えるものがあると思っています。

(告畑さん)アイディア勝負みたいなところがあるから、シンプルだと大変ではないですか?

(白川さん)はい大変ですね。大変なんですが、考えるのがもともと好きなんでしょうね。仕事じゃなくても、例えば看板を見たときに普通に読むとこうなんだけれど逆から読むとこういう発音になるということを普通に生活するなかで考えています。だから逆から読むとたまたま意味がでるということを発見したりして誰も気づいてないことに気づいたりします。そういう変な見え方や考え方が好きなんだと思います。そして、よく落書きをするのですが、そのときによくアイディアが出てきます。

©KOO-KI

©KOO-KI

———今日発売になったLINEスタンプなど平野レミさんとのコラボレーションはどうやって実現したのでしょうか?

(白川さん)これがありがたい話なのですが…Mr.shapeのアプリは、子どもたちが知っている身の回りにあるアイコンが出てきて、ピアノやトイレ、遊びながらいろんな発見があります。形や色、音などに触れることで、いろんな発見があって、楽しめるようになっています。このアプリを平野レミさんのお孫さんが気に入っているそうで、連絡があって、Mr.shapeのように楽しめるキャラクターを作りたいということでした。去年の11月にお話をいただいて、プロジェクトを進めています。Mrs.remyというキャラクターを作って、そのキャラクターで料理をテーマに子どもが楽しめるような展開を考えています。その第一弾がLINEスタンプです。

———Mr.shapeのように自分が作り出したものを見た人が、どんどん仕事を頼んでくるようになるというのはすごいことですよね。

(白川さん)そうですね、オリジナルを作る機会に恵まれて、できるだけシンプルにしようと作った作品が見てくれた人たちに受け入れられて。結果的にまた違う形、発展する形でもの作りができるという、もの作りをする人間にとっては本当にありがたい話です。

———オリジナルコンテンツを作ろうとした会社としての決断もすごいことだと思います。今後も力を入れていく分野なのでしょうか?

(白川さん)力を入れていくというよりも、KOO-KIをもの作りの会社として考えたときに、普段の仕事もすごく大事で、CMや映像の仕事も影響力を持ったものですので、そちらのほうもやっていきますし、一方で自分たちが発信できるようなもの作りもしっかりやっていきたいと思っています。そこのバランスを会社として作り上げることができれば強い会社になるのではないかと思います。

 

続けて、告畑さんの作品を上映しました。

☆「今村商店」(2011)…ASK?映像祭2011コンペティション部門大賞
☆「櫻本箒製作所」(2012)…映文連アワード2012準グランプリ、第16回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門審査委員会推薦作品。

©2012 AyaTsugehata / Tokyo University of the Arts

©2012 AyaTsugehata / Tokyo University of the Arts

(告畑さん)なかなか機会がないので久しぶりに上映することができて嬉しいです。ありがとうございます。東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻でアニメーションを学んでいたんですが、2年間で2つ作品を作りました。

———「櫻本箒製作所」のセットを今日はお持ちいただきました。大変貴重なものですよね。ドキュメンタリーを取り入れたパペットアニメーションを作っているということなのですが、どちらもモデルになっている方がいらっしゃるということですか。

(告畑さん)そうです。取材に行かせてもらって、家をメジャーで測らせてもらったり写真を撮ってきて、全部縮小して採寸しなおして物の配置も再現しています。実際にビデオを回したままをトレースのような形でアニメーションにしている箇所があります。例えば「今村商店」では、最後に真っ暗闇の中で箒を履くシーンがありますが、あのままの実写があって、音だけ実際の音を使って、新たに人形で作るという手法をとっています。

(白川さん)音を聞いているとライブで録っている感じですよね。演技している声じゃなくて、すごく自然に喋っている感じ。ライブで録った音や絵をベースにしてアニメーションを撮っている、トレースしているなんてすごいね!

(告畑さん)入りはドキュメンタリーを撮るというところからです。もっと前を言うと無意識に現れる人の仕草や癖が気になって、意識して観るアニメーションにしたらどういう見え方になるだろう?というところからです。

(白川さん)人間観察からのアニメーションでの表現ということですが、おばあさんの腰の曲がり方とかものすごい角度ですね。実際もあんな感じで曲がっているところまで表現しているんですね。

 (告畑さん)その人がどうやって生きてきたかというのが、家の中の物の配置とかにも表れていると思っていて、汚れた感じとかも。そういうところはパペットでしか表せないのかなと、こういった手法をとっています。

(白川さん)アニメーションの表現もすごいと思うし、ドキュメンタリーなのかアニメーションか分からないような感覚もすごい。
空気感というか、初めて見た時にアニメーションの完成度としていくつかそれを補うための方法があって、アニメの動き自体もそうだし、そもそもの設定もそうだけど、光というか空気感がいい。あれはどうやって照明をつくっているの?

