都築響一&フジトミタクミ presents

僕的九州遺産展・記念イベント My private Kyushu Night レポート【その2】

10月16日に開催した都築響一&フジトミタクミpresents 「僕的九州遺産」展・記念イベント「My private Kyushu Night 」のレポート【その2】です。1回目も合わせてご一読ください。惜しくも展覧会では出せなかった取材先について触れていきます。当日は満員のお客様で賑わいました!

CIMG9532

◆惜しくも出せなかった取材先の話へ。福岡県「鯉とりまあしゃん」

さて、今回出したかったけど出せなかったネタで、まず「鯉とりまあしゃん」という田主丸の偉人についてですね。福岡県の田主丸は、カッパモチーフの駅があったりして、カッパで有名です。そして、昔、田主丸の川に鯉がいっぱいいて、鯉料理の店があったんですが、そこに「生きる河童」と呼ばれる、鯉取りの達人がいたわけです。平成までご存命だったんだけれども、もう伝説となってるんですね。鯉は普通釣るもの、網とかで引っ掛けて取るものだけど、まあしゃんの場合は、川に潜って、鯉を抱いて上がってくるんです。全然信じられないんですけど、まあしゃんに抱かれると鯉はおとなしくなるそうなんです(笑)。それで、開高健も見に行ったって言うし、色んな人が実際に見に行ったら、驚いてひっくり返ったそうで色んな人が文章に残してるんですよ。そういう偉人がくどいけど、博多じゃなくて、田主丸にいる。田主丸なんて行かないでしょ?普通は絶対。

でも、まあしゃんは両腕に二匹、口に一匹、三匹と鯉を抱えて上がってくるわけですよ。それもこんなでかいやつ。鯉がずっと、まあしゃんに静かに抱かれながら上がってきて、最後に船に投げ入れられる時になって初めて事態を察すると。鯉にとっては、とんでもない漁になってたわけですよ。そんな鯉とりまあしゃんの川魚料理のお店が田主丸にあるので、ぜひ明日にでも行っていただきたいわけです。天神にも支店があるんだけど、そこより本店に行った方がいいっていうのは、一階がお店で、二階が鯉とりまあしゃん資料館になってるわけです。魚拓とかまあしゃんの昔のグラビア記事とか、水中眼鏡とかグッズもいろいろあるわけですよ。

まあしゃんは、大正生まれで、85歳までお元気でいて、大正から昭和丸ごと、そして平成の世まで生きたんですね。それで、まあしゃんについて一番詳しく書き記していたのは、火野葦平(ひのあしへい)っていう小説家なんですが、この人もすごく面白い小説をいっぱい書いてるんですけども、九州の地元の作家なんですよ。若松市の一角に火野葦平の資料館があって、本人の書斎なんかもあるんです。この人、絵もすごく良くて屏風とか『花と竜』って有名な原作を作っていたので、そんな資料もあるんですね。でも若松すら皆さん行かないでしょうし、こんな話をしてもまだ信じてないと思われるので、この映像をお見せしたいと思います。まあしゃんを追いかけたTV番組のドキュメンタリーがあるんですよ。「伝説の生き河童 鯉とりまあしゃん」なんと1〜4まであるんです。大変なものなんですよ、生き河童は。

映像を見たら分かったと思いますけど、すごいですよね。超野生児っていうか風貌から分かると思いますが、野性的でモテるわけですよ。だけど、鯉を取るために川に入る三日前から女を絶つっていうのが彼の決まりだったんだって。それでやたらと肉を食い焚き火に当たるんだと。そうすると汗に脂が混じって、肉の油汗がダラダラ出てくる。そうやって川に入ると皮膚に膜ができて寒さをしのげるし、鯉が安心するらしいんだよね。不思議ですけど、こういう人が実際にいたんです。映像はYouTubeにありますから、みなさん詳しくはお家で見てくださいね。こういう人こそ無形文化財じゃないかと思うし、人間国宝にしてほしかったですが、大体みんな田主丸に行かないから知らないんだよね。この鯉とりまあしゃんも展覧会に入れたかったんですけど、ものを借りてくることができなかったので、断念したんです。でも、お店に鯉やうなぎを食べに行けば資料館でいろいろ見れるので、みなさんもぜひ行ってみてほしいと思います。

