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会田誠+松蔭浩之トークレポート【その2】

5月1日のトーク、レポート第二回目の【その2】では、会田誠作品を初期から知る松蔭さんの分析、お二人の作品の傾向などについてのお話です。【その1】と合わせてお読みください。
(※本文は、本イベントのトークを一部抜粋・編集したものです。)

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(松蔭さん)今、若い人たちが作る作品はすごく説明が多くない?若い人だけじゃなくて、どの展覧会、美術館も作品解説がでかでかと貼ってあったりするよね。この作品は「こういう作品でこういうふうに作られたものだから、こういうふうに見て、こういうふうに感じますね」ということが貼り出してある。鑑賞自体が押し付けられているんだよね。みんな解説ばっかり読んで、ああそうかって納得してる。

(会田さん)でもそれは、日本も海外並みにグローバリズムの傾向が強くなってきたということかもしれない。昔の日本の美大の油絵科は「絵描きはあまり語るな、ただ手動かせ」という感じだった。それが最近、美大の教育現場でも「自分の作品は明確に説明できないとダメ」というふうになってきた。僕のロリコン的な作品も、日本だと「なんとなく分かるからあえて聞かない」ところまで海外の記者は聞いてくる。アートにおいて西洋中心の本場では、基本的に理屈で説明しないといけないので仕方ない一面はあります。でも世界でもトップのアーティストは、そこまで真面目に解説しないのではとも思えるので、僕もそんな姿勢でありたいと思っています。

(松蔭)作品解説も自分なりの考えにもとづいた姿勢なんですね。それから映画の話に戻りますけど、この映画の編集中に監督も想像していなかった3.11の東北の震災が起こったわけですよね。例えばこの作品の見え方は、3.11以降と3.11以前に見た人では感じ方が明らかに変わりますよね。《灰色の山》は予言的な絵とも言われたりするのではないかということだけど。

(会田)どうだろうね。僕は《紐育空爆之図(戦争画RETURNS)》でもそうですけど、不吉な、BADな状態のものを描くことが多いんです。だから予言が当たったと言っても、だいたい予言者は悪いことだけ言っているものだし、たいてい状況は必ず悪くなるから…。だから予知能力があるかというのは、もちろんゼロで、基本的に不吉なことを想像して覚悟しておいたほうがいいと思っているタイプです。そういう感覚は僕の作品の根底にあるかもしれない。ハッピーとか希望ももちろんこの世の2つに1つ、大切な面だと思うけど、ハッピーな絵はファンシーカラーを使って全体的に丸っこい形にすればハッピーになるのかなと単純に思ってしまうくらい、僕が得意じゃないジャンルなんです。

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《紐育空爆之図(戦争画RETURNS)》1996年
襖、蝶番、日本経済新聞、ホログラムペーパーにプリント・アウトしたCGを白黒コピー、
チャコールペン、水彩絵具、アクリル絵具、油性マーカー、事務用修正ホワイト、鉛筆、その他(六曲一隻屏風) 174×382cm
零戦CG制作:松橋睦生 高橋コレクション 撮影:長塚秀人
(c) AIDA Makoto Courtesy Mizuma Art Gallery

 

(松蔭)今回のアルティアムの展示では、会場入ってすぐに奈良美智さんの作品《Cosmic》が展示されています。奈良さんの作品もハッピーだけがテーマではないと思うんですけど、だけどやっぱり見るとほっこりとした気持ちになりますね。

(会田)対して僕の絵は、人が沢山死んでいるとかモチーフを多く描き込んでいるものが多いよね。

(松蔭)そうそう。《紐育空爆之図(戦争画RETURNS)》も無数の零戦を描いているし、裸の女性が無数に描かれた《ジューサーミキサー》も、今回展示している《灰色の山》もそうだよね。

 

《ジューサーミキサー》2001年 キャンバス、アクリル絵具 290×210.5cm 高橋コレクション 撮影:木奥恵三 (c) AIDA Makoto Courtesy Mizuma Art Gallery

《ジューサーミキサー》2001年
キャンバス、アクリル絵具 290×210.5cm
高橋コレクション 撮影:木奥恵三
(c) AIDA Makoto Courtesy Mizuma Art Gallery

 

(会田)言われてみたら確かにそうだなと思います。奈良美智さんは、絵の中心に人間ひとりをどーんと描くことが多いですよね。

(松蔭)どーんと、ワンモチーフですね。

(会田)奈良さんは基本的に一つの絵に2人の人物が描かれることがほぼない。幾つかレパートリーがあったとしてもほぼ1人。特に最近は、人物も正面向きでほとんどポーズがないことが多いよね。あれは無意識/意識的の両方なんだろうけど、おそらく奈良さんは「パーソナル(個人の個性、個人的な資質)」を描くのが好きだし、それを大事にしている人なんでしょう。そして、おそらく僕はパーソナルを表現するのが不得意で、俯瞰的な視点で表現するのが得意な方なんです。これはあくまで想像上でのお話ですけど。

(松蔭)神の目線とまではいかないけど、常に俯瞰で見ることを意識しているってことですね。

(会田)一人一人の個性を見ずに「集団」での人間の在り方から物事を捉えるのが癖ですね。多分そこらへんで奈良さんと僕は、あるところでは水と油なんだろうと思いましたね。

(松蔭)これに近い例で、同じミヅマアートギャラリー所属の山口晃くんの絵画作品も俯瞰ですね。「鳥瞰図」というんですか。

(会田)どっちかっていうと僕は山口くんの方に近いかもしれない。そういうタイプ分けで言えば、松蔭くんはパーソナルに迫る奈良さんタイプかな。

(松蔭)オレは奈良さんの方だね。写真撮るときも、その人の個性を出そうと思っているから人数が多い集合写真が嫌なんだよね。やっぱり一対一じゃないと。前にバンドの写真を撮った時もメンバーの身長が違ったりして、どの人の個性を引き立たせればいいかとか、なかなか集中できない。だから話を聞いていて、奈良さんタイプなのかなって思ったね。

(会田)震災が起きて、表現者がそれに向き合う時も、アーティストの素質によって方向性が違います。遺族なり個人にフォーカスするタイプと、未曾有の災害が起きたという、地球レベルで繰り返される自然災害を引いて見るタイプがあって、僕はどうしても後者になっちゃう。僕の作品はそういう意味では客観的で冷たいと捉えられるのかもしれない。

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お二人に作品についての分析や想いを語っていただきました。続いて【その3】では、アルティアムでお二人が個展を行った1999年、2000年当時を振り返ってのお話です。

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