(告畑さん)撮影をしている場所が藝大の映像研究科映画専攻とメディア専攻がある校舎だったのですが、そこの事務の方がもともとは映画の照明技師で、いまは引退されて事務をしているんです。その方と仲良くなって、私の作品を気に入ってくださって、照明をしていただくことになりました。ただ、自分がこの先一人でできなくなってしまうとまずいのではないかと思い、それからは自分で照明をやりました。

———NHKEテレで放送されているクレイアニメ作品「ニャッキ!」の制作者で東京藝術大学の伊藤有壱先生の研究室に告畑さんはいらっしゃったんですよね。

(白川さん)最後のクレジットはすごいですよね。そうそうたるメンバーで、最後に監督 告畑綾と出て、それらを引き連れた感じになってる!笑

(告畑さん)他の生徒もみんなそういう書き方になっているのですが、クレジットにあるように藝大の作品としても残るということもあり、クレジットの表記は、整っているかチェックを受けます。

(白川さん)最後はおばあさんはどうなったのでしょうか。ドキュメンタリーということですが。

(告畑さん)作品としてはいろんな受け取り方で私はいいと思っています。大事なのはその時間、空間があったという事実だと思っています。その人がどう生きてきたか。ということが大切です。

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———さて、お二人の作品について色々伺って参りました。今回は「東欧アニメーションの世界」展の関連イベントなのですが、東欧のアニメーションスタジオで課題になっていることの一つが後進の育成です。これはどのスタジオにも共通する課題ではないかと思いますが、KOO-KIさんにはたくさん若い方が入られているようですが、いかがでしょう。

(白川さん)告畑さんも今年4月に入社したばかりで、もう一人原口くん(急遽、前に呼ばれる)も新しく入ったメンバーです。彼もアニメーションが好きなので、今日呼びました。会社ではこの3人でチームになっていて、プロジェクトごとにメンバーは変わるのですが、この3人は日々の仕事や生活を気にし合う関係性です。僕はチューター的な役割で、仕事をしている背中から声をかけて様子をみて、彼らは仕事を学んでいる最中です。僕は彼らに教えつつも、実は僕も学んでいっているような関係で、お互いに高め合っています。後進の育成についてということなのですが、受けている側としてはどうなのか、聞いてみましょう。

(告畑さん)入ってまだ2ヶ月くらいしか経っていませんが、学ぶことがいっぱいありすぎて、そこまで考えが至っていません。ただ、本来なら自分から進んで聞いていかなければならないことも、KOO-KIではかなり教えていただいています。社会の中で、そういった会社はなかなかないのではないかと思います。こちらも気持ちよく学ぼうという気持ちになって、プラスの気持ちが生まれます。

(原口さん)すごくいろんな機会を与えてもらえています。KOO-KIは少人数でやっている会社で、白川さんが手が離せないことも多く、先方とのやり取りを頼まれたりというクライアントと直接話す機会がを与えられ、貴重な経験をさせてもらっていると感じています。

(白川さん)KOO-KIは年配のメンバーと若いメンバーががつっと分かれていて、中間層がいません。僕たちが若い子を入れていなかったので、このまま行くとヤバいぞということで今は若手をどんどん入れています。普通の会社だと僕と彼らとの間に中間がいると思います。それくらい年齢差があります。この1年の若手の様子を見ていると、みんなすごく成長しています。個人的にはゆっくりの成長の方が確実性があるというか打率は上がるとは思いますが、会社の中で急成長を求めている時期であり、そこは踏ん張っていかなければいけないなと会社を運営している側としては思います。あと1、2年もするとすごいメンバーになると思います。

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———アルティアムでは昨年「大空気展」を開催しましたが、展覧会をどういうものにするかという話し合いの中で若手に伝えたいことがあるんだというテーマがよく出てきていました。会社としての課題だったのでしょうか。

(白川さん)そうですね、会社の先を考えたときの最重要課題ですね。作りたいものを自分たちだけで作ればいいと昔は思っていましたが、たくさんの人たちにもっと作品を見てもらいたいと考えたときに映像そのものもそうですが、作り続けるということが大事だと思っていてそれこそがKOO-KIのブランドにも繋がっていくと考えています。