鯉の巣本店~鯉とりまあしゃん~Facebookページ

◆福岡県北九州市「ストリップ劇場」

それと小倉の話をしますと、駅前にストリップ劇場があって、変わった映画館がありますね。僕が撮影した時は、年中無休オールナイトになってましたが、年中無休のところに今はシールが貼られて白くなってるので、オールナイトは断念したと思われますね(笑)。ここはゲイ映画の映画館で、ゲイって言わずに「薔薇族映画館」と言っています。ゲイ映画を主に撮ってる会社が普通に存在するのがすごいですけども、一社だけ残ってて年間3〜4本新作を作ってるんですよ。薔薇族映画館も日本に今、三つしか残ってなくて、前は上野に有名なところがありましたが、そこもなくなり、今は横浜、広島、それから小倉なんですね。そして知ってる人は知ってると思いますが、小倉駅前のごちゃごちゃした一角は今、再開発をやってるんですよね。展覧会の準備中に、そろそろこの映画館も潰れるんじゃないかっていうガセネタが飛び交いまして、潰れるならどうしてもこの看板を僕は買い求めて、この展覧会に展示したいと思ったんです。でも聞いたらまだやってるということで断念したんです。でも、駅とストリップ劇場エリアを結ぶ古いビルは、今はもうなくて更地ですね。本当にあっという間にどんどんなくなっていくんです。

◆佐賀県「かっくんちゃん」

それはともかくとして、鯉とりまあしゃんのことを考える時、どうしてももう一人、追いかけたかった人がいるんです。僕にとって九州の重要な人物で、その人を紹介したいんです。知っている方もいると思うんですが、伝説のストリートミュージシャンで「かっくんちゃん」っていう人がいたんですよ。ちょうど大正2、3年の生まれなので、まあしゃんと同じ世代の人なんですけど、かっくんちゃん。この人です。

かっくんちゃん

今、写真が2、3枚残ってるだけなんだけど、この人は障がいを持っていて、要するにアウトサイダーのアーティストなんですね。どっちかの目が全然見えなくて、もう片方の目も弱視なので、あんまり目が見えないんです。いつも裸みたいな格好をして、三味線じゃなくて手作りみたいな弦が一本だけある楽器を弾いていたわけです。門付って分かります?家の前で弾いて、お恵みをもらうっていう門付芸人ですね、それをずっとやってた、戦争中とかにですよ。大正に生まれて、昭和のちょうど日本が戦争になった時期に、ずっと佐賀エリアをこうやって流してたわけですね。本人は180cmくらいで、当時としてはかなり大きくて、背中にすごい大きいこぶがあったんだって。本当に優しい人だったらしいんだけど、この人ものすごく面白い歌を即興でフリースタイルで歌ってた。歌を聴いてみんなが大笑いして、おにぎりを恵んでくれて、でも、この人はおにぎりをもらって、必ず一回地面に落として土をまぶしてから食べてたみたい。それで大地と一体になるという、彼なりの、かっくんちゃんのルールだったんですよね。

それがある時、多分タチの悪いイタズラだと思うんですけど、土に殺虫剤を入れたやつがいるらしくて、そのおにぎりを食べて死んじゃったってっていう噂があるんです。かっくんちゃんが死んだ時、その死を惜しむ声が多くて、当時地元紙にも「かっくんちゃん死す」みたいな記事が出たらしいんですね。地元テレビでも、かっくんちゃんを追うドキュメンタリー番組があったみたい。この人は今、九州の物好きが一番音源を探してる人ですね。もう20年くらい、いろんなテレビ局の人も追ってると思いますが、音源が一つもない。でも、年十年も門付をやってたわけだから、お年寄りなんてみんな知ってる人だったはずなんですよ。だけど一人も録音してなかった、新聞社、ラジオ、テレビ局ですらも。だから今探しても、もう誰も何もないっていうことが起こるんだよね、本当に。でも気になって、東京だと、ずっとウクレレをやってるゴンチチのチチ松村さんも、この人について随分書いてますけど、全員推測でしかものを書けないっていうことですごく勿体無い。こういう、みんな知っていた人なのに記録が残っていない、ということが実際に起こりえるんですよね。

珍日本紀行』より〜九州の知られざるスポットも。

結構、九州って宝庫だらけだと思うんだよ。だけど、どんどん壊されていって記録する人すらいない。もうちょっと、誰かちゃんと行っておいても良かったんじゃないかっていうことがあるわけ。だから、本当に地元を愛さない土地柄で、外から見て面白さが分かるっていうのが、九州の一つの特徴かなと、今回、随分昔の、九州を取材したものを掘り起こしてみて、つくづく思いましたね。それこそ、20年くらい前から九州をちょこちょこ訪れてて『珍日本紀行』の頃は、まだフィルムの時代ですから、35ミリのコンパクトカメラから4×5の大きいカメラまで乗せて、車で来てたもんね。フィルムとかこっちで買えないものがあったし、飛行機で来れないので、車にありったけ荷物を積んで、途中一泊して。それを思うと楽になったもんだって感じですが、そうやって珍スポットを探したりしていましたね。

