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アーティストトーク〈国本泰英〉レポート&会場内のご紹介3

最終日に開催した国本泰英さんのトークレポートをお届けします。画家を志したきっかけから、ご自身の作風、そして展示作品についても詳しくお話しいただきました。国本さん史上最大となるキャンバスで、新作絵画を展示していただきました。会場内の様子と合わせてお読みください。

(以下はアーティストトークを一部抜粋・編集したものです。)

小学校2~3年くらいの時にドラゴンボールが流行っていて、アニメだけでなく漫画も読んでたんですが、こんなにみんな大好きなドラゴンボールがいつか終わっちゃうと考えると、悲しくなって。終わらせないために自分で描こうと、それで練習をし始めたのが今思うと、絵を描くことを仕事にしようと思った最初のきっかけだったのかなと思ってます。絵が得意だったので、クラスメイトから人気キャラクターを描いてと頼まれたりして、それを見た担任の先生が、絵画教室に行かせたらいいんじゃないかと。それで親が通わせてくれて、油絵を始めました。その時に絵画教室にあった印象派の画集を見て、こういう世界もあるんだなと。油絵科を卒業した先生だったこともあり、絵描きになりたいと思い、ずっと絵を描いてました。

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僕の作品の大きなテーマは二つあります。一つ目が「フォルム、形」について、二つ目が「個人と群衆になった時の人の存在」。その二つに則ってつくってます。人を描く前は、大学を出て何を描こう、何かを発表していかないといけないなっていろいろ描いてたんです。今住んでるところが田舎で周りが山に囲まれてて、遠くに九重連山とかも見えるので、雪山の風景があったり、この時期になるとスタッドレス履くような寒いところなんですが。周りの風景をとりあえず描いてみようと思って、最初に山や電信柱を描き始めました。僕の画風は、今は削ぎ落として削ぎ落としてつくっていくタイプなんですけど。その風景の時も、いろんな要素を削ぎ落として風景を浮き上がらせていく、そういう作り方をしてて。それを何年かやっているうちに、こういう絵って自分がしなくてもやってる人がいるし、自分の領域じゃないって思ったんです。で、次どうしようかなと考えている時に、たまたま登山のイベントに参加して、一列になって山を登ったんですよね。僕は真ん中くらいにいて、上を見ても下を見ても人がいて、当日天気が悪くて霞んでたんですね。要は、次何しようかとアンテナを張ってたので、その中で人が消えていく、だんだん人がはっきりと見えなくなって、人のシェイプだけが目に入ってくる、そういう体験があって、その人の形にすごく惹かれたんです。きれいだなと思って、これが次のテーマになるのかなと思ってました。

すぐには描かなかったんですが、湯布院駅のギャラリーで展示する機会をいただいて、その時に何を描こうかな、湯布院らしいものって何だろうと考えたら観光客だなと。ずっと人を描くのは難しいと思ってた部分もあって描いてなかった。プラス、目の前を人がたくさん通り過ぎていく様子が目には入ってるけど、記憶にはちゃんと留まってなくて、それを絵にするときに、自信を持って形を描けないっていうのがありました。その中で人を描き始めたんですけど、キャンバスが大きくなってくると、人物を引き延ばすのではなく、数を増やしていくような描き方をしてて。増やせば増やすほど、個人という要素が増幅するんじゃなくて、だんだん薄まって匿名化していくような現象を、描いてて感じてそれって面白いなと思ったんです。最初は山に登った時に人の形に惹かれたんですけど、そのあとは描いていくうちに、個人と群像になった時の人の存在について考えながらやってみたら面白いかなと思って、ずっと人を描いてました。

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今回「アイデンティティ」というテーマがあって、人に関する言葉だと基本的には思うんですが、僕はずっと人を描いてたのに、振り返ってみると、「アイデンティティ」という言葉を意識して作品をつくったことがないと思ったんです。絵を削いでいく作業で、浮き上がらせるようにつくっていくので、人物の作品の場合は、表情とか何を着てるかとか色がどうとか、あまり描かないんですよね。それは個人の要素を一つずつ抜いていく、人としてフラットな状態に持っていく、そういう作業で。だから、「アイデンティティ」を薄めていくようなつくり方だったから意識してなかったのかなと思います。今回そういう作品を出したら、自分なりの視点を持ったものにできるかなと思って、取り組みました。

大きさや色は、会場の構成を決めてから考えました。映像作品と対になって絵を展示することってなかなかないと思うんです。もちろん僕の作品にスポットを当てることで反対側にある潘さんの映像作品にも光の影響があると思うんですけど、絵もやっぱり反射で影響があるんですよね。もしかしたら、絵をきれいに見せるためにはあまり良くないことと思うかもしれないんですけど。この潘さんの映像と一緒に展示するというプランは面白く感じていたので、それをうまく生かしたいなと思って、だったら影響をすごく受ける絵にしてしまおうと思ったんです。それで背景は光が反射しやすいようにシルバーを入れて、潘さんの映像がループするときに一瞬映像が消えたり、井上さんの展示室の窓から外光が入ったりすることで、絵の表情が変わるんです。それは今までやったことのないアプローチだったし、そういう鏡みたいな効果というのも面白いと思って。「アイデンティティ」ということで、自己を見つめる色でもあるじゃないですか。銀色ってそういう色だと思うんです。自分を映す意味合いも込めて、この色にしました。

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なんで円にしたのかというと、円はいろんな意味があると思うんです。僕が取り組んでるテーマが、個人と群像ということが大きくて。群像になった時に匿名化していく現象を、人を模様やシミみたいにしたり、いろんなアプローチで絵で表現してるんですけど。今回は図形にしたかったんです。ぱっと見、だたの楕円。でも近づいていくと人が描かれてて、2トーンになってて。なんとなく着てるものや顔が想像できたりするようにしてて。その幅を作りたかったんです。個人と群像でまみれてる幅を作りたくて。そういうふうに描き分けることで幅を作ろうとして、こういう絵になりました。

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ここに描いている人たちは、もしかしたら友だちかもしれないし、恋人かも、家族かもしれない。そういう可能性を作るためにもフラットな状態の人を描いてます。顔も描いてないから自分を投影できる。自分や友だちに似てるとか、そういうふうに絵と行き来することで、一見関係性はないように見えるんですけど、鑑賞者がその中に自分なりの関係性を見つけてくれたらいいなと思っていて。そういうふうに、絵と対話できるようにしたいという思いもあって、フラットな状態の人を描いてます。

今回展示していただいた絵の中に描き込まれた人物の数は、なんと160人!(アルティアム調べ)
展覧会は終了しましたが、国本さんは今後も複数の展覧会に参加されることになっています。ぜひ見に行ってみてくださいね。

【展覧会ページ】
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