伊藤隆介のフィルム・スタディーズ

ゴールデン洋画トークレポート【その3】

レポートも後半戦の第3回目です!今回ご紹介するのはトーク中盤、伊藤さんの独壇場状態の時間帯のレポートです!【その1】【その2】もぜひ合わせてお読みください。
(※本文は、本イベントのトークを一部抜粋・編集したものです。)

(伊藤さん)こちらは、《コーネリアスのための映写機 PARTⅡ》です。映画は19世紀の終わりに発明されたものですけど、自転車の歴史も同じく19世紀に始まっているので結構新しいですよね。パーソナルな空想力とか移動の自由、どちらも個人主義の台頭が背景にあると思うんです。この作品では、それらを比較しています。
手動の映写機みたいな作品はこれまでも作ってました。そこに2011年に震災がありまして、電力の問題とかクロースアップされるようになりましたよね。
映画の場合は、本当に電気がないと、撮影も上映もできないんです。さらに、フィルム現像では化学薬品、鉱物資源を使って、地球を汚していく原罪があるっていうところがある。じゃあ、映画のフィルムはもういっぱいあるから、電気も薬品も使わないで映画を見る未来のシステムを作ってみたらどうかなと考えて作った、ある意味で革新的な発明です。タイトルの「コーネリアス」は、映画「猿の惑星」に出てくる科学者の名前です。主人公のチャールトン・ヘストンを助けるんですけど、ちょっと意気地が無い科学者で、フィアンセの女性科学者ジーラの方が勇気がある。

(澤さん)「猿の惑星」を吹き替え版で見ると、いつもコーネリアスってチャラい感じがして(笑)。あれがいい味出してますよね。

(伊藤さん)そうそう。とにかく情けない。「スター・ウォーズ」でいうC-3POみたいな。TV版の声優は、植木等さん(役名はゲイラン)がやっていましたからね。CIMG7857

(伊藤さん)この作品では、人間が滅びたあと、猿が人間の文化を継承して生きてるけど、フィルムだけはどう使っていいか分からない。映写機だけが発見されない中で、いろんな猿の科学者が、人間が置いていった自転車とか、カーペットのコロコロとか、そういうものを駆使して、映画を見る装置を作って、人間の文化を継承しようとしてるっていうことなんです。

(澤さん)車輪の下のこれ、バナナ?(笑)

(伊藤さん)そうです。それはお弁当。

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特別に作品に乗って実演してくれた伊藤さん


(工藤さん)
じゃあ、次はこちらにどうぞ。

(伊藤さん)これは、最近始めたシリーズで、《涅槃に入る》という作品です。ここに仏像と安楽椅子がありまして、勝新太郎が出てる「釈迦」っていう大映の映画があるんですけど、仏像に投影される「釈迦」を見て、悟りを開いてもらうっていう作品です。

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置いてある椅子は、国際様式の近代を代表する椅子のシリーズの一つ(ミース・ファン・デル・ローエ作)なんです。
大映の映画って、高度成長の時に、日本の映画産業が洋画のスタンダードに近づくためにやってる映画という感じなんですよね。大リーグに行った日本の選手みたいな感じですよね。それらを組み合わせて作った作品です。

(澤さん)これは、ナム・ジュン・パイクの「TV仏陀」と関係はないんですか?

(伊藤さん)それのオマージュでもありますね。

 

(澤さん)さて、いよいよ最後のブロックに大波と大火事がみえますが、これらの構成も含めて説明してもらった方がいいかなと。

(伊藤さん)両面に見えるのが《ヘストンの海》っていう作品です。大作映画「十戒」で、モーゼ役のチャールトン・ヘストンが、ユル・ブリンナー演じるラメセスに追い詰められた時に、紅海がわっと割れて脱出していくシーンのオマージュです。

 

《ヘストンの海》の一部

《ヘストンの海》の一部


ここを通って次の部屋に行くんですが、両側のスペースはプロジェクターのブースになってます。実はその中も覗ける形になってます。向かって右側の方が、《渚にて》の部屋。「渚にて」という映画や原作小説が冷戦構造の話なんで、海辺にまつわるものだけではなく、核戦争に関わるポスターがいっぱい貼ってあります。

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左側のタイトルは《紙の砦》で、手塚治虫先生の作品から取りました。英語タイトルは「This must be the place」で、トーキングヘッズの曲から取っているんですが、オリバー・ストーン監督の映画「ウォール街」と、続編「ウォール・ストリート」のテーマ曲になっています。ここは、そのウォール街の世界をイメージしています。

この二つは特に映像の仕掛けはない、空間構成の作品になってます。

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作品という形ではないのですが、インスタレーションで映像が投影されている壁の裏の造作をどうするかって考えたんですね。普通の美術展は、きちっと裏側も板を貼って塗装します。でも今回はテーマが映画なんで、映画のスタジオ同様に、作りものの裏側が見えた方がいいでしょうってことで、ベニヤの板のまんまにしてます。昔は町のあちこちにベニヤが貼ってあって、そこに野立て看板として映画のポスターが貼られてましたよね。2週間にいっぺんくらい映画変わりますから、そこが貼り替えてく。今はあんまりないですよね?その野立て看板でよく見たような、70年代、新しくても80年代くらいの、今回テーマになってる作品の宣伝を見てもらおうと貼っています。

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トークレポートはいよいよ最終回・第4回に続きます!

【展覧会ページ】
天神洋画劇場
伊藤隆介の「フィルム・スタディーズ」

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