田根 剛|未来の記憶

田根 剛 トークイベント レポート3

田根 剛 トークイベント「Archaeology of the Futureー未来の記憶 Image & Imagination」』レポート最終回です。第一回目二回目と合わせてご覧ください!

ホーム

(池田美奈子さん)今パリに事務所を持っていらっしゃるということですが、田根さんにとって、ホームはどんな所でも良いのでしょうか。現在たまたまパリということなのか、どこに行っても外部者という立場を好むのか。拠点やホームについてはどのようにお考えでしょうか。

(田根剛さん)あまり考えてなかったかもしれないです。現場がホームという感じです。今回も福岡に良い展覧会をつくろうという思いで来ているし、次の現場があればそこで一生懸命働くし、パリに戻ったらその中で日々の仕事をする。今は、現場で一生懸命やることがホームという感じですね。

(池田さん)なるほど。

(田根さん)その時にチームワークが重要で、関わる人たちとの信頼づくり、良い意識を持ってその場その場で活動するようにしています。

 

基本に戻る

(池田さん)バックグラウンドも価値観も国籍も違うであろう30数名の方々とチームワークをつくるときに、何を大事にされていますか。

(田根さん)今年初めにスタッフに伝えたのは、もう一度自分たちの基本に戻ろうということ。大きな展覧会も含めて、去年はかなり大変な一年でした。その一年を終えて、彼らにも自分にも言い聞かせたのは「back to the basic」。最も基本的なところに戻る。
日々働いていると、今日ここに何をしに来たのか考えなくなってくる。毎朝何がしたくてこの場所にいて、何をしようとしているのかという意識や思いが、ちゃんと自分自身に問いかけられているか。
ここで仕事をしたい、こういう建築をつくりたいという思いが、毎日の仕事のベースにあってほしいと。それを問いかけながら、この一年仕事をやろうと彼らに話したし、僕自身もこれから先に向けて、その基礎が固まらないともっと先にいけないなと思いました。

(池田さん)何か転機があったのですか。

(田根さん)去年本当に大変だったということ、そして全て出し切ったからですかね。10年以上の仕事を、展覧会と「Archaeology of the Future」というマニフェストも含め、多方面に紹介してくださって、自分たちの手を離れて何かが伝わった印象がありました。
そこから更に次のステージにいきたいと思ったときに、原点に戻って基礎を固めないといけないと思った。このままやっていけば良いと安心したくなかった。ここからまた次に行くために、今何をしたら良いのかをもう一度、自分に問わないといけないということです。

(池田さん)厳しいですね。そのまま進むこともできそうですが、それは見直して、常にとどまらずにチャレンジされている。

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考えなくていいことは考えない

(池田さん)例えばエストニアのコンペは当時26歳で若くして挑戦されていますよね。エストニアは当時、安定したかしないかくらいの、政治的にも転機だったと思います。
非常に思い切ったことにチャレンジされているなと思います。そういうところにあえて飛び込んでいこうと思われた理由をお話いただけますか。

(田根さん)そうですね。チャレンジ精神は大事だと僕は思っているので、自分自身が本当にやりたいのか、ということ以外はあまり考えない。
20歳から海外に住み始めたことも含めて、大変だったけど一生懸命だったし、いろんな人の力もあってそれなりに楽しくできた。あまりやる前から大変そうだとか、頭で分かったかのような気になるより、とりあえず行ってみて、大変でも頑張ってみれば良いんじゃないかと思っています。

エストニア国立博物館も完成まで10年かかって大変でしたね、と言われます。大変だったかもしれないけど、やることもいっぱいあったし、どれだけやっても足りないほどの大きなプロジェクトだったので頑張るしかなかった、ということですよね。

(池田さん)規模もそうですし、転換期を迎えた国だった。エストニアにとっての最初の博物館ですか。

(田根さん)エストニアがソ連から独立をしたとき、国の約束として、国立博物館、美術館、オペラ座の三つをつくると宣言しました。実は過去に国立博物館という民族の精神を語る場を絶対につくりたいと、2、3回コンペも実施されましたが、頓挫したという経緯もありながら、いよいよ開かれたのが2005年の国際コンペで、初めて参加しました。

(池田さん)ある意味、エストニアという国のアイデンティティー、希望を背負った感じですよね。

(田根さん)もちろんそういった背景を建築が背負うことも大事ですが、一方で、何か創造していくというのは、規模が小さかろうと大きかろうと、考えすぎて、背負い込むのも良くないと思っています。