———最後に影響を受けた作家をお聞かせください。

(白川さん)ヨーロッパの人ではないのですが、レイ・ハリーハウゼンという人です。アメリカの特撮の方なのですが、アニメーションにまだ興味のない高校生くらいのときに父親がVHSのレンタルビデオを借りてきて、人形がコマ撮りで動いていて、人形もただの人形ではなくて、6本腕があるもので、それぞれ刀を持っていて、ものすごい戦いをしていて、戦っている相手は生身の人間です。どういうことかというと、最初にコマ撮りをしておいてその後で重ねて流しながらライブで実際の人間が戦っているという手法で、ものすごく衝撃を受けました。アニメーションというのは命を吹き込むという語源があるので、止まっているものに命を吹き込むというすばらしい手法だとそのときからアニメーションに興味を持ちました。

(告畑さん)学部のときに入ってすぐに観た「新世代チェコアニメーション」の中のヤン・ブベニーチェクという作家の作品がきっかけでコマ撮りのアニメーションに興味を持ちました。また、学部の時にある日、とある方から、「君は昔からあるようなものをなぜ作るんだ。昔にあるようなものとおなじようなアイディアで作って、なんの意味があるんだ」と言われて、自分のオリジナルを探さないとまずいのではないかと気がついて、過去や現代の色々な作品を観ました。その中にアダム・エリオットという作家がいて、「ハーヴィー・クランペット」や「メアリー&マックス」という作品でアヌシー国際アニメーション映画祭などで受賞している作家なのですが、粘土でできた人形で、裏のテーマにドキュメンタリーの要素があると思って、作品の発想としてはそこから影響を受けています。

(原口さん)僕は高校生の時までアニメーションには全然興味がなくて、高校のときには美術部でずっと絵を描いていたのですが、そのときに顧問の先生から、アルティアムで「ヤン・シュヴァンクマイエル」の展覧会があるから行くようにと言われて、初めてチェコアニメーションというものを知りました。アニメーション映画というのはエンターテイメント性が強いパペットやセルアニメのようなものを思っていたので、アニメーションのこんな形もあるんだと知って、そのときからアニメーションにすごく興味が出て調べまくりました。その後に影響を受けたのはシュヴァンクマイエルはもちろんなのですが、ユーリー・ノルシュテインとかかわいさの中に怖さがあるというのが、アニメーションの中にあるのだということに影響を受けました。今は自主制作からは少し遠ざかっていますが時間があれば、ああいうテイストのものを作りたいと思っています。

質疑応答です。

(質問)告畑さんの作品は独特の世界観があってすごいと思います。なぜこの題材を選んだのですか?「櫻本箒製作所」の作品は職人さんの息づかいが聞こえてきそうですが、技術的にこだわったところは?

(告畑さん)題材としては、小さい頃に遊びに行っていた場所でもあり、自分の記憶を辿るように題材を選んだと思います。小さいときに見た箒を編んでいたきれいな糸とか、並んでいるお菓子などは、私の中では宝箱のような感覚で鮮明に覚えています。箒を作るということについては、現在作っている人のところに取材に行かせてもらって、ずっとビデオをまわしてひたすら観ました。撮影に使った小道具の箒も本当に箒を作るやり方で作りました。映像の中でもその段取りが分かっていたからこそ、職人の息づかいを感じてもらえる要素に繋がっているのかもしれません。

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▲トーク終了後には、セットを近くで見せていただきました。細かいところまでこだわって作っていることがよく分かりました。貴重なものをありがとうございました!

 

福岡発のアニメーションに触れる機会をお届けする「フクオカ × アニメーション スペシャルトーク」vol.1のレポートはお楽しみいただけましたでしょうか。直接お話が聞ける貴重な機会ですので、お気軽にご参加ください。

vol.2(6月26日(金) 19:00〜)のゲストは、テレビコマーシャルやアニメーション等の映像制作、キャラクターデザインなど幅広く制作している福岡市のクリエイティブを牽引するデザインカンパニーhappyproject(ハッピープロジェクト)代表の田上キミノリ氏です。ユニークなキャラクターが印象的なCGアニメ「フルーティ侍」「パパンがパンダ!」をご存知の方も多いのではないでしょうか。制作の裏側も聞ける貴重なイベントとなります。詳細は→http://artium.jp/nandr/event/20150422_3416/

 

さて、展覧会期終了間近(6月28日(日)まで)となってきました。最終となる今週末にはイベントが盛り沢山です。どうぞお見逃しなく!

【展覧会ページ】
東欧アニメーションの世界
ーポーランド・チェコ・クロアチアー

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