浅田政志写真展

トーク レポート

浅田政志写真展『私の家族』関連イベントとして、2/6(土)に写真家の浅田政志さんをお迎えし、トーク&サイン会を開催しました。ここでは、主に会場のシリーズごとにトークの様子をレポートいたします!
(以下はトークを一部抜粋・編集したものです。本レポートの転載はご遠慮ください。)
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ーはじめに

浅田政志です。三重県津市で生まれて、中学校の時に実家にあるカメラに触ってみたいなと思ったのが写真を始めたきっかけです。当時は、父親のカメラを借りて、友達や家の周りの風景を撮ったりしていました。高校の時に3年間写真部に在籍して、卒業後、大阪の写真専門学校に行きました。地元の友だちからは「今でも写真やってるの不思議だね」と言われたりします。
九州でしっかりとした展覧会をするのは初めてで、以前からずっと福岡でやりたいと思っていて、ご縁をいただいてうれしい限りです。

 

ー年賀状

浅田家では、年に一回父親が、津市の観光名所のようなところで僕と兄を撮って、それを年賀状にするというのをやっていて。それが毎年、高校卒業くらいまで続くんですね。家の近くの海で撮ったり、大体おそろいの服を着させられて、ポーズを撮って。子どもながらになんでこんなに早く起きないといけないんだとか思いながら(笑)。思春期になると、「もう家の前で撮らせてくれ」とか思って、めちゃくちゃ無表情になったりしています(笑)。
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家族写真を撮るようになった今見返すと、僕の原点なのかなという感じがしています。父親もよくインタビューで、「政志に写真を教えたのは俺だ」とか言ったりするくらいで(笑)。
なぜ父親がこんなことをやっていたかというと、長崎で岡村さんの家で生まれて、浅田さんというお子さんがいないところに養子に出ているんですね。浅田さんのところで本当のお子さんが生まれて、いづらくなったりして、高校中退して、長崎を鞄一つで飛び出たということを酔っぱらったときに言っていたんですけど。結婚した時に幸せな家庭を築きたかったという思いが人一倍強くて、年賀状に三重県で子ども二人を授かって生活しているということをメッセージとしてのせたのかなと今では思います。

 

ー卒業制作

ある日、写真専門学校の先生から、「1枚の写真で自分を表現しなさい」という課題が出たんですね。大伸ばしの授業でもあって、モノクロの1mくらいの大きな作品にしましょうと。1枚で自分を表現するとなった時に、自分もいろんな側面があって、難しいなと思っていろいろ考えたんですけど、ふと、もし、一生に1枚しか写真が撮れなかったら自分はどんな写真が撮りたいのかなという疑問が頭にわいてきました。
日本には写真が江戸末期くらいからあって、その時代は偉い人しか撮れなくて、ほかの人は一生に一枚撮れるか撮れないか、そんな時代も経て、今こうして身近に便利になっているんですけど。そういう状況になったら、自分なら家族を撮りたいなと、ふと思ったんですね。一生に1枚なので、自分で家族3人を撮るより、自分の姿も写したい。家族4人で自分も写ろうと。家族全員の思い出を写真の中に入れて撮ると、姿も入りながら、思い出もあって、一生に1枚の写真にふさわしいんじゃないかと、その時僕は思って、チャレンジして撮ったのがこの写真です。

浅田政志 卒業制作(2000年)

浅田政志 卒業制作(2000年)

父が怪我をして、発見した僕が母親を呼びに行って、帰ってくるときに僕も転んで怪我しちゃって、二人とも血まみれで。家の二階にいた兄もびっくりして階段からこけて、怪我をしたという日があって。看護師の母親の病院に担ぎ込まれて、治療を受けました。周りの同僚に、「浅田さんち、事件に巻き込まれたんですか」って聞かれる恥ずかしい思い出です。母にお願いして、診察室や病院で着る服を借りて、包帯を巻いて撮った写真です。家族写真の最初の一枚です。20歳頃だったので、家族写真より、もっと外の世界とか、見たことないかっこいい写真を撮りたいと思っていたんですけど、それと真逆になるような、誰でも撮れるような写真です。でも、周りからも良いって言われたり、手ごたえがあって。その後卒業制作のために11枚撮って、学校長賞という一番良い賞をいただきました。

 

ー浅田家

さらに家族写真を撮ろうと三重県に帰ったんですけど、なかなか撮れませんでした。なぜかというと、撮りたい気持ちはあるけど、思い出を再現する、その思い出のネタが尽きたんです。それで、過去の思い出に囚われずに、未来の写真だったらどうかなと思って、僕が死んだ時の写真を撮ったんですね。自分の究極の未来を撮ってみたいなと思って。
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最初はレリーズを使っていたんですけど、セルフタイマーに切り替えて撮りました。吹っ切れて、家族全員でF1をやっているかもとか、そうなると自由になれて、あれもやりたい、これもやりたいと。家族全員の休みが合う時に、撮影を年に数回実行しました。
構図を決めて、約2時間の間にセルフタイマーで50~60枚撮ってそこから1枚選ぶんですね。大きな印画紙に手焼きで焼いてもらっていて、むき出しの巻き込みのプリントで、ガラスもないので、ぜひ細かいところをじっくり見ていただけたらと思います。

