KIGI EXHIBITION in FUKUOKA

クロージング・トーク レポート

最終日1/17にキギの二人が来場し、クロージング・トークとサイン会を行いました。
会期は終了しましたが、今回は最終日のレポートをお届けします♪トークの聞き手には、お二人と親しい間柄で、編集者の伊藤総研さんをお迎えしました。

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(以下はクロージング・トークを一部抜粋・編集したものです。)

ーKIKOFの成り立ち
(伊藤さん)
キギにとって「KIKOF」は意味の大きな作品群に思えるんですが、このシリーズは元々どういうきっかけで始まったんですか?

KIKOF(2014)  R.Uehara&Y.Watanabe

KIKOF(2014) R.Uehara&Y.Watanabe

(植原さん)6年くらい前に、立命館大学の佐藤典司先生と台湾のワークショップで一緒になったんです。そこで僕の作品を気に入ってくれて、東京で何か一緒にやろうという流れになりました。佐藤先生はMother Lake Products Project」(以下「MLPP」)というプロジェクトを滋賀で行われている方で、今、日本の伝統工芸の後継者問題がありますよね。滋賀県も琵琶湖の周りに職人さんが多くいらっしゃるんですが、同様にその問題で困っている方も多い。先生達はとにかく後継者を育てていきたいということで、「MLPP」という活動を始めたわけです。いろんな職人さんとクリエイターがチームでモノを作って、展覧会を行う活動を2年くらい続けていて、ある時、僕のことを(佐藤先生が)思い出してくれたようです。それで4年前に声を掛けていただいたのが始まりです。
職人さんは陶器、木工、麻、ちりめん、仏壇仏具、数珠など多岐に渡るのですが、一緒に何か作ってほしいと言われました。ただちょうどその頃、キギが立ち上がりで忙しくしていたので少し考える期間をもらって、依頼を受けてから1年半が経った頃に、そろそろやらなくちゃと。

(伊藤さん)やると言ったからにはね。

(植原さん)そうそう。それでデザインを提案したんですが、始めは「KIKOF」とは違うプロジェクトだったんです。

(伊藤さん)この「KIKOF」の形だった訳じゃなくて。

(植原さん)婚礼セットみたいな、セットで何十万みたいなものですね。

(渡邉さん)その時はバランスよく、どの職人さんとも共同して作ろうとしていたんです。

(伊藤さん)向こうの方が紹介してくれた全員とやりましょう、みたいな。

(植原さん)そうそう。でも何十万のものを作って、すごい富豪が買うような…。そういうものもあるかもしれないけど、これは続けていかなくちゃいけないプロジェクトだと思ったんです。それで一回提案して、賛同してもらって、二週間も経たないうちに自らこれはないなと考え直しました。それでもう一回コンセプトを考えよう、自分たちの得意なところを生かそうとした。僕らは元々グラフィックデザイン畑だったので、「紙で成形する」という制約の中での創作を考えてみたかった。それで紙を工作して、ポットの形を考えたわけです。

(伊藤さん)実際の紙で?

(植原さん)そう。「琵琶湖は日本の大きな器である」というコンセプトを立てて、器を作ろう。そういう流れで出来てきました。

(渡邉さん)全体のバランスを考える状況ではないと。まず一つ核を作って、それから他のものを作っていこうと方向をシフトした。それで、まず陶器に取り組もうということになったんだよね。

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(伊藤さん)でも滋賀県の信楽焼ですよね。デザイン的にも全然イメージが違うというか。おそらく(通常の)成形の仕方とも違うと思うんですけど、出来上がるまでの苦労というか、職人さんとのやりとりはどうだったんですか?

(植原さん)いろいろありましたねぇ。

(渡邉さん)今井さんという職人さんは、普段ろくろを使って陶器をつくっていて、「KIKOF」のような角張ったものは当然ろくろでは出来ないんですよね。なので、全く違う作り方をしなきゃいけない。ただ、「この新しいプロジェクトで、全くやったことがないことを試せて嬉しい」と言ってくださいました。それから、あとで「信楽焼にはないつくり方だけど、これを続けて20年経ったときには信楽焼で当たり前の技術になっているかもしれない」ということもおっしゃっていました。自分の窯だけじゃなくて、信楽焼全体のことも考えている人なので、信楽焼の存続の為にも新しい技術を開発してみたかったそうです。

(植原さん)みんないい人なんでね。

(渡邉さん)みなさん、何かを私たちに依頼して、これが売れなかったらどうしてくれるのみたいなことは全く思ってない。ただ将来のことを考えて、何か新しいことをしてみたいと思っている人たちなので、すぐ売れるということではなく、将来を見据えて、どう売るかを一緒に考えてくれる。チャレンジする人たちが揃っているので、やっていけていると思いますね。 


ーキギのお店「OUR FAVOURITE SHOP」について

(伊藤さん)最近のキギといえば、やはりお店(OUR FAVOURITE SHOP  以下「OFS」)ですかね?東京のどこにあるんでしたっけ。

(植原さん)港区白金です。(画像の)手前側がショップスペースで、奥がギャラリースペース。ショップでは、基本的に僕らがデザインした商品を置いていますが、それ以外にも薗部悦子さんという方のジュエリーを取り揃えています。ギャラリーは今のところ、僕らが企画した展覧会やイベントを行う目的でやっています。

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(伊藤さん)結構な頻度で、展覧会やイベントを行ってますよね。

(植原さん)7月にオープンしたんだけど、1月までに展覧会5回、イベントを4回ほど行っています。

(伊藤さん)お店を持つというのは別のフェーズに行ったんだな、と思いました。なぜお店を出したんですか?

