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アーティストトーク〈角田奈々〉レポート&会場内のご紹介1

11/6(日)に角田奈々さんのアーティストトークを開催しました。本展では、《母とあの時》シリーズより写真16点と、ご自身の母親や何度も撮影で足を運んでいるベトナムでのエピソードのテキストを展示しています。その展示室内で行われた今回のトークでは、角田さんがどのような心境や経緯の中で、撮影を続けてきたのかお話いただきました。会場内の様子とあわせて是非ご覧ください。

(以下はアーティストトークを一部抜粋・編集したものです。)

母を撮ったのは、2006〜2010年までの間ですが、ここで展示している作品は、2009年と2010年、2016年に撮影したものです。まず、母を撮ったきっかけについてお話しします。母は食品会社に勤めているのですが、そこで髪の毛が食品の中に入っていたことがありました。その後、自分のせいでもないのに母が急に坊主にしました。当時私は大学3年生だったのですが、家に帰り、母に「おかえり」と言われた時には、もう坊主姿でした。そのことをきっかけに、撮影を始めました。今回の展示に坊主の写真を入れなかったのは、写真としてとても刺激的だと感じたからです。私がいま見せたいものは、母と向き合って感じた母の生き様や生き方だと思い、今回はこのような展示構成にしました。

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母を撮ることは、2010年で止めていました。写真を撮ることで母を傷つけているのではないかと考えつつ、母からも撮られたくないと言われました。2010年に母を撮ることを止めて、上京しました。

この展覧会への参加が決まったときに、母と「あなたは何を出すの?」という話になりました。母からは「絶対私の写真を出したほうがいいわよ。」と言われました。私はいま作品としてベトナムで撮影をしていて、ベトナムの写真を展示したいとも思っていましたが、母の言葉をきっかけに、母の写真のシリーズを展示することにしました。

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2010年で止まっていた作品を今回新しく撮り足したいと母に話しました。以前から母は、母(角田さんの祖母)が生まれ育った高知県越知町に行きたいと話しており、良いきっかけになったので、一緒にそこへ行ってきました。母は、高知に住んでいたわけではなく、小さい頃に少し訪れたことがあるだけですが、その場に行くことで、母(祖母)の面影を少しでも感じたい、母(祖母)がどうやって生まれて、育ったのか知りたいという想いがあったようです。母が25歳の時に祖母は亡くなっており、25歳で時は止まっているのだろうなと思いながら、写真を撮りに行きました。誰しもお母さんから生まれてくるので、母を見つめること、撮ることで社会と繋がりが生まれてくるのではないかと思いながら撮っていました。

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母の写真とは別の作品にはなりますが、ベトナムに撮影に行ったときのものもスライドでお見せします。母という一人の人をたくさん撮ってきましたが、ベトナムでは道端を歩き、そこに生活している見ず知らずの人に声を掛けて写真を撮らせてもらっていました。ベトナムでもやはり、人の人生とかそういうものに興味がありました。歩いていて偶然人に出会うことが面白いと感じ、自分の中で刺激を受けながら撮影しています。母を撮るということも、ベトナムに行って写真を撮るということも、自分の中では、つながっています。人の生き方や営みといったところに主体を置いて、これからも作品を撮っていきたいと思っています。

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過ぎゆく日常の中で、改めて自分と他者との関係や距離感を見つめ直すきっかけがもらえる作品となっているのではないでしょうか。会場内に展示している撮影時のエピソードをまとめたテキストは、「APG(Asia photographer’s gallery)通信」というシリーズで、角田さんが定期的に発行しているA5サイズの印刷物です。写真とテキストが裏表に印刷されています。全50回の発行を予定しており、現在45回まで発行されています。この「APG通信」(45回分)は、アルティアムの併設ショップで販売中ですので、会場内の作品とあわせて、ぜひご覧ください。

【展覧会ページ】
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