 

ーみんな家族

それがまとまって『浅田家』を出版して、木村伊兵衛写真賞というすごい賞もいただきました。いろんなインタビューで「あなたにとって家族写真とは」って聞かれるようになって。自分としては楽しくてどんどん撮りたい、撮りたいと思って撮っていたので、そう聞かれると答えづらいなというのがあって。もう少し家族写真について、家族について、いろいろ経験したいなと思って、自分の家族だけじゃなくて、人の家族も撮ることによって、家族や家族写真のことを考えられるようになるかもしれないなと思って。
写真集を出す時に、「あなたの家族写真をどこにでも撮りに行きます」というのを書いて、応募を募ったわけです。(※現在は募集を休止しています。)それを見た方が応募してくれて、撮りに行ったシリーズがあるんですね。このシリーズも本になってなくて、展示でしか見れない、『みんな家族』というシリーズです。基本的には撮りたいという動機があって、募集したら全然メールも見切れないくらい何百通とご依頼をいただいていて。そこから、事前に打ち合わせをして、全く知らないご家族のところにお邪魔して、どういう写真を望まれているのか、そもそもどういうご家族なんだろうというのを、半日くらいかけて打ち合わせをしました。家族にとって、こういうタイミングなので、この場所でこういうふうにして写真を撮ったら良いんじゃないかみたいなことをお互い意見を出し合って、イメージが決まれば、撮影日に向かってご家族に準備してもらいました。撮影日に集まって、写真を撮って、1枚写真を選んで、最後にそれをプレゼントするということをした作品です。1枚に、時間だったり、ご家族の思いだったりが凝縮されている写真になっています。あまり説明は入れていなくて、想像していただければと思うんですけど。
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ひとつ説明させていただくと、高知県のご家族で、頭にアフロをかぶって、手紙を読んでいて、大きな布団の上で縁側に座っている写真です。三姉妹と、父、母。打ち合わせをする時に、家族アルバムをめくることが多いんです。いきなりどんな家族かと聞かれて、うちの家族ってなんだろうとなる時、話のとっかかりとして「家族アルバムありますか」と聞いて。お子さんが小さい頃、アフロをかぶって楽しそうにしている写真があって。「これはなんですか」って聞いたら、お父さんが、クリスマスのプレゼントにアフロを買って靴下の中に入れて、朝子どもたちが起きたらなんじゃこれみたいになったけど、楽しくて意外とはまっちゃったということがあったそうです。少し変わったお父さんで、毎年初詣に近くの神社に行っていて、そこでアフロで写真を撮りたかったと。どういうことかよく分からないですけど(笑)。すごくすてきだなと思って。「家族の一番好きな場所は?」と聞いたら、縁側だと。休みの日に家族の布団を干して、そこでだらだらするのが幸せだとおっしゃっていて、撮影でも縁側に布団を敷いてみたり。お父さんが考えたキャラクターが描かれた服を、子どもたちが小さい時によく着ていた写真もあった。なかなかそれも珍しいなと思って、もう一度みんなでスウェットに手書きで描いてもらった。お雛様、昔は出していたけど最近出していないとなって、久しぶりに出してみましょうとなって。あと、真ん中の次女の方がご結婚で海外に嫁ぐということで、うれしい反面、さみしい気持ちもあると。で、みんなで手紙を読んでみたら良いかもしれませんねと。撮影が一通り終わって、最後に次女の方にみんなで手紙を読んでいるシーンです。こういうふざけた格好なんですけど、みんなまじめな顔で手紙を読んで、気持ちを伝えているんです。その日が凝縮されているような1枚にしたい、みなさんの思い出に残るように撮影ができたらいいなと思ってやっています。

 

