密やかな部屋 ―きらめく昆虫標本―

オープニングレセプション レポート

1/20(土)に開催したオープニングレセプションの様子をお届けします。当日は昆虫標本をお貸しいただいた九州大学総合研究博物館の緒方一夫館長と監修者の丸山宗利さんにご挨拶をいただきました。昆虫への思い溢れるお話に、開幕の喜びもひとしおのレセプションとなりました。
(以下はオープニングレセプションでのトークを一部抜粋・編集したものです。)
DSC04417
(アルティアム・鈴田)本日はお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。本展は三菱地所アルティアムの主催のもと、九州大学総合研究博物館の丸山宗利准教授の監修により、実現した企画展です。九州大学総合研究博物館から昆虫標本2,000点、そして旧帝国大の時代から使用されていた家具をお借りして、今回の空間構成が実現しました。関係者の皆さまにこの場をお借りしてお礼を申し上げたいと思います。また、本日は九州大学総合研究博物館館長であられる緒方一夫さまにお越しいただいておりますので、一言ご挨拶をいただければと思います。

(緒方一夫館長)皆さん、こんにちは。九州大学総合研究博物館の緒方でございます。私は本務は熱帯農学研究センターというところで研究をしているんですけれども、もともと私も昆虫学者でした。人間には2種類ありまして、虫が好きな人と嫌いな人と言われています。この部屋に入ってくると、虫の好き嫌いに関わらず、本当に独特の雰囲気、オーラが感じられて、とても素晴らしい展示だと思います。この展示で使っている家具もよく見ていただくと、備品の票が貼ってあります。昔、大学の備品だったものです。こういったものも楽しんでいただければと思います。
本日は鈴田さんをはじめ、関係者の皆さま、うちが持っている標本をこういうふうに展示していただいて、本当にありがとうございました。本館のバックヤードにはさらに数100万の昆虫標本があります。展示を度々企画しているところですので、ぜひお越しください。今後とも、九州大学のご支援を賜りますよう、どうぞよろしくお願いいたします。本日はどうもありがとうございました。

DSC04389

(鈴田)ありがとうございます。では、続いて丸山先生、ご挨拶をお願いいたします。

(丸山宗利さん)九大博物館の丸山です。本日はお集まりいただき、ありがとうございました。
唐突ですけれども、あらゆる生き物は実は無駄がなく、美しい機能美と構造美を兼ね備えています。もちろん昆虫も例外ではなく、多くの大人は気持ち悪いという刷り込みによって、じっくり観察することさえしなくなっていますけれども、そういった先入観を省いて観察すると、それぞれの昆虫が実に美しい姿をしていることが分かると思います。見るからにきらびやかな蝶や甲虫はもちろん、この部屋にもあるような茶色くて一見地味な昆虫も、よく見るとそれぞれに美しい姿形をしていることが分かると思います。今回はその標本の美しさを皆さんに堪能いただくために、静かな空間でじっくり見ていただくような展示を目指して作りました。この静かな場所でゆっくり見ていただきたいという思いと、標本の持つ雰囲気を味わっていただきたいということで、当館が所蔵している古い家具を用いて、このような空間を演出しました。

DSC04402

最後の部屋では昆虫の体表の構造を拡大した写真を展示しています。普通、被写体は小さくなればなるほどピントが浅くなって、絞りを絞って撮影すると深くはなるんですが、こんどはボケボケの写真になってしまうんです。この写真の撮影方法は、「深度合成」といって、カメラを動かして、小さな構造を顕微鏡のレンズで層状に撮影して、ピントの合っている部分だけを合成する方法です。展示している大きなパネルで、実物は大体3~4mm四方くらいの大きさです。肉眼で見る標本も真実ですけど、こうやって拡大して展示しているような構造を昆虫が持っているというのも真実で、肉眼では見えないけれども、ある意味別の真実を見ることができるというふうに思ってこの展示をしました。

DSC04557

ところで、なぜ私がこんなに皆さんに昆虫を好きになってもらいたいと展示をしているかというと、ひとえに私が昆虫が好きだからです(笑)。実は日本人ほど、幼少期に昆虫が好きな民族はいません。コンビニで捕虫網が売っているのは、世界広しと言えども、日本だけです。しかし、残念なことに子供の頃は昆虫が好きでも、多くの人は成長とともに興味を失っていってしまいます。日本は豊かな自然に恵まれていて、だからこそ昆虫が好きな子どもが多いんですけれども。ガラパゴス諸島よりもずっと固有種が多いほど、日本は自然が豊かですが、そんな事実を知る人は少ないし、人口が減っているにも関わらず、あちこちが無駄に開発されていって自然が失われて、本当はここにしかいないというような小さな虫が、その存在すら無視されて絶滅していっています。私は環境省の委員などもやっているんですけども、コウノトリとかトキとかは、注目を浴びて保護の対象になるんですけれども、例えばある場所にダムとか発電所ができるとなった時に、小さな昆虫に関してはその存在すら軽く見られてしまう。「この小さな昆虫はここにしかいない」と言ったところでその開発が中止になるようなことはまずないんですね。その背景にはやっぱり、多くの人の昆虫に対する無関心、もともと興味がないとか嫌いだとか、そういうことが少なからずあると思います。私がいろんなところで展示をしたり、本を出したりしているのは、やっぱり昆虫を好きな人を少しでも増やしたいという思いがあるからです。そうすればこういう現状を少しでも改善できるのではないかと思っています。今回の展示ではこの素晴らしい会場をお借りして、いつもとは別の層、最初から昆虫が好きというわけではない人にも、昆虫に対する関心を持っていただいて、新たに昆虫が好きという人を増やせればと思って企画しました。
最後になりますが、標本準備から、デザイン、会場設営まで、本展示にご協力いただいた皆さまに厚くお礼を申し上げます。また、この企画が決まって以来、一緒に構想を重ねてきてこのように美しい空間を演出することができたのは、三菱地所アルティアムの鈴田ふくみさんのおかげです。そして、デザイナーの大村政之さんがこれまでにない格好良いチラシや解説パネル類を作ってくださいました。企画段階で、この3人でどういう展示をしようかと考えて、映画とか色々なものを出し合って相談した時に、小川洋子の原作でフランス映画になった『薬指の標本』というものがあるんですね。それをたまたま鈴田さんも私も見ていて、そんな雰囲気を作れたらなということもあって、こういう会場になりました。もし興味のある方は見てみてください。
長くなりましたが、とにかく昆虫の標本の美しさをご堪能ください。今日はどうもありがとうございました。

DSC04421

会期は3/11(日)までです。※2/20(火)、21(水)は休館日です。ご注意ください。
ご来場お待ちしております。

【展覧会ページ】
密やかな部屋 ―きらめく昆虫標本― 
WORLD OF INSECT SPECIMENS

ニュース&レポート アーカイブ