(植原さん)元々は、完成した「KIKOF」のテーブルと椅子をどこに置くか、というところから始まりましたね。ただお店にいきなり営業に行って、家具を置かせて欲しいというのも大変ですよね。なかなか日本で、家具を積極的に売るお店は多くない。

(伊藤さん)まぁ、場所も取るしね。

(植原さん)積極的に売るお店は相当選んでいるから、いきなり営業に行って、じゃあ置きましょうという感じではない。じゃあ自分たちで売るしかないというふうになって、最初はショールームレベルでマンションの一室でもと探していたんだけど、たまたま今の物件が倉庫貸しをしていた。そこで交渉してみたら、倉庫貸しの値段のままで借りられることになって、そういうラッキーな流れで、そのまま「OFS」をつくることになりました。

(伊藤さん)お店ができてみて、良かったこと、発見とかありますか?

(植原さん)やっぱり、楽しいよね。

(渡邉さん)行く度にいいお店だなぁと植原がつぶやいている。(笑)植原は企画して展示方法を真剣に考えるのが本当に好きなんだなと思う。あとは告知も熱心だし、仕事が増えるんだけど、でもそういうことがすごく楽しいらしい。

(植原さん)やっぱり、グラフィックの仕事ってどうしてもクライアントさんがいて、発注されて仕事をもらってやるでしょう。プロダクトは自ら思いがあって、それを形にしていく。プライベートワークは、もっとその極端な例だよね。それでお店というのは、それらを「表現する場」だと思っている。プロダクトを作っても、あるお店に置かれたときに、その隣にある商品をお客さんはどうしても比べて見てしまうし、お店の内装との関係や値段の関係性で商品があるわけでしょう。だからお客さんの気持ちをキャッチするのは難しいと思っていました。でもお店をやるということは、それも全部プレゼンテーションできるので、そういった意味でお店がほしいと思ったというのが一つ。あと、お店というのは、最も社会に繋がるところだと思っています。プロダクトもそうで、プロダクトはお客さんが直接買う。でもグラフィックは、直接買わずに買うものをサポートする仕事。だから、ちょっと距離があるんです。「OFS」は、一番社会に近いところ。そこをまずやるというのが、大事だなと思ってます。

 

ーキギのこれから
(伊藤さん)「KIKOF」と「OFS」の話、二つ聞いてきたんだけど、二人はキギを立ち上げてから、現段階でグラフィックデザインとは違う領域にどんどん進んでいる気がします。デザインに対するスタンスも、変化や進化があるような気がするんですけど、二人は今どういった姿勢でものづくりをしてるんでしょうか?

(渡邉さん)例えば、洋服の「CACUMA」というブランドをほぼ日と一緒にやっているんですけど、「やったことがないから、やりません」というより、せっかくチャンスをいただいて自分にやりたい気持ちがあるならやってみるということ。「OFS」も自ら作ったわけだし、そういうふうにものづくりの広がるチャンスを掴んでいくという感じです。来るもの拒まずかな。そうすると少しずつ範囲が広がるし、やりたかったことができるかもしれない。これからも新たな話をいただいたとき、迷ったらやってみようと思っています。

(植原さん)僕は、クリエーションは全部繋がっていると思っています。グラフィックデザインならグラフィックデザイン、プロダクトデザインならプロダクトデザインと、分担しているのが今まで。これからは、デザイナーもひとつの世界観を作っていくという考え方が大事ですね。いわゆるブランディングの仕事が数年前から増えてきたんですけど、ブランディングができるということは、デザイナーも何かを興せるということですよね。それで、空間もモノも宣伝も自分たちで手掛けていきたいというふうになった。ブランド、メーカーとしての仕組みや人との繋がり、いろいろ自分たちで手掛けてみて、そこでひとつモデルを作ったら、またいろんな人のブランディングのお手伝いができるかなと。

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(伊藤さん)今までのグラフィックデザインと新しく取り組むことの「質」を気にして、普通の人だったら新しいフィールドに行きづらいと思うんですけど、その辺りはどうやって整理してますか?

(植原さん)それはどこで割り切るかですね。この展示もインテリアデザイナーを入れないで、自分たちで施工屋さんと直接決めたんですよ。プロからみると、甘いところはあると思うんですけど、僕らなりの答えは出ている気がします。それはグラフィックデザイナーだからこそできることだと思うし、その判断の軸を持っていると意外とぶれない。誰かのように仕上げるとなると、ぶれてくるんだろうけど、僕らは自分なりのコンセプトがあるので恥ずかしくないものができたと思っています。


デザインの一線で活躍するお二人の様々なお話。時代を読みながらものづくりと社会を繋げていくこと、納得のいく仕事をするために常に真摯に向き合っている姿が印象的でした。終了後のサイン会では、新刊3冊を持って並ぶ方で列ができる盛況ぶりでした。皆様、沢山のご参加、ありがとうございました♪

 

【展覧会ページ】
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