ーアルバムのチカラ

2011年3月11日に東日本大震災がありました。津波で流されてしまったお家の中にも、ご家族の大切なアルバムがあって。それを自衛隊の方が集めたり、それを見たボランティアの方がなんとかしたいという思いがあって。誰にやれと言われたわけでもなく、被害のあった沿岸部のそれぞれの地域で、写真洗浄ボランティアというのが立ち上がって。
写真がこれだけ普及してから、あれだけ大きな津波がきたのが初めてだったので、写真洗浄ボランティアというのも、今までやったことのないような試行錯誤の繰り返しで、どうやったら持ち主の方にきれいな形で返すことができるんだろうかと模索されている。それを編集者の藤本智士さんと取材して、2年間回ったのが『アルバムのチカラ』という本になっています。僕はもともと、岩手県の野田村というところに支援物資の仕分けなどのボランティアをしに行ったんですね。ボランティアセンターに今日終わりましたよという報告をしに行ったら、村役場の寒い外で、水で写真を洗っている青年たちを見つけて。写真だと思って、気になって話しかけたのが最初です。人手が足りてないし、写真にかかわることなので、僕も手伝わせてもらいたいと、岩手県野田村で写真洗浄のボランティアに参加するようになりました。
写真が津波の被害にあうというのは、写真はゼラチンでコーティングされているんですけど、津波の中にバクテリアがいて、ゼラチンがバクテリアの大好物で、そういった生物の活動で写真がどんどん腐食していくんですね。なので一刻も早くやらないと、写真の腐敗が進んでいくんです。どの写真も唯一無二のものなので、ミスで写真がダメにならないように、丁寧にやらないといけない。写真のボランティアの経験を経て、写真一枚の価値が身に染みました。他人がみると何気ないものでも、ご本人からしてみたら、かけがえのない一枚です。
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みなさんのスマホの中にも、すばらしい写真がたくさんあるんだと思います。でも、最近はプリントをしないんですよね。画面で写真が見れるので、わざわざ紙にしなくても良いという感じがすると思うんですけど。写真って、将来見返したときに、最大の力が発揮されると思うんですよね。昨日撮った写真を眺めるのと、30年くらい経った時に眺めるのとでは、写真自体は変わらなくても、月日を経て見えるものは全然違う。小学校の時に撮った写真を今見ると、僕はその頃の父親と同じ年齢になって、子どもが生まれていて。自分も同じ父親の気持ちで見ていたりとか、見方が変わるわけです。時間と写真の見え方にはすごく密接な関係があるんですね。ぜひ、プリントして、写真と長い付き合いをしていただければと思います。
ハードディスクに保管をしてると常にバックアップし続けないといけない。メモリに入っていると一生残るような気がするんですけど、年月が経つと、中身が飛んでたりすることもあります。データでは、いつどうなるかわからないですよね。でも100年前のプリントが今も見れるように、全部とは言わないけど、大切なものはプリントしてみると良いと思います。撮る楽しさもあるけど、どうやって残していくかにも興味があります。

 

ー私の家族

福岡で募集をして、二組撮らせていただきました。きっかけになったのは、愛知県春日井市の真木さんという方。お一人の家族写真です。今までは集合体としての家族写真を撮ることが多かったんですが、お一人でもそこから広がる家族の思いだとか家族観、そういうことも表現できるのではないかと。一人を対象にして、その方と打ち合わせをして、家族観や家族の歴史を写真に撮っていきながら、ご本人にも文章を書いてもらいました。プリントの下に言葉が入っているのはご本人の直筆です。その方との共同作業みたいなことで、作品ができあがりました。アルティアムで初お披露目です。被写体は福岡の方ですし、ぜひ見てもらえたらと思います。
福岡にもたくさんの人が住んでいらっしゃって、みなさんの中にも、それぞれ自分の家族観があると思います。それを考えるだけで、まだまだこれから回っていきたいなと思っています。
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ー展覧会タイトル

僕の作品は僕自身の家族写真から始まり、『みんな家族』で自分以外の家族の写真も撮るようになりました。この展覧会では僕にとっての『私の家族』、そして被写体にとっての『私の家族』を僕なりの解釈で表しています。
展覧会をご覧になった方から多く寄せられる感想には一つの傾向があって、「面白い家族ですね」から始まり、「自分の家族を思い返しました」「自分の家族ならこういうふうに撮ったら面白いと思いました」と作品を通じて自分のことを語ってくださいます。展覧会がみなさん自身の「私の家族」を思う時間になれば……と考えて新作名でもある『私の家族』を展示タイトルにしました。写真展をやってよかったなと思いますし、最近家族写真撮ってなかったから撮ってみようかなとか、プリントしてなかったからしてみようかなとか、アルバムを久しぶりに見てみようかなとか、みなさんのこととして受けとめてもらえたら本当にうれしいなと思います。

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※本レポートは転載不可です。
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会期は3/14(日)まで。浅田さんがとらえてきた家族写真の軌跡をぜひ会場でご覧ください。会場は一部撮影可(動画撮影は不可)です。フォトスポットも二か所あります!詳細はご入場時に受付で配布の資料でご確認ください。
また、ご来場の皆さまへマスク着用、手指消毒のご協力をお願いしております。ご来場前にこちらをご確認のうえ、お越しくださいますようお願いいたします。

【展覧会ページ】
浅田政志写真展『私の家族』

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