Local Prospects 2

アーティストトーク〈潘 逸舟〉レポート&会場内のご紹介2

11/6(日)に潘 逸舟さんのアーティストトークを開催しました。本展では、今年撮影された映像作品《Follow in footprints》(19分15秒)を展示しております。アーティストトークでは、展示作品のほか、これまでの作品や潘さんが制作するうえで興味を持っているテーマについて、お話ししていただきました。会場内の様子とあわせて是非ご覧ください。

(以下はアーティストトークを一部抜粋・編集したものです。)

これは、今年北海道でのレジデンス滞在中に撮影したものです。誰かが雪の上に残した足跡にそって歩いている映像で、その痕跡と身体の関係性を一つの風景として捉えた作品です。映像上に出発到着地点はなく、どこから来てどこへ行くのか分からない、その中間地点だけの映像になっています。歴史を学ぶこと、見えない誰かが作ったものに沿って歩いていくこと、あるいは難民・移民が移動することなど様々なテーマについて、考えながらつくった作品です。

映像に出てくる5人には、この作品の中では、人が風景の中に入ってきて、最終的にその風景から消えるということが、重要であることを伝えました。

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私は、映像だけでなく様々な作品をつくっていますが、最近では「アイデンティティ」という重要なテーマの中でも身体の存在にフォーカスし、モノクロの映像として制作しているものが多いです。今回は関連作品を幾つかお見せしたいと思います。

アヒルを蒔く

《White on White》2008年 映像 © Han Ishu

《White on White》2008年 映像 © Han Ishu

この作品《White on White》が一番最初につくったモノクロの映像作品です。私は上海で生まれて、青森で育ちました。上海に私の親戚がいるんですけど、アヒルを飼ってて。そのアヒルの毛を青森の雪の中に蒔くっていう作品です。白の上に白を蒔くっていう行為をしています。一人の人間が、どう社会と繋がっていくのか、どう関係としてそこにあるのかっていうことに興味があります。私の映像、白黒映像とかは特にポエティックに捉えている部分があります。それと同時に、身体が物語ること、またその政治性を切り離すことができないっていうことをずっと考えていて、私の映像作品で多いテーマですね。この作品では、育った青森っていう場所だったり、そこにある雪っていう自分にとっての記憶だったりとか、親戚のアヒルの毛が、白と白で繋がっています。大きい存在の二つっていうわけじゃなくて、自分にとってものすごくローカルな二つの存在を繋げるっていうものでもあります。

この作品のタイトル《White on White》は、ロシアのカジミール・マレーヴィチっていう画家が、ソビエトが崩壊した時、白の上に白を描いた作品に付けたタイトルと同じものです。もう一つ言うと、去年ニューヨークに半年間レジデンスしてて、すごく感じたことがありました。それは向こう側でいう他者っていう言葉の存在と、日本に帰ってきて、この東アジアの中でいう他者っていう言葉の意味みたいなものに感じる違いです。そこにある言語の問題でもあるし、それはすごく身体的な言語の問題でもある気がしてて、そのことについて最近はすごく興味があります。

 

2012年の作品《呼吸》についてお話しされている様子

2012年の作品《呼吸》についてお話しされている様子

潘逸舟《呼吸_蘇州号》 2013年  映像 © Han Ishu

潘逸舟《呼吸_蘇州号》 2013年  映像 © Han Ishu

《呼吸》は、映像作品で、自分と同じ重さの石を自分のお腹に載せ、呼吸している時の石の動きをカメラで撮影しています。これは17分間のループ作品ですが、続編として、大阪と上海を往復している船に、同じ重さの石を載せて、渡っている様子をドキュメントしたのが《呼吸_蘇州号》です。ここでは、風景の中で見えない身体というのを捉えようとしており、なおかつ何かを物語ることの意味や、物語るという行為の存在そのものをどう捉えていくかということにフォーカスした作品です。これらの作品を見るとやはり、私は、とても社会的である身体について興味があるのだと思います。

縦2m×横6mの大きなスクリーンの前に立ち、「アイデンティティ」とは何かということに想いをめぐらせながら、改めて潘さんの作品を観ると、様々な考えが浮かんでくるのではないでしょうか。

【展覧会ページ】
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アイデンティティ

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