伊藤隆介のフィルム・スタディーズ

ゴールデン洋画トークレポート【その2】

作家の伊藤隆介さんに加え、澤隆志(映像作家・キュレーター)さんと工藤健志(青森県立美術館学芸主幹)さんをお招きし、開催した「ゴールデン洋画トーク」。レポート第二回目は、映画のタイトルが次々と出てくる内容となっています!ぜひ、【その1】と合わせてお読みください。ループする美術とテーマパーク、眠れない子どもの空想力など、興味深いお話が続きます!(※本文は、本イベントのトークを一部抜粋・編集したものです。)

(澤さん)次の作品も引き続き「Realistic Virtuality」シリーズで、タイトルは《定期便》ですね。この旅客機のイスは、3Dプリンターで作ったとかではなくて、一つ一つパーツを組み立てて作ったっていうことですが。

(伊藤さん)パーツはレーザーカッターでの製作です。でも、使ったことがないくせに、新テクノロジーに頼ると大変なことになるんですね。部品を切り取ったそばから、小さいパーツは、ゴミの吸引装置に吸い込まれていったという(笑)。

(澤さん)パニック映画じゃないですか(笑)。

《定期便》のセット

《定期便》のセット

(澤さん)映画「エアポートシリーズ」なんかもスタジオはこういうセットだったんですかね。

(伊藤さん)こういうことでしょうね。映画「エアポートシリーズ」で僕が熱中して見たのは、パート2にあたる「エアポート’75」です。操縦していた人が心臓発作を起こしたセスナが、ジャンボジェット機の操縦席にぶつかるっていうストーリーで。ないですよ、それは(笑)っていう映画なんです。機長、パイロット、頼れる人たちがみんな死んじゃって、スチュワーデスさんが通信しながら操縦して戻れるかっていうお話です。

映画は博打なので、10テイク撮って、1回でもうまくいけばOKなんですよ。1テイクで、特撮でも役者さんでもNGがなかったらOK。できなければ10回やるんです。この「Realistic Virtuality」シリーズと映画を比べてみると、映画の場合は1回うまくいけばいいんですが、美術作品の場合って繰り返さないといけないんです。1回だけで止まっちゃう展示だと、それはパフォーマンスのアートになってしまう。だから、飛行機が飛ぶ、揺れている、墜落するっていうのだと、映画になっちゃう。美術作品では、墜落しても、もう一回それを繰り返すとかっていうことになってないといけない。

(澤さん)ループ?

(伊藤さん)ループですね。ループを利用している体系って何かっていうと、テーマパークってそうですよね。映画のシーンを作ってるんですけど、それは繰り返しの都合で作ってる。

(澤さん)伊藤さんの場合は、いわゆるDVDプレーヤーとかハードディスクでループ再生するんじゃなくて、ループ再生してるかのような映像をクランクなんかを使って歯車的に機械でやっちゃってますよね。

(伊藤さん)そうですね。それと、クランクなんかの機構も見えた方が面白いっていう人がいまして。今回は結構クランクを見せて動かしてますね。

(澤さん)伊藤さんの作品は、必ず何かしらが動いてるんですよね。カメラ自体が動いてたり、カメラは固定してるけど対象物がぐるぐる回ってたりして。この作品も、すごく単純な回転が、こういう複雑な動きになるっていう。それにしても、酔うなぁ(笑)。

(工藤さん)ずっと見ていたら本当に酔っちゃいますね。今改めて思ったのですが、最近は精神にきついダメージを与える映画って少ないなあと。この時代の映画って視覚を越えて心に直接傷をつけるものばかりでしたよね。そんな記憶が呼び覚まされて、帰りの飛行機に乗るのが怖くなってきました。

次はこの二ついきましょうか。

(伊藤さん)この作品は、《ドメスティック・アクシデント1》と《ドメスティック・アクシデント2》です。「家庭内事故」というタイトル。

(澤さん)良いタイトル付けたなぁ。

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(伊藤さん)こちらはブライアン・デ・パルマの出世作「キャリー」で、リメイクもされてる作品です。学校で目立たなくていじめられてる女の子が、実は超能力者で。女の子にはシングルマザーのお母さんがいて、その人がすごい狂信的なキリスト教のカルト集団に入っているようなお母さんで、歪んだ教育を受けてる。娘はティーンエイジャーだから、お母さんのことを愛しているけど、お母さんの言う通りに生きてたら、人生大変なことになっちゃうと。娘とお母さんとの愛憎を描いているようなところがあるんですけど、最後は恐ろしい惨劇が起きちゃうんです。学校でも家庭でも。その中で、超能力で包丁が飛んだりするんですね。その包丁が飛んでるシーンにインスピレーションを得た作品です。包丁が飛んだりするとやっぱり面白い。面白いっていうか、その(笑)。

(一同)笑。

(伊藤さん)とても映画的なんですよね。撮影はピアノ線で包丁を吊って、それをカメラの前でヒューって振ってるだけ(笑)。包丁が飛ぶシーンは、15~20秒に3秒くらいのカットが5~6カット入るだけなんですよ。ただ、このシーンがあるのとないのとでは、超能力感が違う。包丁が飛んでくるのが象徴的なんだなぁというふうに思って、こういう作品を作ってみました。

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《ドメスティック・アクシデント2》のセット

(澤さん)背景の壁紙とかかわいいですよねぇ。

(伊藤さん)はい。これは千代紙っていうか壁紙で。後ろが花畑っていうか花柄のところを包丁が飛んでくる。

(澤さん)これ処女性を強調してる。

(伊藤さん)はいはい。そうですね。

(工藤さん)原作は、これスティーヴン・キング。ご覧になった方も多いと思いますけど、いい映画ですよね。

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(伊藤さん)「エクソシスト」っていうホラー映画がありまして、リンダ・ブレア演じる女の子に悪霊が乗り移ってしまって、いろいろ超常現象が起きる。エクソシストっていう祈祷師の人たちが、少女を助けられるかって映画。今見ると地味なんですけど、女の子が空中に浮かんだりとか首が180度回ったりとか、いろんな恐ろしいことが起きるんですね。そこからインスピレーションを得た作品です。こんな派手には飛ばないんですけど、夜ベッドが飛んで、っていう作品になってます。

実は僕、小学生の時に夜眠れなくなっちゃう子だったんですよ。怖い映画の予告なんて全然ダメで、見ると全く眠れなかった。映画を見てる時じゃなくても、核戦争が起きたらどうなるんだろうとか、いろんなことを子どもは悩まなくちゃいけないんで、それで眠れないっていうパターンでしたね。ところが面白いのは、映画の作品って眠れない子どもが多いんですよ。古いのは、アニメーションの元祖のウィンザー・マッケイの「リトル・ニモ」っていう漫画ですね。高畑勲さんたちが日本でもアニメ化した作品です。夜、子どもが眠れなくて、ベッドの上でいろんな冒険が起きるっていう作品ですね。それから、テリー・ギリアムの出世作「バンデットQ」って映画もやっぱり眠れない子どもが出てくる。ポスターも会場に貼ってあるんですけど、ディズニーの子ども向け映画「ベッドかざりとほうき」もベッドから始まる。その変形として、「ナルニア国物語」とかでは、戸棚に入っていくんですね。

スタートは「エクソシスト」で始まったんですけど、作ってるうちに、子どもの不安と空想力の作品になったっていう、ちょっとかわいらしい感じの作品です。

トークレポートは第3回以降に続きます!

【展覧会ページ】
天神洋画劇場
伊藤隆介の「フィルム・スタディーズ」

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