◆連載で始まった、九州のスナック巡り

それからもう一つ、数年前に、よく九州に来てたのはスナック巡りですね。一時「アサヒカメラ」というカメラ雑誌で、全国の「来夢来人」っていう名前のスナックを訪れるという無謀な連載をやってました。一説によると、スナックは全国で20万件くらいあって、スナックの中で一番多い名前が「来夢来人」らしいんですよ。それでスナックは地方文化を語る上で重要だから、スナックを見ることで日本が分かるって企画を立てたんですね。そしたら編集部も乗り気で、やりましょうという話になって、その中で九州も随分回ったんです。連載の途中で編集部は後悔して、何度もそろそろ…とかって言われたんですけど「いや、日本全国回るって約束だったでしょ」と言いながら、途中で編集長が3人くらい変わりながら、数年間連載しましたね。

◆大分県別府の「ヒットパレードクラブ」

それでここは知ってる人もいるでしょ。別府のど真ん中にある、とてつもない「ヒットパレードクラブ」っていうスナックというか、ライブハウスですね。すごいんですよ、ちゃんとロックンロールな感じの内装になってるし、ちゃんとステージがあって、夜な夜なバンドがいるわけです。今どきロックンロールですよ。フープスカートとか履いちゃって、ロックンロールナンバーをやると、おじさんおばさんが来て踊りまくってるわけ。中にはボーリングシャツとか着てるおっさんもいっぱいいるわけ。さらに、当時2012年なのに、お客さんからいただくリクエストが「君の瞳に恋してる」なんですよ。1962年くらいのナンバーだと思いますけど、50年前のロックンロールのエネルギーが別府にはまだあるんです。これってすごいですよね。

店内は、ちゃんと昔のディスコの伝統にならってバイキングコーナーもある。食べ放題で、どんどん食べれるご飯もあって、しかも飲み放題で、踊り放題。それで3500円くらいなので、絶対いいと思いますよ。実はここでトークをやりたいくらいだったんですが、店の周りが寂しい感じなので誰も来てくれないだろうと思って、止めました。でも、先代の社長が船村徹の甥御さんだったせいらしいんですけど、この店の二階が演歌の大先生の「船村徹資料館」になってて、そういうのもなぜかある。僕はタクシーで行きましたけど、周りは真っ暗で、何にもないですよ。でも入った瞬間、お客さんは大盛り上がりなわけ。みんなどうやって店までくるんだと思いますがね。

◆長崎県松浦の「来夢来人」で至福の時間

僕も仕事で、随分いろんなスナックに行きましたけど、これまででベスト3に入るスナックが長崎県の松浦にあります。有田まで行って、そこから松浦鉄道に乗り換えてずっと行ったところに「松浦」っていう海辺の町があって、そこは九州電力の火力発電所があることで知られてますけど、とにかく超ちっちゃい町です。夜は真っ暗で、はずれの海辺みたいなところに、ポツンと「来夢来人」っていう看板が灯ってたわけ。店は超いい感じの伝統的なスナックで、ママさんは、高島出身でいろんなところで働いた後、こっち戻ってきてスナックを始めて、もう30年くらい。

