近藤聡乃展 呼ばれたことのない名前

近藤聡乃トークイベント2019年も考え中レポート前編

10月13日(日)におこないましたトークの内容を抜粋編集し、2回に分けてお届けします!
※印の作品は展示しておりません。

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(アルティアム・山田)
最初に近藤さんにアルティアムで個展をお願いしたいというお話をした時に、アニメーション、マンガ、絵画などのジャンルに限定せず、網羅的な展覧会はどうでしょうかと提案しました。

(近藤聡乃さん)そうですね。初めの頃は開催時期について相談していて、今雑誌で『A子さんの恋人』というマンガを連載しているので、その連載との兼ね合いで時期を決めましたが、予定はずれにずれ、まだ連載は終わっていないです(笑)。

(山田)すごくお忙しい中やっていただいて、ありがとうございます。近藤さんにとって過去最大規模の個展ということで、回顧展にしましょうという話になり、作品の選定や構成を近藤さんご自身に考えていただきました。展覧会は①初期作品、②てんとう虫のおとむらい、③《KiyaKiya》以前の作品、④KiyaKiya、⑤現在進行形の作品という5つの構成になっています。今日はこの5部構成の流れに沿って、近藤さんにお話していただきます。

①初期作品

《女子校生活のしおり》コピー用紙にインク 1998 撮影:古賀亜矢子

《女子校生活のしおり》コピー用紙にインク 1998 撮影:古賀亜矢子 《女子校生活のしおり》コピー用紙にインク 1998
撮影:古賀亜矢子

(近藤さん)会場入ってすぐのところに展示してある、マンガ「女子校生活のしおり」は、高校3年生の時に当時通っていた美術予備校のコンペに出品するために描いたマンガです。展示作品のほとんどにおかっぱの女の子が描かれていて、多くの作品では主役として登場していますが、その女の子が初めて登場したのがこのマンガです。「英子」という名前で、はじめは主役ではなくで、主人公の女の子が憧れる女の子という設定で登場しました。主人公の女の子が英子に惹かれるきっかけになるのが英子の書いた作文なのですが、この作文は私が実際に体験したことをもとに書きました。エッセイ集(『近藤聡乃エッセイ集 不思議というには地味な話』ナナロク社、2012年)にもその話を書いていますが、実家の近くで見かけたカエルを毎日見ていたらどんどん石になっていったという体験です。本当かどうかは分からないですけど、人から聞いた話では、カエルは死ぬと石化して石になることがあるらしいです。私が見たのも本当にカエルだったのかもしれません。

(山田)三つ編みの女の子が主人公の陽子ちゃんですね。

(近藤さん)そうです。特に迷わずに、陽子ちゃんと英子ちゃんにしたのですけど、理由はあまり覚えていないです。「英子」という名前はこの後もずっと出てきて、連載中のマンガ『A子さんの恋人』の主役もこの名前です。

 

《3年5組》イラストボードにアクリル絵具 2000

《3年5組》イラストボードにアクリル絵具 2000

(近藤さん)大学2年生の課題で描いた作品で、大学で初めてとても褒められた作品です。確か「シュルレアリスム」という課題だったと思います。この頃からどんな作品を作りたいかお方向性がなんとなく決まってきた気がします。

(山田)学科はグラフィックデザイン科でしたよね。

(近藤さん)あまりデザインが向いてなくて、大学3、4年生は表現系と呼ばれる、イラストレーションやアニメーションなど自由に作って良い授業ばかり選択していました。デザインが全くさっぱり分からなかったというか、ぴんとこなかったですね。

 

《密着アルバム》手術用ゴム手袋にビーズ、スパンコール、刺繍糸 2002 《密着アルバム》漫画原稿用紙に鉛筆、インク 2005 撮影:古賀亜矢子

《密着アルバム》手術用ゴム手袋にビーズ、スパンコール、刺繍糸 2002
《密着アルバム》漫画原稿用紙に鉛筆、インク 2005
撮影:古賀亜矢子

(近藤さん)大学4年生の時、表現系の授業の課題で作った作品です。手術用のゴム手袋に刺繍をしています。触覚的な思い出を立体化するというテーマで作りました。同じタイトルのマンガ作品と対になっています。マンガで描かれている、てんとう虫の思い出が、後の《てんとう虫のおとむらい》というアニメーション作品に繋がっていきます。

(山田)アニメーション作品以外にも、近藤さんの作品にはてんとう虫というモチーフが繰り返し出てきますよね。

(近藤さん)てんとう虫に関する印象的な思い出がいくつかあるんです。私は小さい頃の体験や記憶をもとに作品を作ったりするのですが、一つの体験から複数の作品を作ることもあります。

 

《電車かもしれない》シングルチャンネル・アニメーションビデオ 3分56秒 2001-2002 音楽:知久寿焼 music copyright ©︎ CHIKU Toshiaki

《電車かもしれない》シングルチャンネル・アニメーションビデオ 3分56秒 2001-2002 音楽:知久寿焼
music copyright ©︎ CHIKU Toshiaki

(近藤さん)《電車かもしれない》は、初めて作ったアニメーション作品です。自分の好きな音楽にアニメーションをつけるという大学3年の課題で作り始めました。

(山田)この作品でNHK「デジタルスタジアム」や文化庁メディア芸術祭アニメーション部門などで賞を獲られています。課題で作った立体作品と対になるマンガ《密着アルバム》も青林工藝舎から出版されるなど、学校の課題でありながら、作家として発表し評価された作品が多いですね。