(池田さん)自由にできなくなる感じがしますね。

(田根さん)そうですね。様々な制約から解き放たれて、自由にものを創造できるのが建築の魅力なので。建物をつくる為の法律や予算のしばりはあっても、「建築を考える」ことは、本当に自由にやっていたいなと思います。考えなくていいことは考えない、考えたいことを一生懸命考えるというスタンスでやっています。

(池田さん)考えなくてもいいことは考えない。大事ですね。

 

三つの部屋

(池田さん)展覧会の見方があれば教えていただけますか。

(田根さん)展覧会場は、三つの部屋に分かれています。「Image & Imagination」というサブタイトルに基づいて、Room1は僕らのプロセスの原点ともいえる膨大なイメージの空間があります。Room2では、ものしかない空間に変わり、建築のプロセスでいうと、つくっていく作業が垣間見える部屋だと思います。今回は、いわゆる建築展にある図面も写真も、スケールという大きさを測るものもありません。模型を置いて、見る人が考古学的に、何がどれに繋がっているのか発掘するように見てもらう展示になっています。Room3は、リサーチや模型を経てできあがったプロジェクトのプロジェクション映像です。建物を展示会場に持ってくることはできなくても、映像技術を通して、空間体験ができればと思い、映像担当の方と制作しました。

(池田さん)3面の非常に大きな映像ですね。

(田根さん)限られたスペースの中で、全く異なる体験ができたらと思っています。

(池田さん)情報がぎゅっとつまっていて、本当に見応えがありました。

 

手を動かしながらイメージをつくりだす

(池田さん)Room2を拝見して面白かったのが、棚の上の模型です。つくっているライブ感が伝わる模型の原型、粘土や発泡スチロールでつくったもの、カラーのチップ等が置いてあります。
イメージを形にするより、手を動かしながらイメージ、アイデアをつくり出しているのかなと感じました。

(田根さん)仰ってくださったように、イメージしたものを形にするのはあまり面白くないんですね。最近は、つくっていくうちに思いつき、最終的に「こんなものができてしまった」、というプロセスのつくり方をし始めました。

(池田さん)もうひとつ面白いなと思ったのが、プロジェクトごとに分かれた棚に一文入っていますよね。非常に印象深い、ああそうかと膝を打つような言葉が随所に書かれています。これも結構見逃せないなと思いました。

(田根さん)会場内には、唯一その一文しかプロジェクトの解説といえるものはないので、言葉の力を借りて伝えられること、考えていることをテキストにしました。

(池田さん)あの一文は、建築を考えるときに、膨大な言葉が出てくる中で、選び抜かれた一文ということになりますか。

(田根さん)大概は、そのときに本当に思ったこと、書いているときに思ったことを率直に言葉にしていることが多いですかね。

(池田さん)ぜひ注目していただければと思います。

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Room 2 展示風景 撮影:古賀亜矢子

 

展覧会に足を運ぶ

(池田さん)これから展覧会をご覧になる方に、何かメッセージはありますか。

(田根さん)展覧会は、今見ないと終わってしまうもので、見ないと分からない。見たことで、何か自分のためになるかもしれないし、時代を感じるかもしれないし、怒りをおぼえるかもしれない。
また展覧会は、今起きていることをダイレクトに感じる場だと思います。見たものを自分の中にとどめず、人と話したり、それにより見方の違いを理解したり、そういった意味で展覧会は非常に大事なものだと思っています。

もうひとつは、芸術鑑賞は知的な好奇心を学ぶ場だと思います。そこにある意味を問い、何の関係があるのか、知的に読み解くことによって、よりたくさんのものを知ることができます。文化や芸術の意味を考える場として、ぜひ展覧会を通して、ただ見た、感じたというだけではなく、そこから次に繋がるものを考える、という体験をしていただけたらと思います。展覧会を見て、いろんな方と話していただけたら嬉しいなと思っています。

(池田さん)ありがとうございました。展覧会を介してアイデアを交換したり広げたりするような機会になればと思います。

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田根さんのお話をお読みいただいたうえで、もう一度展覧会をご覧いただくと、見る人それぞれに違った発見があるのではないでしょうか。本展会期は3/10(日)まで!ぜひ、足をお運びください。

【展覧会ページ】
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