その店は店内にこたつがあるんです。僕もこたつスナックっていうのは初めてだった。手あみカバーもあって、完全に実家の感じでしょ。女の子に焼酎のお湯割り作ってもらって、こたつで美味しいもん食いながら、カラオケで歌うわけ。もうね、本当に極楽とはこのことでしょ。びっくりしましたね。日本人の居心地の良さを全て集めてますよね。酒と歌とこたつ、これさえあれば大抵あとはどうでもいいと。それで、格好もジャージでOKなわけ。常連の爺さんが歌うんだけど、僕が今まで聴いた中で一番音痴で何歌ってるかが、全然わからないんだけど、めっちゃ気持ちよさそうに歌うんだよね。僕はスナックで、音痴の人がすごく気持ちよさそうに歌うのが大好きで、いつかそのCDを出したいと思ってますね。うまく歌う必要はなくて、外して気持ちよく歌うっていうのは、アマチュアの一番の特権でしょ。別にいやらしく見てるんじゃなくて、そういうのって一番幸せのグルーヴが伝わってくるじゃない?爺さんは92歳なのに、毎晩来て、毎晩同じ歌を超下手に歌って、めっちゃ嬉しくて、毎晩泥酔して、周りに抱えられて家に帰る。幸せってこれでしょ?毎晩来て、みんな優しくて、楽しく歌って、酔っ払って寝る。起きたらまた次の日の「来夢来人」が待ってるわけだし、年金でOKだろうしさ。別に死ななくたって、ここにすでに彼岸があるって感じで、本当に素敵なことですね。しかも、ママさんは超おかんアーティストで、店はおかんアートだらけ。僕ももらって帰りましたけど、頼むとすぐくれる。しかもデュエットも当然うまい。松浦は冬になると牡蠣がとれるんだけど、「あなたちょっとお腹空いた?」って聞いて、「空いてません」って言ってるのに、いきなり牡蠣とか焼いてくれて、殻まで外してくれる。牡蠣がお通しって最高でしょ。酒、歌、こたつ、しかも牡蠣まで出てくる(笑)。これ以上何を望むか人生に、っていう。そういうのが、こんな松浦みたいな誰も行かないところにあって、それも隠れてるんじゃなくて利用してる人たちがちゃんといる。そういうお店が一軒じゃなくて、日本中にあるわけですよ。日本の中心は、例えば東京、九州の中心は福岡だけど、中心なんかなくて、いいところはいっぱいあるわけだね。よくないところもいっぱいあると思うけど(笑)。

一極集中なんじゃなくて、ここに来てる人は、僕も含めてみなさん庶民でしょうから、庶民の幸せは一箇所に集中なんかしてないんだよね。いろんなところにばらけてるのが幸せっていうもんじゃないかって、こういう風景を見ると思いますね。だから、来月、渋谷に行かなくていいですから、松浦に行ってください。まだあると信じたいですけど、何しろお店のHPとかそういうのもちろん一切ないので、探してください。それからスナックの特徴は、食べログに出ない、行ってみるしかないってことですね。電話してもいいんだけど、ドキドキしながら松浦まで行くのもいいじゃん。この辺ドライブしてもきれいなところだと思いますし。でも、松浦で一晩飲んでも泊まるとこないですけどね(笑)。代行はあると思うので、近くの町で泊まって、そういう報告をぜひFacebookなどであげていただきたいと思いますね。

都築さんのトーク後は、上野友行さんのトークです!上野さんは福岡のご出身で、特別に今回は東京からお越しいただきました。なんと、地元・福岡では初のトークイベントとのこと。上野さんには、知られざる九州のダークなお話やさまざまな豆知識を教えて頂きました。

CIMG9620

トークは、非常にスリリングで、私たちの身近にある闇社会を知ることのできるハードボイルドな内容でした。レポートでご紹介したいところですが、こちらはご参加頂いた方だけのお楽しみ…とさせて頂きます。何卒ご了承ください。

CIMG9730
最後に、上野さんからのお土産も!

なんと、映画化を記念して作成された人気漫画『闇金ウシジマくん』のカウカウファイナンスに繋がるポケットテッシュです!背筋が凍るようなティッシュを参加者の皆さまに配らせて頂きました。上野さんは『闇金ウシジマくん』の取材協力も行っておられるそう。もっと上野さんのお話を聞きたい!という方は、是非、書籍『ヤクザライフ』をご一読ください♪

ディープな夜はまだ終わりません!最後は、爆音レーザーカラオケタイム、お色気&おもしろバージョンです!!
CIMG9644

都築さんがひとつひとつネットで買い求めてコレクションされた、特選レーザーカラオケのお色気たっぷり&おもしろ映像をご覧いただきながら歌う!というスペシャルなカラオケタイムです。不思議な映像やただならぬお色気映像などなど、存分にお楽しみいただきました!

CIMG9634
今では見られない摩訶不思議なカラオケ映像に釘付け。ちょっと前まで、こんな映像があったのですね。

当日は長丁場でしたが、楽しいひとときをお過ごし頂けましたでしょうか。

展覧会も沢山の方にお越しいただき、盛況のうちに閉幕いたしました。九州のまた違った一面を知るきっかけになれば幸いです。ご参加、ご来場の方はもちろん、都築さん、関係者の皆さま、誠にありがとうございました♪

【展覧会ページ】
都築響一 僕的九州遺産
My private Kyushu

ニュース&レポート アーカイブ