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アーティストトーク〈井上絢子〉レポート&会場内のご紹介4

4名の作家それぞれのトークレポートをお届けしてきましたが、最後は公募枠で選ばれた井上絢子さんです。現在、地元福岡を離れ、横浜にレジデンス滞在中の井上さん。福岡を出てみて感じたことや、《覚えていて眠る》《それまでのもしも》などの印象深いタイトルが作品に付けられていることについてもお話いただきました。

(以下はアーティストトークを一部抜粋・編集したものです。)

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10年くらいこうやって作品をつくって人前で展示をするという活動をしています。以前から、植物の中でも、街路樹、植栽された人の手の入ったものをよくモチーフに使っています。それは、植物の存在が自分に近いところにあるからです。見慣れた光景というのと同時に、よく見たら虫の食べた葉っぱの後が付いていて気持ち悪いなというような、両極を持っている存在だと思っていて。存在の近さと遠さをどっちも持っている存在だと感じて、気になってよく絵にモチーフとして登場しています。

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展覧会のテーマが「アイデンティティ」で、作品は展示が決まってからほぼ全て描きました。今回も植物を使って、これまでの延長で無理なく描けたというふうに感じています。テーマにしていて、よく考えることは、自分の存在と他者、人に限らず自分以外のものとの距離感を気にしていて、それが「アイデンティティ」という自分の在り方というものと共通するところがあると思い、これまでのまま制作を進めました。

私は福岡出身で、絵描きの活動を始めたのも、ずっと活動していたのも福岡ですが、今年の4月から横浜の黄金町というところに長期レジデンスという形で滞在制作をしていて、一回離れた状態になっています。離れてみて福岡について初めて考えたことがたくさんあって、それまでいた時には全然気づかず考えもしなかったこと、自分の家族などそれまで自分と近かったものを、横浜に行って考えたりしています。福岡を離れてみて自分ってこうだったなというのが分かって。福岡にいた時は、こうしなきゃ、こうであるべきというのを勝手に自分で作っちゃってたというのがあって。それが今外れているので楽になっている部分と、福岡という故郷があるから、足場がある心強さもどちらも感じているような感じです。

今回展示するときに、まず自然光を入れたいという思いがありました。それは外の風景が見えることによって、外のものと自分の作品が繋がるということと、普段昼間は大体自然光で描いているので、制作の環境に近いということがあって。見え方が全然違うんですよね。晴れた日と曇った日も違うし、昼と夜とでまた影響を受ける。地続きで自分の作品の世界と日常の世界が繋がっていくというのがやりたかったことです。

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2年前に一ヶ月半くらい台湾に滞在して制作をしていました。9月末くらいから行っていて、まだまだ暑いし、かなり日差しが強いんですね。使わせていただいていたスタジオも窓が大きくて、かなり外光が入るような状況で描いていて、日本で感じていた光とは違っていて、それはどっちかというと、戸惑いの方が大きかったです。それをどうやって自分に引きつけていったらいいんだろうと戸惑っていた一ヶ月半でした。

作品のスタイルについて、抽象度が高くなったということを言われるのですが、ずっと描いてきて、描き方が大きく変わったりはしてないんですが、描いていく中で、だんだん自分の中で確信めいたもの、こうしたかった、これをやりたいというのが分かってきたと思っていて。分かってくると、描かなくてもちゃんと伝わるし表せると思って、すごく楽になりました。それも福岡から離れて、かなり集中して描いたので、それが変化と言えば、変化なのかなと思います。

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タイトルは、順番でいうと、絵ができたあとに全部付けます。ある意味言葉から外れたもの、言葉にできないものを描いているので、できたものにもう一度言葉を付けることによって、グッとこちら側に戻すみたいな…。意味で理解できないことを、なんとかもう一回言葉に書き直して、意味づけするような作業です。ストーリーもなくて、言葉一個一個の意味より、何か言葉を与えるということが私にとって重要です。

アルティアムでの展覧会は終了しましたが、4人の作家たちの今後の活動も楽しみですね!

 

【展覧会ページ】
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