(近藤さん)グラフィックデザイン学科はとても課題が多くて忙しかったんですよ。なので、うまく課題を使わないと自分の作品を作れなくて。作品だけど、課題としても出せるようなものを作っていました。

 

《月の花 vol.4 背後の気配》※ 紙に鉛筆、アクリル絵具 2003

《月の花 vol.4 背後の気配》※ 紙に鉛筆、アクリル絵具 2003

(近藤さん)大学を卒業した後は、就職はせずに作家になろうと思っていました。そんな時に、ギャラリーエスというところで個展をさせていただけることになったので、そのために描いた作品です。

(山田)本展ではこの作品は展示していませんが、《月の花》シリーズの別の作品を2点展示しています。一つのテーマをもとに、複数の作品を描くというシリーズ展開を、この後も結構されていると思うんですが、それは理由がありますか。

(近藤さん)自分の好きなことをテーマに絵に描くと何度も同じような絵を描きたくなるんですよね。そういう意味でも、同じような作業を毎日繰り返すアニメーション制作は自分に向いているのかなと思います。

 

②てんとう虫のおとむらい

卒業制作版《てんとう虫のおとむらい》※ シングルチャンネル・アニメーションビデオ 2002

卒業制作版《てんとう虫のおとむらい》※ シングルチャンネル・アニメーションビデオ 2002 卒業制作版《てんとう虫のおとむらい》※ シングルチャンネル・アニメーションビデオ 2002

 

《てんとう虫のおとむらい》2003(『はこにわ虫』所収 青林工藝舎 2004)

《てんとう虫のおとむらい》2003(『はこにわ虫』所収 青林工藝舎 2004) 《てんとう虫のおとむらい》2003(『はこにわ虫』所収 青林工藝舎 2004)

(近藤さん)これは大学の卒業制作で作ったアニメーション作品で、卒業制作版《てんとう虫のおとむらい》と呼んでいます。今回展示しているアニメーション《てんとう虫のおとむらい》とは違う作品です。卒業制作版は、先に描いた同じタイトルのマンガをもとにアニメーションを作り始めたのですが、頓挫しました。仕上がらなかったけれど、卒業はしまして(笑)。割と忠実にマンガから抜き出してアニメーションにしています。ただそのやり方に無理があって、失敗したのかなという気がします。アニメーションは完成するまでにとても時間がかかるので、最後までその作品に興味を持っていないと、なかなか作り切るのが難しいのですが、途中で気力が失せてしまいました。大学を卒業したのは2003年ですが、それからずっと気になっていたので、2005年に作り直しました。完成版《てんとう虫のおとむらい》は、絵コンテから描き直して作り、卒業制作版とは全く違う内容になりました。

(山田)絵コンテの前にされることはあるんですか。

(近藤さん)スケッチブックみたいなものにイメージをたくさん描いて構想を固めたりします。それで作り切るまで気持ちが持つところまでもっていって、絵コンテをおこして、それに沿って1、2年かけて制作する、というプロセスになります。

(山田)いったん抽象的なところまで立ち戻って、改めて組み立て直したという感じでしょうか。

(近藤さん)そうですね。

 

《夜の鼓動 vol.2》パネルに鉛筆、アクリル絵具、ジェッソ 2005

《夜の鼓動 vol.2》パネルに鉛筆、アクリル絵具、ジェッソ 2005

(近藤さん)これは2004年から2005年にかけてドローイングを集中して描いていた時期の作品です。アニメーション《てんとう虫のおとむらい》の構想段階に描いた作品です。てんとう虫が出てくるわけではないけど、なんとなく似たイメージですね。

(山田)このシリーズは、円形の作品が多いですね。

(近藤さん)四角い形の絵もあるんですけど、よく見ると四隅のところを切り落としても大丈夫な構成になっていることが多くて。丸が一番自分に向いている形なのかなという気はします。

(山田)小さい人も、よく描かれていますね。

(近藤さん)小さい人が最初に出たのは、高校3年の時に描いた《女子校生活のしおり》ですね。教室の中を飛び回る卵子の絵があって、多分その延長上の何かだと思います。

 

《てんとう虫のおとむらい2-10-02》※パネルに鉛筆、アクリル絵具、ジェッソ 2006

《てんとう虫のおとむらい2-10-02》※パネルに鉛筆、アクリル絵具、ジェッソ 2006

(近藤さん)このドローイングは、アニメーションが完成したあとに描いたもので、アニメーションで描ききれなかった部分を描くという意味もあったと思います。

(山田)最初にマンガを描いて、スケッチやドローイングを描いて、アニメーションを作って、描ききれなかったものを絵画にして「てんとう虫のおとむらい」という一つのテーマを、何年もかけて複数のメディアを巡って終了したんですね。

(近藤さん)この《てんとう虫のおとむらい》のシリーズが終わった後に作った《KiyaKiya》のシリーズも、何年か掛けて取り組んでいます。

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レポートは後編に続きます。

【展覧会ページ】
近藤聡乃展 呼ばれたことのない名前
Kondoh Akino Exhibition: Never Before Named

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